【一年三組の皇帝~漆拾伍~】

文字数 695文字

 白であろうと黒であろうと風船は膨らむモノだ。

 ましてやそれが灰色ならば余計だった。いや、逆に灰色のほうが白や黒よりも風船が膨らみ過ぎて割れる危険があった。

 ぼくと辻は完全なグレーだった。辻はぼくに頷き掛けただけだった。それがどういう意図をもってやったのかは、ぼくにはわからない。ただ、その行為からして「そのまま勝負しろ」か「変えたほうがいい」のどちらかだった。

 現在、ぼくを除けば最大の数を持っているのは辻だった。そして、その数はJ。確かに大きいが、ちょっとした運で簡単にひっくり返るレベルの大きさでもあるのはいうまでもなかった。辻の落ち着きようから見るに、ぼくの数字は結構と大きいんじゃないかと推測出来た。小さくて勝負にならなければ、もっと焦りのようなモノが見えるに違いなかったが、それが見えなかった。

「合図とか、今ここでたまたま勝負に加わったのにそんなの出せるワケがねえだろ」

 辻がいった。感情を圧し殺したような低くて冷静な口振りだった。ぼくは何もいわずにただ頷いた。が、関口は「ふーん」と頷きつつ、ぼくのカードを見ていった。

「カード、変える必要ないもんね。合図してるように見えただけか」

 舌打ちしそうになった。揺さぶって来た。多分、合図を出したかどうかなんてそこまで重要じゃなかったのだろう。問題はぼくを揺さぶること。以前の勝負ではまったくしてこなかった疑念を呼ぶ行為。疑うことは亀裂が入るのと同じ、そこから少しずつ崩れて行き、最終的には崩壊。辻のことも、他の誰のことばも信じられず、ぼくは自分の感覚とともに自滅していく。そんな未来が見える。

 ぼくはニヤリと笑ってやった。

 【続く】
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

どうも!    五条です!


といっても、作中の登場人物とかではなくて、作者なんですが。


ここでは適当に思ったことや経験したことをダラダラと書いていこうかな、と。


ま、そんな感じですわ。

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み