【いろは歌地獄旅~ヤバイ手紙~】

文字数 3,122文字

 いろは歌とか何いってんだか。

 とまぁ、この企画の根本を覆してしまうようなことを平気でいってしまったワケだけど、たまにはこういうのもいいじゃない。

 つまり、今日は久しぶりのおれのクソみたいなエピソードを話して行こうか、というワケである。「おれ」といっても一人称のシナリオの主人公とかではなくて、紛れもない五条氏ということなんでよろしく。

 まぁ、そういうのは日、月の雑記でやってるやんって声もあるかもしれんけど、アレはおれが手を抜ーーいや、その時々で何となく思ったことを書いていきたいということでやってるんで、ほんと具体的なエピソードの話はほんと久しぶりなんだな、うん。

 まぁ、手抜きっていわれても否定は出来ないんだけどな。

 さて、じゃあ久しぶりに始めて行くかーー

 アンタらは人に対して何かを伝えたいと思ったら、どうするだろうか。

 直接話をするだろうか。それとも電話するだろうか。はたまた、メールやLINEで済ませるだろうか。とまぁ、その方法の是非は別としても、そのやり方はいくらでもあるワケだ。

 かくいうおれは、というと、その時々でその方法は変わって来ると思うのだ。

 例えば、相手がすぐ近くにいて簡単にコンタクトが取れる場合。これはいうまでもなく直接の会話で何とかする。

 続いて相手がちょっと遠くにいて、緊急性を要する場合はどうするか。これは電話だろう。本来、電話は相手のプライベートにズカズカと土足で踏み込むようで余り好きではないのだけど、火急の用件の場合は仕方ない。相手に詫びを入れつつも電話するしかない。

 では、そこから急という要素を抜き去った場合はどうなるだろう。

 これはメール、LINEで充分だろう。それにメールやLINEで文章を構成することは、今そこにある情報を整理することも出来るし、余裕があるならば、そういった媒体で情報を整理しながら進めるのがいいと思うのだ。

 とまぁ、ここまで話して来たけど、ひとつ重大な何かが抜け落ちてはいないだろうか。そう、それはーー

 手紙の存在だ。

 そう。自らペンを握って紙に用件を書き、相手に残すという行為だ。

 とはいえ、そういった手紙という媒体は、今となってはかなり古風で余りやる人もいなくなった。だが、自分の手で字を書き、文章を構成し、用件を伝えるというのは何となくその人の人となりが滲み出ているようで、良きとされることも多いし、職場や何かでも、ちょっとしたメモ書きをして上司の机に置いておくなんてこともすると思うのだ。

 ちなみにおれは、主任宛てのメモ書きの裏に、主任の似顔絵を描いて置いておいたら、

「嬉しいけど、人に見られたら恥ずかしいから止めてくれ。あと、名前のところに『イケメン』とか書くな!」

 とかいわれたワケで。尚、似顔絵のコピーはたくさんある模様。それはさておきーー

 やはり、自分の手で何かを書いて人に送るという行為は、その人の念まで運ぶ、そう思うのだ。それは字体だったり、筆圧だったりで大きく変わってくる。字体がしっかりしていれば、その人に対して真剣にモノを伝えたいとわかるだろうし、筆圧が濃ければ、それだけ想いが乗っていると思えるだろう。

 だが、その想いがポジティブだとは決して限らないのだーー

 というワケで今日はそんな話。

 あれは中学三年の冬のことだった。その日は学校の教室にも美しい茜色の夕陽が輝いていたと思う。帰りの時間の喧騒がクラス中を包んでいた。中学三年のその時期ともなると部活も引退し、受験勉強がメインとなっていた。

 だが、そんなことなど微塵も感じさせないような気だるい雰囲気が教室を包んでいた。しかし、おれは、今日もまた帰って塾で勉強か、と小さくため息をついたのだった。

 そんな中、担任のブタさんがいつもの甲高い喧しい声を上げながら教室へと入って来たのだ。まったく、もう少し静かに話せないもんかね。おれはブタさんから目を反らした。

 席について、とのブタさんのことばに、騒がしかったクラスメイトもみな静かになって自分の席につく。それからはいつも通りの平和な帰りのホームルーム。特に何事もなく、その日は終了、下校となったワケだ。

 おれは背伸びして身体をほぐしつつ、全身に新鮮な空気を送り込んだ。気持ちいい。まだこれから勉強しなきゃならないんだ。気合いを入れなきゃならない。おれは静かに教室を出ようとした。だが、その時、

 ブタさんが何かを見て首を傾げていたのだ。

 それは何かの紙片だった。裏面ーー即ち本来の用途での表面ーーには、いつぞやに配られた何かしらプリントの内容が刻まれていた。

 何だろう。その日はそう思いつつも、おれは学校を後にしたワケだ。

 翌朝、澄みきった冬の空気が肺を焼く中、おれはかじかんだ手に白い息を吹き掛けて学校まで向かった。おれはいつも通り中間のノリ。来た時点でクラスメイトは半分ほどおり、みんなそれぞれのグループに散ってアンニュイな話題を繰り広げては楽しんでいた。

 おれも適当にキャナや外山たちと話していた。健太郎くんはやっぱり遅刻だった。

 チャイムが鳴り、担任のブタさんがやって来た。だが、その様子がどうも可笑しい。何というか、メチャクチャに不機嫌なご様子なのだ。何だ、またヒスってるのか、といつもの流れでおれも流石にウンザリだった。

「席についてッ!」とブタさん。

 ほら、やっぱりヒスってる。もう呆れて仕方なかった。今度は何だよ。

 全員が席につき、教室内は静寂に包まれた。糸がピンと張ったような緊張感があった。紛れもなくいつもとは違う。そんな中、

「朝のホームルームの前に大事なお話があります」とブタさんは切り出した。「昨日、わたしの机の引き出しに変なメモが入っていました。すごいショックでした。犯人が名乗り出なければ、警察に通報しますので、やった人は今日中に名乗り出てください」

 教室内が一気にザワめいた。それもそうだろう。そんな教員に何か手紙のようなモノを送って、それで警察沙汰になりうるモノといったら、これはもう殺害予告や脅迫、誹謗中傷の類いしか有り得ない。

 となると、これはかなり興味深い。

 おれはザワめく教室の中でひとり、この話の詳細を知りたいと口許で笑みを浮かべていた。

 とはいえ、ブタさんの音楽の授業はなかったこともあって、朝のホームルームが終わると、その緊迫した空気もすっかりと抜け切ってしまっていた。給食の時間はブタさんも何処か元気がない様子で、緊迫とはまた違った空気。やはり脅迫か殺害予告だろうか。

 昼休み、おれは生活安全委員の仕事という名目で職員室まで行き、ブタさんを訪ねた。

 仕事はすぐに片付いた。そして、本題。おれはそれとなく訊ねてみた。

「そういえば、何かメモがあったっていってましたけど、何て書いてあったんですか?」

 そう訊ねても、ブタさんはプライバシーとかいって公開はしなかった。とはいえおれは引き下がらなかった。

「まぁ、筆跡や筆圧や何かで何となくはわかるかもしれませんし、おれも口外はしません。ただ、参考程度に見せて貰えませんか?」

 ブタさんは唸った。かなり困っているご様子。だが、結局は折れた。というのも、おれを信頼して、とのことらしい。流石に体育祭の応援団長と音楽祭の指揮者を担当しただけはあった。

 ブタさんはうしろめたいような曖昧な手つきでデスクの引き出しからメモを取り出した。今にも引っ込めそうな様子でメモを差し出して来る。おれはメモを手に取り、眺めた。

「エイプリルフール」

 そう書いてあった。

 はい、全部ウソでした。

 まぁ、作り話ということで、いろは歌的にはちょうどいいか。いいワケない?……許せ。

 アスタラ。

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登場人物紹介

どうも!    五条です!


といっても、作中の登場人物とかではなくて、作者なんですが。


ここでは適当に思ったことや経験したことをダラダラと書いていこうかな、と。


ま、そんな感じですわ。

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