【一年三組の皇帝~漆拾~】

文字数 654文字

 まるでぼくの背中を押すように、クラス中から歓声が聴こえた。

 だが、その背中を押す歓声というのは、ぼくが勝つためのバックアップをしてくれているというより、その逆。死の恐怖に怯えている人間の足首を掴み引っ張るような残酷なモノ、高い所の際にいるところで思い切り背中から突き飛ばされるようなモノだった。

 もう逃げられない。

 やるしかない。

 泣いても笑っても、三十分後にはすべてが終わっている。それはぼくの破滅か、関口政権の終焉か、どうなっているかはわからない。ただ、限りなく近いのはぼくが破滅する未来への道だった。

 関口たちを目の前にしてぼくは鼻から息を大きく吸い込んで溜め息をついた。きっと、これだけでもぼくが緊張していることは関口にはバレバレなのだろう。でも、やるしかなかった。ぼくはやるしかなかった。関口が目の前の席を指していったーー

「座りなよ」

 ぼくは消え入るような声で、うんというと、そのまま椅子を引いて腰掛けた。それに合わせてぼくへの視線がより一層鋭く強くなった。

「シンゴ......」

 横から名前を呼ばれた。田宮の姿があった。以前は少しふっくらとしていた田宮もまるでガイコツにでもなったかのように痩せこけてしまっていた。ぼくは田宮のことばを無視した。下手に反応すれば、自分の中に迷いが生じそうだった。それを振り切るように、

「さっさと始めようぜ」

「待てよ」

 うしろから突然そんな声が聴こえた。みんな、声のしたほうへと目を向けた。

 声の主ーー辻だった。そして、こういった。

「おれにもやらせろよ」

 【続く】
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登場人物紹介

どうも!    五条です!


といっても、作中の登場人物とかではなくて、作者なんですが。


ここでは適当に思ったことや経験したことをダラダラと書いていこうかな、と。


ま、そんな感じですわ。

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