【一年三組の皇帝~弐拾捌~】

文字数 1,037文字

 人は動揺すると必ず何かしらの反応を見せるという。

 例えば、目が泳いだり、まばたきの回数が多くなったり、汗を掻いたり、落ち着きがなくなったりする。これだけ見れば、人間はわかりやすい生き物なのだと思える。

 そして恐らく、この時のぼくも同様だったに違いない。

 生活安全委員が裏で何をやっているかーーその質問がぼくのこころを大きく揺さぶったのはいうまでもなかった。いずみは生活安全委員ではない。ブレる思考の中で何度委員会の集まりを思い返しても、そこにいずみの姿はなかった。

 では、何故気づいた?

 いずみのいる一年四組の生活安全委員は比較的マジメそうな男子とやや大人しめな女子だったはずだ。それ以上の情報はまったくわからなかったが、見た目から判断するに彼らが情報を漏らしたとは考えにくい。

 だとしたら、岩浪先輩か?

 少ししかお世話になっていないとはいえ、ひとつわかるのは、岩浪先輩が規律に対して鬼のような人だということだ。そんな岩浪先輩が委員会の情報を部活の人間に漏らすだろうか。確かにいずみは何処かサバサバしているし、秘密は守るタイプにも見えなくはないが、だとしても部活で関わって精々一ヶ月強の人間をそこまで信用するとは考えにくい。

 ヤエちゃんの可能性も薄い。確かにヤエちゃんは四組の国語の授業を受け持ってはいるけど、所詮はその程度の繋がり。確かにひと目見てぼくを生活安全委員に抜擢してしまうという前科はあるとはいえ、そんなことーー

 しそうだ。

 考えれば考えるほどヤエちゃんならそういうことをしでかしそうに思えてならない。何を考えたか、ぼくが演劇部に入ったということで、演劇部の同学年で信頼出来そうなヤツをひとりあげて、ぼくのサポートをして貰う。バカみたいな話だけど、ヤエちゃんなら全然考えそうなことではある。

「どうしたんだよ?」

 ハッとした。思考の中でぼくは溺れていたらしかった。咄嗟にぼくはことばを紡いだ。

「いや。でも、何で急に?」

「いや、何つうか、色々あってさ」

 ちょっと彼女の声のトーンが落ちた気がした。何というか、そこにあるのは攻撃性ではなく、落胆の色といった感じだった。ぼくが相槌を打つと、いずみはそれを証明するかのように、

「うん、ちょっと訊いてみたかっただけ」といい、更に続けた。「いや、岩浪先輩も生活安全委員じゃん。でも、流石にあの先輩には訊けねぇじゃん? で、お前も生活安全だって話だったからさ、何か訊けるかなって」

 これには何か事情がありそうだった。

 【続く】
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登場人物紹介

どうも!    五条です!


といっても、作中の登場人物とかではなくて、作者なんですが。


ここでは適当に思ったことや経験したことをダラダラと書いていこうかな、と。


ま、そんな感じですわ。

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