【藪医者放浪記~百捌~】

文字数 544文字

 最初の仕事は話があってから五日後にあった。

 真夜中の川越街道は灯りもなく真っ暗だった。風の音が虚しく響く。虫の音はまったく聴こえなかった。殺す相手は良くは知らない。ただ、名前とおおよその体格を教えられただけだった。

 殺す相手の名前は辰巳と呼ばれる男だった。表向きは瓦版屋。それも他のどの瓦版屋よりも話が早い瓦版屋だった。つまり、事件が起こればその報せが特に早いということだ。

 だが、それには秘密があった。

 というのは、この事件というのはすべて辰巳が自ら起こし、それをいち早くネタとして瓦版に起こしていたのだった。その内容といえば、盗みや火事、挙げ句の果てには辻斬りという結構な悪党となり下がっていた。

 奉行所は辰巳の起こした事件の下手人が誰かは突き止められなかった。この事件の下手人が辰巳であると突き止めたのは、松平天馬の手下だった。そして、辰巳の殺しを仕事を受けることとなったのが源之助だったということだ。

 暑くてたまらなかった。身体が汗に濡れる。飛び交う虫たちには刺され、全身にかゆみが駆け巡った。草原に隠れていたこともあって余計だったかもしれない。

 何かが揺れた。

 小さな灯りだった。

 源之助はゆっくりと灯りに近づいて行った、行ったーー行った。

 源之助の目が見開かれた。

 【続く】
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登場人物紹介

どうも!    五条です!


といっても、作中の登場人物とかではなくて、作者なんですが。


ここでは適当に思ったことや経験したことをダラダラと書いていこうかな、と。


ま、そんな感じですわ。

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