【バトル・オブ・五村ウエスト】

文字数 2,910文字

 ケンカをしたことはあるだろうか。

 まぁ、ケンカといっても、口ゲンカや殆どイジメみたいな一対多数といったモノあるが、ここでおれがいっているのは、一対一の武力によるケンカというヤツだ。

 まぁ、まずしたことがないという人はいないんじゃないだろうか。だって、幼少時も含めたら、武力を持って他人とケンカするだろ?

 それはさておき、武力によるケンカというのは、年を経るごとに減っていくモノだと思う。ヤンチャなヤツでも、成長するにつれて増え、ある段階で減っていくモノだろう。

 何故なら人は年を取れば取るほどに争いを避けるようになるからだ。そうじゃない人もいる?ーーそれは身体だけデカくなったガキだよ。

 そもそも他人との間に摩擦が起こればシンプルに面倒くさいし、他人をぶん殴ってしまえば、警察に駆け込まれて傷害で逮捕なんてことにもなりかねない。

 だからこそ、人は年を経、経験を積み重ねると共にケンカを避けるようになる。

 かくいうおれはというと、殴り合いのケンカを最後にしたのは高校の時だったりする。

 まぁ、殺陣や居合にて事故的に木刀で相手を殴ってしまったのはカウントしてないけどーーやっぱ得物を本気で人に振れるヤツってイカれてるよな。それはさておきーー

 やはり、おれも学習はするのだ。人を殴れば何かと問題は大きくなる。そもそも殴った相手との関係も暴力によってイビツに変形しかねない。殴り合って仲良くなるなんて、所詮はヤンキーマンガの世界の話でしかないのだ。

 まぁ、とはいえ、人には必ずといっていいほどイキったり、血の気が多くなる時期があると思うのだ。さて、今日はそんな話ーー

 あれは中学三年の時のことだった。

 シーズンは秋ごろで、あのウンザリするような体育祭応援団長の任も解かれてフリーダム、と思いきや受験のシーズンが近づいていてそれどころではない、といった感じだった。

 通っている塾でもナーバスな雰囲気が漂っていたし、気を緩められるのはむしろ学校にいる時というワケのわからない状態になっていた。

 まぁ、そんな感じで緊張感が微塵もなかった五村西中とはいえ、教員たちも生徒の進路指導のために、これといった対策はしないけど、取り敢えず受験に関する諸注意はしておかなければということで、ある日の午後、学校の武道場にて進路説明会を行う運びとなったのだ。

 正直なこといってしまえばダルかったよな。この時の五条氏といえば、受験に詳しい塾こそが正義で、古い体制のままモノを語ろうとする学校サイドはどうでもいいって感じで。まぁ、クソガキってこういうヤツのことをいうんだろうな。それはさておきーー

 そもそも塾に通っていようがいまいが、学校の進路指導に関する話なんて、殆どのヤツがどうでもいいというスタンスだったこともあって、案の定、緊張感のない時間となったのだ。

 が、五限目と六限目の間の休み時間に事変は起きたのだ。どういうワケかーー

 多くの男子たちが格闘技の真似事をし始めたのだ。

 この時期といえば、まだK-1やPRIDEといった格闘技が流行っていた頃で、男子たちの多くがそれに影響を受けていた時代だった。

 そんな感じで、周りの男子たちの多くが互いに関節技を掛け合ったりしていたのだけど、そんな中、当たり前のようにーー

 おれにも関節技の魔の手が及んだワケだ。

 まぁ、時には突然、時には「掛けさせて」とエクスキューズをいい渡されて了承した後に。この時は、前者ーー即ち、唐突に関節技を掛けられたワケだ。

 が、それが甘かった。

 というのも、この時代の五条氏はやたらと関節技を掛けられる実験台みたいな感じになっていたのだけど、その理由はーー

 どういうワケか関節技が得意だったのだ。

 まぁ、関節技といっても寝技全般で絞め技も含まれるんだけど、おれは何故か柔道やレスリングをやっていたワケでもないのに、ド素人の割には寝技がそれなりに出来る人だったのだ。

 当然、今でいうブラジリアン柔術の経験者と組み合えば瞬殺されるだろうけど、この当時はブラジリアン柔術もそこまでメジャーではなく、かつ武道、格闘技経験者もほぼいなかった環境だったこともあって、周りの人間の技術に関していえば、底の底みたいな感じだった。

 そんな中、おれはその当時のプロレスや総合格闘技にバカみたいにハマっていたこともあってか、父親を実験台に、自宅にて寝技の研究に勤しんでいたこともあって、寝技にはちょっとした自信があったワケだ。ソーリー、ダディ。

 そんな感じで気づけば、立った状態からチキンウイングアームロックの形に持っていき、相手を崩してグランドの状態に持っていくだとか、相手の腕を引いて、それに反発する力と隙を利用して三角絞めを掛けるだとか、可笑しなことができるようになっていたのだ。

 ただ、そんなことばかりできるからか、廊下で擦れ違ったイキッた男子に関節技を掛けられるのもしょっちゅうだった。つまり、今回もそういうことだったのだ。

 まぁ、そんな感じで技を掛けられれば、おれも夢中になってしまうワケで、掛けられた技を技術で返すなんてことをして、簡単に返り討ちにしてしまったワケだ。

 取り敢えず一段落。てか、そもそも男子がこぞって寝技の掛け合いをしてるとか、狂ってるだろって話なんだけど、どういうワケかーー

 教員たちは一切止めないのだ。

 むしろ、微笑んで見守ってんのな。

 いや、止めろよって話ではあるんだけど、多分、男子同士のじゃれ合いが微笑ましいとか思ったんだろうな。怪我したらどうすんだか。

 まぁ、そんな感じで、武道場は古代ギリシャのパンクラチオンをやってるよ、みたいなイカレた状況になったワケで、気付けばおれの元には更に技を掛けさせろというニュー・チャレンジャーが訪れまして。仕方なしに極りの甘い相手の寝技を軽くあしらっていたのだ。

 で、気付けば休み時間も終わり、進路指導の続きをやるとアナウンスがあったのだけどーー

 みんな、技の掛け合いを止めないのだ。

 何か、もう収集つかなくなってたよな。みんな頭に血が昇ったのか、男子同士、技の掛け合いを全然止めようとしない。

 止めろという怒号が飛んでもお構い無し。まぁ、そんなことをしていたら結局ーー

 教員たちがブチ切れたのだ。

 そりゃそうよな、って感じで、結局、進路指導の時間の多くを教員たちの説教で潰すこととなったのだ。てか、進路指導もろくなこと話してなかったんだけどな。

 武力をもって、相手をねじ伏せる。もしかしたら、これは子供の特権なのかもしれない。

 まぁ、イジメをするヤツは例え子供だろうがゴミだけど、一対一、パワーバランスがちょうどいいヤツ同士で、かつ相手を○めないのなら、ある程度のやり合いも経験としてはありなのかもしれない。だって、

 痛みを知らないヤツが、人に優しくなれるワケがないからな。

 まぁ、血の気が多過ぎて堪らないってヤツは格闘技でもやればいいと思うよ。でも、試合以外で人を傷つけないという条件でな。

 てか、居合に沖縄空手って、おれも血の気の多い人間なんだろうな。ま、妥当か。

 くれぐれも人には優しく、な。

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登場人物紹介

どうも!    五条です!


といっても、作中の登場人物とかではなくて、作者なんですが。


ここでは適当に思ったことや経験したことをダラダラと書いていこうかな、と。


ま、そんな感じですわ。

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