【ナナフシギ~漆拾捌~】

文字数 739文字

 このワードはまるで彫刻で浮き彫りにしたかのようにくっきりと響いた。

「弓永が電話で何かいったのか!?」

 祐太朗は声を荒げた。だが、父はそんな息子には関心がこれっぽっちもないかのように冷めた口調でいった。

「弓永といってもご両親のほうだ」

 祐太朗は現実に戻されたかのように表情が強張らせた。岩淵がいったように、弓永は今でも霊道に閉じ込められているはずなのだ。その弓永がこっちにいるはずがない。

「どうやら昨日塾をサボって、以降はまったく姿が見えないらしい。で、弓永くんと仲のいいお前と一緒にいるんじゃないか、と電話が掛かってきた」

 子供が行方不明になっているにしてはまったく意に介さないといった感じだった。この男には誰がいなくなろうと興味などないのだろう、というのがとてもよくわかる。

 弓永の両親はどちらも医者で、ひとり息子のリュウも医者にするためにと勉強をするようにさせ、門限や何かも厳しく定めている。そんな家庭環境だからこそ、弓永はあぁなってしまったと考えてもいいだろうが。

 弓永の両親はリアリストで、神の力だとかを標榜し、教祖として君臨する祐太朗たちの両親のことはあまり良くは思っていなかった。そもそも日本という国自体、宗教に対する偏見が強い国で、新興宗教によるテロリズムも重なって宗教への印象は最悪だった。

「......そうだったのか。で、何ていったんだよ」

「岩淵にも確認したが、知らんといっていた。そもそもわたしが知っているはずがないからな。後はお前だが、何か知っているな」

「知らねえ」祐太朗は突っぱねた。「兎に角、弓永はすぐ帰ってくるんじゃねえの? てか、朝早くから電話掛けてくんなよ。じゃあな」

 祐太朗は電話を切った。その表情は青ざめていた。身体が震えていた。

 【続く】
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登場人物紹介

どうも!    五条です!


といっても、作中の登場人物とかではなくて、作者なんですが。


ここでは適当に思ったことや経験したことをダラダラと書いていこうかな、と。


ま、そんな感じですわ。

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