【一年三組の皇帝~参拾捌~】

文字数 1,024文字

 ひとりで抱え込んではいけないーーそれはもっともな話だった。

 そう、ぼくは何でも自分のこと、自分が悪い、自分が何とかしないとと抱え込むクセがあった。改めて考えれば別にそんなことする必要など何処にもないだろうに、でも、ぼくは自分がどうにかしないとっていう強迫観念みたいなモノに取り付かれていた。

 ぼくは、何かをこうでなければいけないといったような考えに取り憑かれ過ぎている。

 お兄さんがいっていた。何かを成し遂げようとするなら手段を選んでいる場合ではない。これはもちろん犯罪は例外としても、だ。

 『キミはゲームをやる? 強い? まぁ、自分でそういう人も少ないだろうけど、でもね、強い人ってのはいらない拘りを簡単に捨てる。ルールの中で出来る限りの可能性を見て、その中で最善の行動に出る。自分のポリシーが、拘りがなんていっていいのは、勝ちを積み上げて余裕のある人だけ。弱い人間はもっとがむしゃらにならなきゃならない。でなきゃ、勝てないんだよ』

 お兄さんがそういっていた。ぼくはーーまぁ、ゲームではまぁまぁ勝てるほうだと思う。じゃあ、ぼくが勝てる相手、勝てない相手、その人たちと自分の差は一体何処にあるのだろう。それは、やり込みは当たり前としても、やはり柔軟な考え方なのかもしれない。おれはこうやってやるんだ!ーーそういった考えは自分の視野も行動範囲もバンバンに狭めてしまう。逆に強いヤツってのは自分を縛り付けず、むしろ気楽に勝負をしている。そうだ。その差だ。

 ぼくは今、間違いなく弱者の方向にいる。だからといって、ぼく自身がいつまでも弱者というワケでもないだろう。だとしたら、今のぼくに出来ることはーー

「ねぇ、どうしたの?」

 その声でぼくは正気に戻った。声の主は野崎だった。野崎は不思議そうにぼくのことを見ていた。ハルナはぼくを心配そうに見ていた。ぼくは関口のほうを見た。前は昼休みのみの開催だった『ネイティブ』も今では朝も放課後も当たり前にやっていた。

 それも結局は需要があるからそうなったまでだ。そう、需要が拡大したということはそれだけ求められているということ。ぼくが端からその衰退をただ願って待ったところで、そんなことには何の価値もないことはわかりきっていた。ならば、ぼくがすべきはーー

 チャイムが鳴った。それと共に敗北者は絶望の声を上げ、勝者は咆哮するか無言で不敵な笑みを浮かべていた。

 不敵な笑みーー関口。

 ぼくはとうとう腹を決めた。

 【続く】
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登場人物紹介

どうも!    五条です!


といっても、作中の登場人物とかではなくて、作者なんですが。


ここでは適当に思ったことや経験したことをダラダラと書いていこうかな、と。


ま、そんな感じですわ。

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