【ナナフシギ~玖拾~】

文字数 621文字

 完全に立ち往生だった。

 目の前には目的地があるにも関わらず、そこへ至るには目の前の重い扉を開かなければならない。しかし、それを開くにはカギが必要と来ている。そして、そのカギは何処にもない。時間は刻一刻と過ぎている。このままではただ立ち尽くしているだけだ。

「どうするんだよ」その場でしゃがみこんでいた祐太朗が吐き捨てるようにいった。「出前でカギでも頼むか」

 もはや皮肉をいうぐらいしかやれることがなかった。岩淵の判断で来た体育館も、いざ来てみれば完全に閉まっているのだから、祐太朗ももはや困る以上に呆れてしまったに違いなかった。だが、岩淵は相も変わらず扉を見詰めながらニヤニヤしている。そこには困惑といった様子はなかった。

「こんなとこでボーッとしてても仕方ないだろ」祐太朗は立ち上がりいった。「やっぱりもうひとつの動くヤツを何とかしなきゃダメなんだろ。さっさとソイツを探しに行くぞ」

 祐太朗はやや早歩き気味に来た道を戻ろうとし始めた。だが、岩淵は動かなかった。その気配を背中で感じたのか、祐太朗は立ち止まり振り返ると吐き捨てた。

「何、名残惜しく突っ立ってんだよ。時間がねぇんだから早くしろよ」

 だが、岩淵は動かなかった。祐太朗は流石に焦れったくなったのかイラ立ちを抑えきれずに岩淵に近寄りつついった。

「いい加減にしろよ、そんなことしてたってーー」

 何か金属が床を叩く音がした。祐太朗と岩淵の視線がそちらに走った。

 カギが落ちていた。

 【続く】
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登場人物紹介

どうも!    五条です!


といっても、作中の登場人物とかではなくて、作者なんですが。


ここでは適当に思ったことや経験したことをダラダラと書いていこうかな、と。


ま、そんな感じですわ。

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