【冷たい墓石で鬼は泣く~捌拾伍~】

文字数 576文字

 足がふらついた。

 目は震えているようだった。頭は動いていないようで、考えることを拒否しているようだった。やはり、寝ていないとダメだった。意識も身体もわたしに逆らっていた。

 適当な空き家を見つけると、わたしはわたしを襲って来た男の生き残りを勢い良く突き飛ばして男を家の中へと入れた。男は必死に命乞いをしていた。助けてくれ、何度も悲鳴のような声が響き渡った。

 わたしは右手には刀を、左手には男たちのひとりが落とした提灯を持っていた。ゆっくりと丸腰の男に近づいて行った。男は壁を背にしても尚もうしろへ下がろうとしていた。刀を目許に突き付けた。男の小さな悲鳴が漏れた。わたしはそんなことお構いなしにいった。

「誰の差し金だ?」

 一度訊いた時は命乞いをするばかりで何も答えなかった。まだ誰か来るかもしれない。そして、亡骸が転がっている場所に長居するのは良くないとわかっていたこともあって場所を移さざるを得なかった。

 しかし、これでゆっくりと動ける。

 男は恐怖で口がきけないようだった。だが、わたしが気を変えるつもりがないと見たのか、震える口を更に震わせながらゆっくりと開き、そして、いった。

「わかった......、いうよ」

 わたしはゆっくり残心を取りながら刀を引いた。男はほっと溜め息をつくとわたしに礼をいい、それから話し始めた。

 わたしは息を飲んだ。

 【続く】
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登場人物紹介

どうも!    五条です!


といっても、作中の登場人物とかではなくて、作者なんですが。


ここでは適当に思ったことや経験したことをダラダラと書いていこうかな、と。


ま、そんな感じですわ。

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