【ブカブカシャツの誘惑】
文字数 2,401文字
ブカブカな服は着ないようにしている。
その理由は、サイズの合わない服はダサく見えがちだからだ。
まぁ、ヒップホップ文化のようにダボダボの服を着る文化があるのはいうまでもないが、それはあくまで文化的背景のもと、そういった人がそういったスタイルの服を着るから様になるのであって、そうでないダボダボなだけの服はシンプルにダサいだけでしかない。
かくいうおれにはブカブカの服に対してあまりいい思い出がない。というのも、幼少期や少年期に着ていた服が比較的大きめで、何を着ても手の甲の辺りまで袖口で隠れてしまい、それが子供ながらすげぇダサいと思っていたのだ。
そんなこともあってか、今ではサイズのデカイ服を着るくらいなら、多少きつくても手がちゃんと袖から出る服を着るようにしている。
ほんと、あの袖口が手の甲を被ってるの、すげえダサいんだよな。そのお陰か、正直長袖もそこまで好きではないというか。嫌いではないのだけどね。ちなみに、七分丈とか短いものに関してはあまり抵抗がなかったり。そこはあまりこだわりがないんよね。
兎に角、袖口が手の甲を覆っているというヴィジュアルのダサさが、ある種、自分の中でトラウマになっているワケだ。
それとブカブカシャツには個人的に変な記憶がある。今日はそんな話をしていこうーー
あれは中学三年の一学期のこと、春先で若干温かくなり始めた頃のことだった。
その頃自分が着ていた制服のサイズ感は、これまで話したような、手の甲を覆うような大きいモノではなく、大きさを見てもジャストサイズでまったく問題はなかった。
私服のほうも、そういった袖口が長い服は意図的に排除していったんで、着ることはなかった。つまりは袖口の長い服に関しては、この時点で殆ど縁がなくなっていたワケだ。
さて、そんな中、中三ともなると修学旅行がある。おれの通っていた中学では、修学旅行は京都・奈良へ行くことになっていた。
正直、関西にはまったくといっていいほど縁のなかったおれは、京都・奈良に行けることが嬉しくて仕方なかった。
いざ、当日になって修学旅行に行ってみると、案の定、非常に楽しかった。鹿に名所巡り、西側特有のストリートの感じを全身で感じながら歩くだけでも、すごく楽しかったのだ。
宿泊部屋でも、外山やキャナ、健太郎くんと一緒で、テレビの洋画放送でやっていた『スーパーマン』を観て楽しんだり、夜遅くに大富豪やポーカーをやって盛り上がったりし、メシも美味しく、文句なしな旅行だった。
そんなこんなで時間もあっという間に過ぎ、他のバカな中学生同様、京都土産に木刀ーーしかも、サイズは小刀ーーを買い、惜しみつつも旅行から帰ったのだった。
楽しかった記憶が余韻となって頭にこびりついていた。家に帰っても、まだ若い記憶がフラッシュバックしてならなかった。
そんな中である。
唐突に母に呼び出されたのだ。
声の感じからすると、どこかトゲがあるようだった。別に何か問題があることをしたワケではなかった。なら、何なのだろうか。ワケもわからずに母のもとへといくと、母は、「これは何?」といって、
おれにコン○ームを見せて来たのだ。
ワケがわからなかった。というのも、まったく身に覚えがなかったのだ。
そもそも、そういう行為をする相手もいなかったし、何よりもそんなモノを買った覚えもない。もしかして、おれは見た目ブラッド・ピットのような理想の自分を見ている気になりつつも、アナーキーなもうひとつの人格で、誰か適当な婦女子とーー
そんなワケはなかった。
じゃあ、一体何が起こっているのか。
おれはコン○ームがどこにあったのか訊ねた。母曰く、何でも制服のワイシャツの胸ポケットに入っていたとのこと。まったく覚えがなかった。ということは、誰かがイタズラでおれのシャツのポケットに忍ばせたのだろうか。
すると、母が「あれ?」といいながらワイシャツを改め始めたのだ。
何かと思ったが、母はシャツをかざして、
「ちょっとこれ着てみて」
といったのだ。おれはそれに従い、仕方なくワイシャツに袖を通してみた。するとーー
明らかにサイズがデカイのだ。
それこそ袖口で手の甲が隠れるくらいに。
これには頭の中ハテナだった。この当時、制服のワイシャツに関しては、おれはジャストサイズのものしか持っていなかったのだ。ということは、考えられることはひとつーー
誰かのシャツを間違えて持ってきてしまったのだ。
もうね、何というか申し訳なくなってきたよな。そんな感じで次の週始めに学校へ行った時、コン○ームのことは伏せて担任のブタさんに、間違えて人のシャツを持ってきてしまったと告げ、渡したのだ。
数日後、ブタさんに呼び出された。理由は簡単、シャツの持ち主がわかったのだ。
シャツの持ち主は、持田という不良といえば不良、不良じゃないといえば不良じゃないというよくわからないヤツだった。
不良なのかよくわからないといったのは、持田は日本のドラマが好みそうなスタイリッシュで、勉強はできないがどちらかというと人情に厚いタイプだったからだ。まぁ、持田に関しては別でエピソードがあるんでそちらで後日。
ついでにおれのシャツも戻って来、その後、持田と何かトラブルがあったワケでもなかったんで特に問題はなかったのだけど、持田もコン○ームを忍ばせたシャツが人の手に渡って、絶対恥ずかしかったろうな。まぁ、自業自得か。
結局、持田とはその後、特にトラブルもなく、そんな彼も中三にも関わらず家庭の事情か何かで転校してしまった。
ちなみに今はブティックで店長をし、家庭を持って幸せにしているらしい。何でそんなこと知ってるかって?ーーSNSで繋がってるから。
でも、売り物のシャツの胸ポケットには、コン○ームは忍ばせちゃダメだぜ、持田。
流石にそんなことしねぇか。
アスタラビスタ。
その理由は、サイズの合わない服はダサく見えがちだからだ。
まぁ、ヒップホップ文化のようにダボダボの服を着る文化があるのはいうまでもないが、それはあくまで文化的背景のもと、そういった人がそういったスタイルの服を着るから様になるのであって、そうでないダボダボなだけの服はシンプルにダサいだけでしかない。
かくいうおれにはブカブカの服に対してあまりいい思い出がない。というのも、幼少期や少年期に着ていた服が比較的大きめで、何を着ても手の甲の辺りまで袖口で隠れてしまい、それが子供ながらすげぇダサいと思っていたのだ。
そんなこともあってか、今ではサイズのデカイ服を着るくらいなら、多少きつくても手がちゃんと袖から出る服を着るようにしている。
ほんと、あの袖口が手の甲を被ってるの、すげえダサいんだよな。そのお陰か、正直長袖もそこまで好きではないというか。嫌いではないのだけどね。ちなみに、七分丈とか短いものに関してはあまり抵抗がなかったり。そこはあまりこだわりがないんよね。
兎に角、袖口が手の甲を覆っているというヴィジュアルのダサさが、ある種、自分の中でトラウマになっているワケだ。
それとブカブカシャツには個人的に変な記憶がある。今日はそんな話をしていこうーー
あれは中学三年の一学期のこと、春先で若干温かくなり始めた頃のことだった。
その頃自分が着ていた制服のサイズ感は、これまで話したような、手の甲を覆うような大きいモノではなく、大きさを見てもジャストサイズでまったく問題はなかった。
私服のほうも、そういった袖口が長い服は意図的に排除していったんで、着ることはなかった。つまりは袖口の長い服に関しては、この時点で殆ど縁がなくなっていたワケだ。
さて、そんな中、中三ともなると修学旅行がある。おれの通っていた中学では、修学旅行は京都・奈良へ行くことになっていた。
正直、関西にはまったくといっていいほど縁のなかったおれは、京都・奈良に行けることが嬉しくて仕方なかった。
いざ、当日になって修学旅行に行ってみると、案の定、非常に楽しかった。鹿に名所巡り、西側特有のストリートの感じを全身で感じながら歩くだけでも、すごく楽しかったのだ。
宿泊部屋でも、外山やキャナ、健太郎くんと一緒で、テレビの洋画放送でやっていた『スーパーマン』を観て楽しんだり、夜遅くに大富豪やポーカーをやって盛り上がったりし、メシも美味しく、文句なしな旅行だった。
そんなこんなで時間もあっという間に過ぎ、他のバカな中学生同様、京都土産に木刀ーーしかも、サイズは小刀ーーを買い、惜しみつつも旅行から帰ったのだった。
楽しかった記憶が余韻となって頭にこびりついていた。家に帰っても、まだ若い記憶がフラッシュバックしてならなかった。
そんな中である。
唐突に母に呼び出されたのだ。
声の感じからすると、どこかトゲがあるようだった。別に何か問題があることをしたワケではなかった。なら、何なのだろうか。ワケもわからずに母のもとへといくと、母は、「これは何?」といって、
おれにコン○ームを見せて来たのだ。
ワケがわからなかった。というのも、まったく身に覚えがなかったのだ。
そもそも、そういう行為をする相手もいなかったし、何よりもそんなモノを買った覚えもない。もしかして、おれは見た目ブラッド・ピットのような理想の自分を見ている気になりつつも、アナーキーなもうひとつの人格で、誰か適当な婦女子とーー
そんなワケはなかった。
じゃあ、一体何が起こっているのか。
おれはコン○ームがどこにあったのか訊ねた。母曰く、何でも制服のワイシャツの胸ポケットに入っていたとのこと。まったく覚えがなかった。ということは、誰かがイタズラでおれのシャツのポケットに忍ばせたのだろうか。
すると、母が「あれ?」といいながらワイシャツを改め始めたのだ。
何かと思ったが、母はシャツをかざして、
「ちょっとこれ着てみて」
といったのだ。おれはそれに従い、仕方なくワイシャツに袖を通してみた。するとーー
明らかにサイズがデカイのだ。
それこそ袖口で手の甲が隠れるくらいに。
これには頭の中ハテナだった。この当時、制服のワイシャツに関しては、おれはジャストサイズのものしか持っていなかったのだ。ということは、考えられることはひとつーー
誰かのシャツを間違えて持ってきてしまったのだ。
もうね、何というか申し訳なくなってきたよな。そんな感じで次の週始めに学校へ行った時、コン○ームのことは伏せて担任のブタさんに、間違えて人のシャツを持ってきてしまったと告げ、渡したのだ。
数日後、ブタさんに呼び出された。理由は簡単、シャツの持ち主がわかったのだ。
シャツの持ち主は、持田という不良といえば不良、不良じゃないといえば不良じゃないというよくわからないヤツだった。
不良なのかよくわからないといったのは、持田は日本のドラマが好みそうなスタイリッシュで、勉強はできないがどちらかというと人情に厚いタイプだったからだ。まぁ、持田に関しては別でエピソードがあるんでそちらで後日。
ついでにおれのシャツも戻って来、その後、持田と何かトラブルがあったワケでもなかったんで特に問題はなかったのだけど、持田もコン○ームを忍ばせたシャツが人の手に渡って、絶対恥ずかしかったろうな。まぁ、自業自得か。
結局、持田とはその後、特にトラブルもなく、そんな彼も中三にも関わらず家庭の事情か何かで転校してしまった。
ちなみに今はブティックで店長をし、家庭を持って幸せにしているらしい。何でそんなこと知ってるかって?ーーSNSで繋がってるから。
でも、売り物のシャツの胸ポケットには、コン○ームは忍ばせちゃダメだぜ、持田。
流石にそんなことしねぇか。
アスタラビスタ。