【冷たい墓石で鬼は泣く~漆拾死~】

文字数 554文字

 風の渦巻く櫓の上は寒くて仕方なかった。

 村で平蔵たちに借りたボロ布数枚を重ねて、ようやく寒さにまともに対抗できるような有り様だった。わたしは寒さに震えながらも何とか目を凝らして村の回りを眺めていた。

 辺りはすっかり暗くなっていた。櫓の上は火を焚いていなかった。これもわたしの姿が見えてはいけないがため。村の人間からもいわれはしたが、わたしはわたしの仕事をまっとうするためにもそこは徹底するつもりだった。明かりが灯っているのは村の中。以前はそうすることもなかったのだが、野武士による被害があってからというモノ、明かりを灯すようになったらしい。

 しかし、そんなのは本当に効果があるのだろうか。

 確かに泥棒だったら自分の姿を見られることを嫌って明かりを避けるだろう。だが、相手は野武士、刀も持っている。物騒な話ではあるが、見られたら切り捨ててしまえばいいし、村の中で問題になってもーーそもそも既に問題になっているがーー本人たちからすれば大した問題ではない。

 だとしたら、どうしてあんな明かりを灯しているのだろう。わたしの視界に入りやすくするため、それならわかる。だが、相手もバカではないだろうし、村の中で何かしらの変化があれば警戒だってする。だとしたらーー

 下で何かが動いた。アレは。

 わたしは驚いた。

 【続く】

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登場人物紹介

どうも!    五条です!


といっても、作中の登場人物とかではなくて、作者なんですが。


ここでは適当に思ったことや経験したことをダラダラと書いていこうかな、と。


ま、そんな感じですわ。

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