【一年三組の皇帝~漆拾漆~】

文字数 601文字

 まるで時が止まったようだった。

 勝負をしているプレイヤーはもちろん、ギャラリーたちの目はぼくの手札に釘付けになっていた。そして、ギャラリーから息を吐くような感嘆の声が聴こえて来た。

 この『ネイティブ』は基本的にプレイヤーはもちろん、ギャラリーたちが特定のプレイヤーの手がわかるような反応を見せちゃいけないというルールがある。いつもなら関口か関口の金魚のフンたちによって咎められるのだが、今回は誰も咎めはしなかった。それどころか逆に関口はーー

「なるほど、強運だ」

 といって笑った。このことばだけなら信じるに値しなかっただろうけど、ギャラリーたちの反応を見て確信したーー

 ぼくの手が相も変わらず最強だ、と。

 だが、僅かに自分のこの考えが慢心じゃないかという疑いも生まれる。ぼくはギャラリーにも関口にも乗せられているだけではないか、と。と、関口は自分の手札を捨ててうっすらと笑っていったーー

「このままじゃ勝てる気がしないからね。ぼくも交換しようかな」

 来た。ここで仕掛けて来るのか。ぼくは自分の身体が固くなるような緊張を感じた。なるべく悟られないように、自分の目を一点ではなく全体を見るようにする。関口の左手は机の下に落ちたまま。右手はカードの山に伸びていた。左手。左手が気になって仕方なかった。ぼくは関口の手の動きに注視した。

 右手でカードを引き、左手で持ち変えーー

 ぼくは関口の左手を掴んだ。

 【続く】




ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

どうも!    五条です!


といっても、作中の登場人物とかではなくて、作者なんですが。


ここでは適当に思ったことや経験したことをダラダラと書いていこうかな、と。


ま、そんな感じですわ。

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み