【一年三組の皇帝~漆拾壱~】

文字数 649文字

 歓声は上がらなかった。

 むしろ、白けたような反応がギャラリーの間で伝染した。だが、誰も文句をつけようとはしなかった。多分、どんなに文句をいいたくても、相手が辻というだけで、後でどんな目に遭わされるかというリスクを頭の中で思い描いた結果なのだろう。だが、無言のまま胡散臭いモノを見る視線はナイフよりも鋭く辻に突き刺さっていた。みな、声を上げなければ団結は出来るらしい。というか、背景としてなら人は強気になれるようだった。

 最初に口を開いたのは、ぼくだった。といっても、辻の名前を思わずことばにしたまでだったが。それに続くように海野と山路が声高に辻の名前を呼びながら彼に近づき、心配したと声を掛けようとした。が、それは辻によって制された。辻はふたりのほうをチラッと見たかと思うと今度はぼくを見えないモノのように扱うかのように関口のほうを見た。

「いいだろ?」

 シンプルな問いだった。問われた辻はうっすらと笑い、取り巻きたちはバカにするような声を漏らしてニヤリと笑った。

「やるんだ」関口がいった。「その前にさ、負け分が溜まってるけどーー」

「おれが勝ったらチャラにしろ」

「チャラっていっても。ぼくが勝ったら、辻くんは何をしてくれるんだい?」

「これから三年、いや、これからずっと、テメェに使われてやるよ」

 どよめきが起こった。驚きとワクワク、そして心配。海野と山路が再び声を掛けようとするも、それも辻はうるせぇとひとことで制した。それから挑戦的に関口を見て、

「どうだよ?」

 関口は不敵に笑っていた。

 【続く】
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登場人物紹介

どうも!    五条です!


といっても、作中の登場人物とかではなくて、作者なんですが。


ここでは適当に思ったことや経験したことをダラダラと書いていこうかな、と。


ま、そんな感じですわ。

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