【一年三組の皇帝~睦拾睦~】

文字数 785文字

 その時、呼吸が止まった。

 一瞬ではあるけど、ぼくは呼吸することを忘れていた。生活安全委員はヤバイことをしている。完全に図星をつかれ、ぼくの頭は次に継ぐべきことばを必死に探しつつ必死に落ち着くように自分にいい聞かせようとした。だが、それがうまく行けばどれほど生きるのが楽になるだろう。ほんと、こういう時に情けなくならずに平然としていられるほどのメンタルが欲しいとつくづく思う。

「......何いってんだよ」

 迷いに迷った結果出たことばは、ヘラヘラと笑いながら出たこの程度のモノでしかなかった。そして、反省した。また誤魔化そうとしてヘラヘラしてしまった。全然成長しない自分につくづく愛想が尽きそうだった。

「うちの生活安全委員、同じ小学校だったんだ。明るくて笑顔の絶えない子でさ。でも、中学に入ってから変わった。何かいつもコソコソしてるっていうか。人と話すことも少なくなったし、まるでうしろめたさがあるようにしか見えない」

 ぼくはいずみから目線を外しつつ大きく何度か頷いて見せた。何となく平静を保ったように見せかけようとしたが、内心はドキドキが止まらなかった。今のぼくもそうだからだ。教室の中ではコソコソとして、関口たちのことを伺っている。いずみは間違いなく、ぼくが教室以外の場所で無意識にコソコソとしたような振る舞いをしていることに気づいている。そして、それの根っこには生活安全委員が関係しているんじゃないかと確信を得ている。もう彼女のことは騙せないだろうーーぼくはもはや殆ど諦めていた。だが、諦めがこころの中で滲み出していても、ついそれに反発するようなことをいってしまう。

「同じ学校だったっていっても、全員が全員そうってワケじゃないじゃん。まだ慣れないこともあるし、人見知りにもなってるんじゃないの?」

 いずみの目はぼくのこころを見透かしたように細まっていた。

 【続く】
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登場人物紹介

どうも!    五条です!


といっても、作中の登場人物とかではなくて、作者なんですが。


ここでは適当に思ったことや経験したことをダラダラと書いていこうかな、と。


ま、そんな感じですわ。

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