【二日酔い中学生】

文字数 3,643文字

 子供の頃の経験値なんて微々たるものだ。

 とはいえ、子供の頃にやっていたことは確実に大人になって役に立つ。その当時はいくら頑張ってできなくとも、大人になればできるようになることなど、いくらでもあるワケだ。

 まぁ、それこそ芦田プロみたいな子供の時点で完成され、そこからさらなる発展を遂げている例外もいるとはいえ、基本的には、子供の頃にどうあがいてもできなかったことも、大人になったらできるというのが殆どだ。

 それは、個人の筋肉量や経験値、頭脳レベルに金銭的なものと様々な要因が絡んでいる。

 かくいうおれも大人になってからできるようになったことがたくさんあってーーというより子供の頃の自分にできたことはあったのかというくらい年を重ねて得たものが大きいので、逆にガキの時は何してたんだよ、と疑問に思うことが多いのだけど。

 じゃあ何ができるようになったのかと問われると、簡単にいえば運動能力が向上した、知能レベルが上がったというのが大きい。

 マジな話、小、中学校時代は走るのも一キロ半で限界だったものの、今では十キロ、少し頑張れば二一キロは普通に走れるようになったし、小学校五、六年の時はクラスで最下位レベルの学力で、思考力も皆無に等しかったにも関わらず、今では勉強的な学力とはほぼ無縁な世界にいるとはいえ、思考能力も教養も一般人を少し下回る程度にはあるし、自分で考えて行動することもできるようにもなっている。

 まぁ、今いったのは、いってしまえば経験の差なんだろうけど、やはりその経験の差というのが大きいのだろうと思う。

 変な話、それはゲームでもそうで、当時は無理だったが、この年になってからクリアしたレトロゲームなんてたくさんある。

 確かリメイク版の『バイオハザード』が出たのは、小学生の高学年か中学の一年生の頃だったけど、その当時は怖いし難しいしで、女性主人公のジル・バレンタインのイージーモードでしかクリアできなかったワケで。それが今では男主人公のクリスでハードモード、しかもナイフ縛り、有限ハンドガンのみでクリアなんてこともできるようになってしまって、あの頃の恐怖とは何だったのかと思ってしまうのだ。

 さて、今日はそんなゲームの話からとある友人の話をしていくー。

 例のアレが猛威を奮っている現在、自粛にリモートによる在宅ワークと家にいる時間が必然的に増えている。そんな中、家で過ごすのにテレビゲームはいいお供になっているけど、おれが子供の頃は、頭の可笑しいおバカさんたちが、「ゲームは有害ッ!」とか「ゲームが脳細胞を破壊するッ!」とか「ゲームが犯罪を誘発するッ!」とかワケのわからんことを仰っていたのだけど、そんな考えも時代遅れとなっており、今ではゲームのプレイを配信してお金を生み出す人が現れたり、昔のゲームが再評価されたりと、ここにきてテレビゲームというものがひとつのコンテンツとしてちゃんと評価され始めたような気がするのだ。

 ゲームが脳細胞を破壊するって、脳が破壊されてるのはどっちなんだか。

 で、まぁ、そりゃ昔は犯罪が起きる度にゲームとの関連性がどうのとかいわれて、テレビゲームへのネガティブキャンペーンが横行していて、ゲーム好きな自分としては随分と肩身の狭い思いをしたものだった。

 とはいえ、ゲームは友人とのコミュニケーションの道具としてはとてもよく、対戦系のゲームをみんなでやるために誰かの家に集まってワイワイ楽しんだ経験は尊い記憶のひとつだし、会って間もない同年代の人間とも昔プレイしていたゲームの話題がきっかけとなって仲良くなるなんてことも普通にあった。

 とはいえ、ちょっとした出来事で関係が悪化することも多々あるのも事実だったりする。

 まぁ、これは以前も話のネタになった「あっちゃん」の話なんだけど、彼には彼なりのプレイスタイルとポリシーがあったらしく、それでいろんな人と度々揉めていたものだった。

 まぁ、そういうプレイスタイルやポリシーというのが、その人個人が上手くて、普通にやっても面白くないからと自ら縛っているならまだしも、どういうワケか、あっちゃんの場合はポリシーによって縛られて逆に下手になっているというのが殆どだった。

 そんな彼の口癖が「攻撃は最大の防御ッ!」だったのだけど、それはその攻撃が他を圧倒するものでなければ何の意味もなくて、残念なことにあっちゃんのいう攻撃というのが猫パンチの応酬みたいな感じで、プラス防御は殆どしないという不思議なポリシーを持っていたのだ。

 まぁ、これが個人戦ならいいのだが、チーム戦ともなると中々にヤバくて、ひとり突っ走ってチームをないがしろにしてしまうあっちゃんと一緒のチームになった奴は口々に、「あっちゃんと同じチームかよぉ……」といっていた。

今考えると中々残酷なひとことだけど、それくらいあっちゃんは自分のポリシーというのに縛られた人だった。

 とまぁ、その手のことには話題が欠かない人物ではあるのだけど、彼は自分が舐めている人物にはやたらと辛辣なところがあって、よくケンカを起こしていたのだ。

 そんな中でも、やばかったのがおれが中学二年の時に起きたこの事件だーー

 その当時は、『大乱闘スマッシュブラザーズDX』が流行っており、おれもそれなりにやっていたものだった。

 で、そんな流行りの中、我々の学年の一部のコミュニティで、毎週月曜になると、原野くん(仮名、よ)の家に集まって十人から十五人でスマブラDXの大会を開くのが常になっていた。

 おれもその大会には参加しており、多分、皆勤賞だったのではないかなと。ちなみに、優勝回数も多いほうでーーとまぁ、そんなことはどうでもいいんよな。

 で、その大会にはあっちゃんも参加していたのだけど、そこで事件は起きた。

 あれは秋口くらいのことだったと思う。その日の月曜日もやはり原野くんの家でスマブラの大会が開かれていたのだ。

まぁ、人数や参加者に関してはその時その時で変動するので固定メンバー意外は誰がいたかは覚えていないのだけど、その日はたまたま大会初参加の「もこうくん」がいたのだ。

もこうくんはスマブラ未経験で、その日は面白そうだからと偶々参加してたのだけど、ちょうど彼が一回戦で当たった対戦相手が、あっちゃんだったわけだ。

 あっちゃんは未経験者相手に、「ハッ! 負けるワケねーな!」と息巻いていて、そんな中でも笑顔を絶やさないもこうくんが気の毒ではあったのだけど、いざ試合が始まってみると、あっちゃんが圧倒されているじゃないか。

 これにはあっちゃんも焦ったらしく、イキッたセリフも気づけば単なる暴言へと変わっていって、場の雰囲気も悪くなっていったのだ。

 まぁ、最終的にもこうくんが勝ち、あっちゃんが敗北してゲームは終了したのだが、

「はぁッ!? こんなんあり得ねえよッ!」

 唐突にあっちゃんがキレ出したのだ。これにはその場にいた人たちも困惑してしまい、彼を宥めようとしたのだけど、

「こんな雑魚に負けるとかありえねぇよッ!」

 や

「今日は調子が悪かったんだよッ!」

 とひたすらぶつくさいって場の空気を最悪にしてしまったのだ。その後、もこうくんも気まずさからか口数が減り、二回戦で敗退したのだけど、その際もあっちゃんの暴言は止まらず、挙げ句の果てには原野くんのお母さんに怒られる始末で。

まぁ、その日の大会はおれの優勝で幕を閉じたのだけど、あまりいい気分ではなかったね。

 それからも大会は毎週月曜に開催され続け、おれもあっちゃんも参加していたのだけど、特に大きな問題も起こらなかったからよかったものの、ひとついえるのは、

 例えゲームでも、相手のことを気遣ってやりましょうということだな。

 それに、あまりブチ切れると「ゲームが子供をキレやすくするッ!」とか喚くおバカさんがまた出てくるんで。

 とまぁ、こんな話をした後なんでアレなんだけど、そんなあっちゃんと最後に会ったのは四年前。おれが芝居の稽古終わりに飲んで帰ろうとしたところ、地元の駅でバッタリ会ったのだ。久しぶりの再会に話は弾み、互いのことも話したのだけど、おれが演劇をやっているといったら、

「あぁ、昔からそんな感じだったもんな。やってても不思議じゃないし、ピッタリだと思うよ。頑張れよな」

 と、演劇をやっているというと意外がられる中、あっちゃんだけはそういってくれたわけで。昔ならそんな風に人を激励するようなことはいわなかったのに、時間と共に彼の中にも色々と変化があったんだろうね。

 人間、悪いところもあれば、いいところもあるもんだ。ま、それが個性なんでしょうね。

 あっちゃん、元気にしてるかなぁ。

ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

どうも!    五条です!


といっても、作中の登場人物とかではなくて、作者なんですが。


ここでは適当に思ったことや経験したことをダラダラと書いていこうかな、と。


ま、そんな感じですわ。

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み