【冷たい墓石で鬼は泣く~玖拾睦~】

文字数 552文字

 夜風は火照った身体をほどよく冷ましてくれた。

 わたしは夜の街道を歩いていた。うしろへの注意を欠かすことはなかった。だが、依然としてわたしを追う者の姿はなく、かつ攻撃を仕掛けて来る様子もなかった。

 寝たかったーーひたすらに寝たかった。

 まだ気は張っているとはいえ、さっきとは程度が違う。狙うなら今だろうと自分でもわかる。やはり気が弛んだのだろう、急に疲れがやって来た。身体中に重石を乗せているかのように重さを感じた。疲れが身体を狂わせていると、わかった。

 考えがまとまらなくなった。何かを考えようにも霧がかったように頭が働いていなかった。こころなしか頭が痛くなってきた気がした。ダメだ。少しだけでいい。何処かで寝なければ持たないだろう。

 あの賊たちとの話し合い。それで結局、わたしは解放された。誤解だ、と。下っ派たちが勝手にやったことだ、と。そもそも自分たちのような者たちが浪人の武士を襲う理がないと。それはもっともだった。わたしも勘違いした。しかし、勘違いするだけの理由があった。今回のことは不問にする代わりにもう互いに交わらないようにしようーーそう取り決めた。

 では、誰がわたしを襲わせたのか。

 それはわたしも何となく見当がついている。後は頭と身体を休ませてからだ。

 戦は急ぐモノでもない。

 【続く】
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登場人物紹介

どうも!    五条です!


といっても、作中の登場人物とかではなくて、作者なんですが。


ここでは適当に思ったことや経験したことをダラダラと書いていこうかな、と。


ま、そんな感じですわ。

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