【帝王霊~百弐拾死~】

文字数 772文字

 夜のストリートはキレイだった。

 いくつもの悲劇を重ねても、それは世界の片隅で起きていることであって、大きな世界には殆ど届くことはない。届くにしてもニュースになってからで、それは所詮テレビや新聞、ネットワークの世界の話でしかない。現場に群がる野次馬も、結局は観客席に座って舞台を観る観客のようなモノ。事件なんて当事者にでもならない限りはエンターテイメントと何ら変わらない。

「何で、おれがお前なんかと車に乗ってるんだか」

 車の後部座席に座った祐太朗は呆れたようにいった。横には撃たれて瀕死状態の武井愛の姿がある。そして、運転席にはーー

「わたしもそう思うね」

 佐野めぐみが相変わらずの不敵な笑みを浮かべていった。頬には青アザを作っていた。そのせいか不敵な笑みも怒りを誤魔化さんための化粧のように見えた。

「でも、わたしとアナタ、向かう先は結局同じなんだから、一石二鳥じゃない?」

 祐太朗はハッとした。

「おい、おれと行き先が同じってのはどういうことだ」

「そのまんまの意味」

 あのビルでのこと、弓永は祐太朗に佐野と共に行くよういった。弓永は成松の落下事件のことでその場に残るとのことだった。下に降りて佐野と合流し、アイと詩織の遺体を抱えてビルを出ると一台の車が用意されていた。何でも弓永が何処かの筋から用意させたモノらしかった。佐野は後輪の陰に置いてあったキーを拾い上げると車に乗るよう祐太朗にいった。アイは後部座席に。詩織は見つかったら面倒だからという理由で不本意ながらもトランクに入れるしかなかった。トランクには毛布が用意してあった。詩織の遺体を毛布にくるむと祐太朗は「ごめん」と呟いてトランクを閉め、後部座席に乗った。

 この時点で祐太朗は行き先を告げていなかった。つまり、佐野が祐太朗の目的地を知る由もなかったのだ。

 電話がかかってきた。

 【続く】
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登場人物紹介

どうも!    五条です!


といっても、作中の登場人物とかではなくて、作者なんですが。


ここでは適当に思ったことや経験したことをダラダラと書いていこうかな、と。


ま、そんな感じですわ。

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