【ナナフシギ~玖拾玖~】
文字数 615文字
すべての音が消え去ってしまったかのようだった。
実際はそんなことはないのだが、あまりにも緊迫していたからか、音という音がその場で凝縮され潰れてしまったかのようだった。
アンタ、誰だーー祐太朗のことばが虚しく響いた。それに対して石川先生はニヤッと笑っていた。そして、いったーー
「誰って、わたしだよ。見ればわかるでしょ? ねぇ、祐太朗くん」
祐太朗は鼻で笑って見せた。
「確かに見れば先生だってわかるよ。見た目は、な。でも、お前が石川先生じゃないってことはわかる。そもそも先生には霊感はないし、霊道がどうとかいうワケがねえって」
石川先生は尚も怪しく笑っていた。
「でも、こんな場所にずっといるんだよ? なら、そういう力に目覚めても可笑しくはないんじゃない?」
「お前は理科を一日勉強したら、その内容をすべて理解して当たり前にその知識を使えるのか?」
「......何の話?」
「惚けんな。一日二日、ちょっとその手のことをかじったくれえでその道のプロになることはねえってことだよ」
これは当たり前のことだ。何事も簡単にはその道を極めることは出来ない。そもそも何かに慣れることですら、一日二日では足りることはない。慣れ始めの兆候が見えるのは早くても大体一、二週間程度経ってからだ。
突然、石川先生は声を上げて笑い始めた。祐太朗は石川先生の出方を見るように黙っていた。石川先生はゆっくりと笑うのをやめ、そしていったーー
「流石、鋭いね」
【続く】
実際はそんなことはないのだが、あまりにも緊迫していたからか、音という音がその場で凝縮され潰れてしまったかのようだった。
アンタ、誰だーー祐太朗のことばが虚しく響いた。それに対して石川先生はニヤッと笑っていた。そして、いったーー
「誰って、わたしだよ。見ればわかるでしょ? ねぇ、祐太朗くん」
祐太朗は鼻で笑って見せた。
「確かに見れば先生だってわかるよ。見た目は、な。でも、お前が石川先生じゃないってことはわかる。そもそも先生には霊感はないし、霊道がどうとかいうワケがねえって」
石川先生は尚も怪しく笑っていた。
「でも、こんな場所にずっといるんだよ? なら、そういう力に目覚めても可笑しくはないんじゃない?」
「お前は理科を一日勉強したら、その内容をすべて理解して当たり前にその知識を使えるのか?」
「......何の話?」
「惚けんな。一日二日、ちょっとその手のことをかじったくれえでその道のプロになることはねえってことだよ」
これは当たり前のことだ。何事も簡単にはその道を極めることは出来ない。そもそも何かに慣れることですら、一日二日では足りることはない。慣れ始めの兆候が見えるのは早くても大体一、二週間程度経ってからだ。
突然、石川先生は声を上げて笑い始めた。祐太朗は石川先生の出方を見るように黙っていた。石川先生はゆっくりと笑うのをやめ、そしていったーー
「流石、鋭いね」
【続く】