【帝王霊~百拾漆~】
文字数 619文字
時間の流れがスローになったようだった。
何かが弾けるような音。三人はその音のしたほうへと目を向けなかった。向けたのは、目の前でゆらりと大きく倒れる武井愛の姿に、だった。虚ろな目をしたアイはまるで倒壊する塔のように勢い良く横向きに倒れ込んだ。そして地面に叩きつけられると、若干のバウンドをして、そのまま動かなくなった。幸い頭は打ってはいなかった。だが、問題はそこではなかった。
アイが倒れた姿を見、それから三人は音のしたほうへと目を向けた。その先には銃をもった痩せこけた男がいた。男はまるで贅肉という概念を忘れてしまったかのように骨と皮だけになった身体を持っていた。目は虚ろで濁っていた。口はポッカリと開いていた。無精髭は汚ならしく、短い髪は脂ぎっているのかテカテカしていた。
男はそのゾンビのような見た目とは裏腹に、一発の銃弾を撃つとそのまま勢い良く走って行ってしまった。靴裏がリノリウムの床を激しく叩く音がした。
祐太朗の顔が激しく歪んだ。そして、祐太朗はそのまま走り出して部屋から飛び出して行った。弓永も追おうとした。とーー
「待って」そういったのは佐野めぐみだった。「ほどいてくんない?」
弓永はガバメントを佐野に突き付けた。
「ほどく前に殺す。おれは忙しいんだよ」
「待ってよ。わたし、これでも祐太朗くんをサポートしようと思ってーー」
佐野の真横を45口径の銃弾が通った。佐野の表情は変わらなかった。弓永はいったーー
「死ね」
【続く】
何かが弾けるような音。三人はその音のしたほうへと目を向けなかった。向けたのは、目の前でゆらりと大きく倒れる武井愛の姿に、だった。虚ろな目をしたアイはまるで倒壊する塔のように勢い良く横向きに倒れ込んだ。そして地面に叩きつけられると、若干のバウンドをして、そのまま動かなくなった。幸い頭は打ってはいなかった。だが、問題はそこではなかった。
アイが倒れた姿を見、それから三人は音のしたほうへと目を向けた。その先には銃をもった痩せこけた男がいた。男はまるで贅肉という概念を忘れてしまったかのように骨と皮だけになった身体を持っていた。目は虚ろで濁っていた。口はポッカリと開いていた。無精髭は汚ならしく、短い髪は脂ぎっているのかテカテカしていた。
男はそのゾンビのような見た目とは裏腹に、一発の銃弾を撃つとそのまま勢い良く走って行ってしまった。靴裏がリノリウムの床を激しく叩く音がした。
祐太朗の顔が激しく歪んだ。そして、祐太朗はそのまま走り出して部屋から飛び出して行った。弓永も追おうとした。とーー
「待って」そういったのは佐野めぐみだった。「ほどいてくんない?」
弓永はガバメントを佐野に突き付けた。
「ほどく前に殺す。おれは忙しいんだよ」
「待ってよ。わたし、これでも祐太朗くんをサポートしようと思ってーー」
佐野の真横を45口径の銃弾が通った。佐野の表情は変わらなかった。弓永はいったーー
「死ね」
【続く】