【冷たい墓石で鬼は泣く~百~】

文字数 703文字

 突然、悲鳴が聴こえた。

 平蔵に盗賊との関わりを問うていた時のことだった。わたしは悲鳴のしたほうを見た。と、突然に背後からやけくその叫び声が聴こえた。イヤな予感。わたしは右の手で刀を取りつつ、座した状態で身体をうしろに倒した。わたしの視線の先には天井と鋭く光るドスの切っ先が見えた。

 わたしはドスの平を刀の柄で勢い良く払ってやった。と、ドスの刀身が折れ、折れた刀身は勢い良く飛ぶと古くなった壁へと突き刺さった。平蔵は思いがけないことに折れた刀身を引き、目の前で眺めた。

 今だーーわたしはそのまま刀を左の手に持ち変えると、そのまま勢い良く起き上がりつつ刀を抜き平蔵の腹を横に斬りつけた。

 平蔵が鈍い呻き声を上げた。斬れた腹から少しずつ腸がズレ落ち、それから一気に落ちた。落ちた腸は冷たくなった床に落ちた。平蔵は更なる声を上げた。床の冷たさが生身の腸には堪えたのだろう。

 平蔵は目を見開いたまま震えだした。わたしは、平蔵はもはやわたしに襲い掛かっては来ないだろうとみなし、そのまま外へ出た。

 驚いた。

 逃げ回る人々、そのうしろにはオオカミが数匹。平蔵の家のまわりにはいくつかの骸が転がっていた。恐らく、わたしと平蔵の話はすべて聴かれていたのだろう。そして、何かあれば、即座に控えていた者たちが奇襲に掛かり、わたしはーー

 呆気に取られて外の惨劇を見ていると、一匹のオオカミと目が合った。わたしに対する敵意は見えず、それどころか、村に備えられた松明の火から見えるは、わたしに対する親しみの目付きだった。

 どうやら、彼らはわたしが握り飯を与えたオオカミたちだったようだ。

 まさか、オオカミに助けられるとは。

 【続く】
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登場人物紹介

どうも!    五条です!


といっても、作中の登場人物とかではなくて、作者なんですが。


ここでは適当に思ったことや経験したことをダラダラと書いていこうかな、と。


ま、そんな感じですわ。

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