【センサー追尾からは逃げられない】

文字数 2,941文字

 突然のことに困惑することもあるだろう。

 というか、何事も予定通りに行くことは殆どなく、大なり小なりトラブルは発生するモノだ。そして、そんなトラブルにも、想定内のモノと想定外のモノの二種類があるだろう。

 そもそも想定外なのだからトラブルたりうるんじゃねぇの?って感じはするのだけど、トラブルには予測することが出来るモノもある。

 例えるなら、曲がり角を曲がろうとしたら、車が飛び出して来るかもしれない。或いは準備を怠ったことで、面倒ごとが後になって舞い込んで来るだろう、などとそのシチュエーションは様々だ。

 とはいえ、これは逆にいえば想定の範囲内であれば、トラブルは予防できるということだ。

 問題はやはり想定外のトラブルだろう。

 想定外のトラブルの代表格といえば、地震のような災害がそうだろう。災害は待ってくれない。いつ、どこで、如何なる状況下であろうと災害というヤツには人の事情など関係ない。

 或いは事故なんかもそのひとつだろう。乗っている乗り物が、突然に事故に巻き込まれるなんてことはよくある話だ。

 当然、想定できる事故もあるだろう。ただ、それは自分の不注意が招く事故のことであって、問題は自分ではどうにもできない、外部から訪れる突然の事故というヤツだ。

 仮に対向車のドライバーが居眠りをしていたとしたら、こちらに突撃して来かねないということだ。そればかりは自分では予測できない。

 そういった突然やってくるトラブルに見舞われたら、結局、最後にモノをいうのはその人の器量や技量となるのはいうまでもない。

 とはいえ、すべての人が器用にトラブルに対処できるワケではない。経験がなければ戸惑うのは当たり前だし、萎縮して何も出来なくなってしまうことだってあるだろう。

 かくいうおれはというと、どちらかといえば、トラブルに巻き込まれがちではあるが、その対処は非常に苦手だ。

 いってしまえば、舞台上で突然セリフを忘れるなんてこともトラブルのひとつではあるのだけど、これはアドリブで何とか出来はする。

 忘れないようにちゃんとセリフ覚えておけよって話になりそうだけど、舞台上で急にセリフを忘れるなんてことは、誰にでもよくある話だったりする。だから、こればかりは予防もできたモンじゃないが、とはいえ、これに対処出来なかったこともない。

 そういうと急場のトラブルには強いんじゃないのって感じになりそうだけど、それはダウト。おれという人間は、急場では結構役に立たないモンなのだ。自分が残念な人間であることを告白してどうするーー今更か。

 さて、今日はそんな急なトラブルに纏わる話をしていこうと思う。

 あれは大学一年の夏頃のことだった。その頃はまだパニックなんてゴミとは無縁で、期末試験も終わって長期休暇に入ったところだった。

 それに伴い、おれは下宿先から五村に戻ろうとしていた。数ヶ月ぶりに五村の街へ帰れる、と胸を踊らせ、おれは電車を乗り継いで我が故郷へと向かっていた。

 とはいえ、だ。

 五条氏と電車といえば、クソほど相性が悪いことはいうまでもない。

 おれも電車なんか大嫌いだし、そもそも電車に乗ると突然体調が悪くなったり、便意を催したり、東南アジアのホモ十人に身体を触られたりすることがあるワケだーー最後のは完全にやばいトラブルの悪例だよな。

 とはいえ、そんなトラブルが日常的に起こるかというとそうでもなく、この時はおれも神経を尖らせるようなこともなく、バカみたいに音楽を聴きながら、密度の濃い電車の中で立っていたのだ。そしたら、すぐ目の前にーー

 高校時代の友人である晃彦がいたのだ。

 この晃彦、おれとは高校二年、三年と同じクラスで、地元も同じ五村であり、互いに特撮が好きということもあってか、普通に仲のいいヤツだった。ちなみに、元プロボクサーの畑山隆則に似ているのだけど、それをいうと不機嫌になるので、あまりいってはいけないという。

 というか、晃彦は比較的陽気なタイプではあるのだけど、同時に怒りの沸点が低い嫌いもあり、通じるジョークと通じないジョークが結構明確だったというか。

 本人もジョークはいうとはいえ、それもかなり狭い範囲であって、下手な領域には突っ込まないし、何より下ネタはNGの傾向にあったので、中々にその見極めが難しかった。まぁ、話してみると面白いヤツなんだけどね。

 そんな晃彦が目の前にいた。それも明らかに互いの顔がわかる位置に。おれも声を掛けようかとも思ったのだけどーー

 晃彦はおれを見て何の反応を示さなかったのだ。

 これには違和感。もしかして、人違いかなと思いつつ、もしかしたら顔が合っても別人だと勘違いしてるんじゃないかと思い、おれは向こうが気づくまで待ってみることにした。

 が、おれは更なる違和感を覚えることとなったのだ。というのもーー

 股間に何かが当たっていたのだ。

 それもただ当たったというより、撫でられているといった感じだったのだ。

 これは流石に可笑しいと思わざるを得ず、おれは視線を下げて、自分の下半身を確かめたのだ。するとーー

 やっぱり、股間を触られていたんだわ。

 そう、痴漢されていたのだ。

 いやいや、触る相手を間違ってるぜ、とも思ったのだけど、万が一、おれの股間を触っているのが「かすみりさ」似の痴女だったら、むしろ思う存分触っておくんなましってなるワケで。おれもイヤな気はしないじゃない。ということで、おれの股間を触っている手の主は誰かと確かめてみたのだよ。そしたらーー

 晃彦だったんだわ。

 それもおれから目を逸らしたまま、おれの股間を愛撫してやがったのだ。

 これには思わず絶句。あの下ネタ嫌いの晃彦がおれの股間を触っているだと……。

 おれは何がなんだかわからなくなっていた。痴漢ということで手を掴もうにも、もしかしたら晃彦も大学デビューで下ネタに目覚め、男の股間を触ることに快感を覚えてしまったのかもしれないーー高校が男子校だった分、洒落にはならないけどな。

 兎に角、おれは様子を見てみようと思った。取り敢えず降りる駅は一緒なのだから、そこで晃彦に話を聴いてみよう。そう思った。が、

 晃彦はまったく関係のない駅で降りてしまったのだ。そうーー

 晃彦は晃彦じゃなかったのだ。

 晃彦が晃彦じゃないとかいうと哲学めいていてワケがわからなくなりそうではあるけど、早い話がーー

 別人だったということだ。

 これにはおれも呆然としてしまいまして、

「あれは晃彦の偽者だったのか……」

 とかことばを失いつつも、

「アレだけ似てるってことは、もしかして晃彦の兄貴か?ーーでも、晃彦の兄貴がおれの股間を触る理由は何?」

 とか妙に考え込んでしまい、結局、頭のモヤモヤは晴れませんでした。

 後日、高校の友人たちと遊びまして、その場に晃彦もいて、この時のことを話したのだけど、

「おれ、いつの間にお前の股間触ってたのか」

 と爆笑しておりました。ちなみに兄貴は関東にいないんでまったく関係ないとのこと。ついでに晃彦は、その当時はその沿線の電車を利用していなかったとのことだった。つまりーー

 あの野郎、晃彦の偽者だったんだよ!

 友人にそっくりな変態にはご注意をーー注意のしようがねぇか。

 アスタラ。
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登場人物紹介

どうも!    五条です!


といっても、作中の登場人物とかではなくて、作者なんですが。


ここでは適当に思ったことや経験したことをダラダラと書いていこうかな、と。


ま、そんな感じですわ。

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