【ナナフシギ~捌拾玖~】

文字数 636文字

 もはや、そこに『外』はなかった。

 校舎から体育館に到るまでには中庭の通路を通らなければならなかった。つまり、一瞬ではあるが外の景色や空模様を見なければならないということになる。だが、もはやそこには空も外もなかった。本来空があるはずの上にはとてつもなく大きな穴があり、穴の周りには亀裂と錆びた鉄板のようなモノが張り付けられたように微動だにしなかった。穴の先は真っ暗で何も見えなかった。そして、中庭から校庭へと続くはずの道は鋼鉄の扉で閉ざされており、地面の土や雑草は巨大な針山に変わっていた。

「これは酷え......」

 祐太朗も思わず絶句した。ここが本当に自分がいつも通っている学校なのか。信じることなど出来なかった。ここまで何かに侵食された学校で、人は生き延びることなど出来るのかーー正直いえば、一日でも厳しいだろうと誰もが思ったに違いない。だが、祐太朗はそんなことはいわない。仮に思ってもそんなことは口には出来ないだろう。だが、

「こんなとこでは、人は生きていけないでしょうねぇ」

 岩淵は容赦なくいった。祐太朗は心底不快そうに顔を歪めていった。

「んなことより、早く体育館を何とかしろよ」

「そうはいわれましても、ねぇ」

 岩淵が困惑したのには理由がある。体育館館の鋼鉄の扉は幾重にも錠前と鎖が繋がれ、もはや開けるということに現実味をまったく感じさせないほどだった。祐太朗もその扉と鎖、錠前を見て舌打ちをした。が、岩淵は、

「......何とか出来なくもないのですがね」

 【続く】

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登場人物紹介

どうも!    五条です!


といっても、作中の登場人物とかではなくて、作者なんですが。


ここでは適当に思ったことや経験したことをダラダラと書いていこうかな、と。


ま、そんな感じですわ。

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