【一年三組の帝王~漆~】

文字数 1,326文字

 たくさんのイメージが頭の中で回っていた。 

 演劇部。そう聞いて、ぼくはへぇと思った。いや、そんな呑気なことをいっている場合ではない。というのも、ぼくは当事者なのだ。

 入学した時点でそもそも部活に入るつもりもなかったし、生活安全委員になって以降は特にその活動のこともあって部活なんかやっている暇などないと感じていた。

 だが、しかし、である。

 ぼくは今、演劇部へと入部したーーすることになってしまった。そもそも演劇に興味があるかといわれると正直ない。映画は好きで良く観るけれど、舞台演劇というのにはまったくといっていいほど興味がなかった。

 同じお芝居じゃんといわれればその通りなのかもしれないけれど、やはり映画と舞台演劇は違う。というのも、それは描ける範囲が大きく異なることもひとつあるし、何より映画と舞台演劇ではその身近さが違う。

 そもそも、舞台演劇というのは映画とは違ってまったく身近なモノではない。

 バンドのように音源があって、それを何かしらの方法で聴いてやってみたいと行動を起こしたり、ライブハウスに足を運んでみたり出来るモノでもない。

 好きな俳優が出るから、という理由でその舞台を観に行くという形が一番身近な舞台演劇との接点なのかもしれないが、案外舞台まで追い掛けるほど好きな俳優というのは少ない。というか、いない。オマケに映画はシネコンで2000円しないでも名作が観れるが、舞台はそれよりもはるかに高いお金を払って、しかもハズレを引く可能性が大いにある。しかも、生身の人間がやっている分、クオリティが安定はせず、突発的なハプニングが起こりやすくて必ずしも一定のクオリティが保障されているモノでもない。

 そもそも中学生に舞台演劇は不釣り合いのほど値段が高過ぎて気軽に観に行くなんてことが出来ない。まぁ、中には川澄市内にある社会人劇団のように観劇の値段が安いところがあるとはいえ、だ。

 それに、ぼくは何処か舞台演劇に苦手意識があった。というのも、あの雰囲気というか、演技の傾向がどうにも苦手なのだ。要は演技の中に混じった笑って下さいといった空気とわざとらしいキライのあるあの感じだ。あればかりはどうも好きになれない。

 とはいえ、そんなこともいってはいられない。どういうワケかぼくも演劇部の一員にされてしまったのだから。

 岩浪先輩に理由を訊ねたが、それはーー

「部活を覗いて、あの後どういいワケするつもりだ? 生活安全委員の仕事で、か? わたしたちがしていることは、絶対に秘密でなきゃいけないんだよ。それに、わたしと一緒にいるほうが生活安全委員としては何かといいかもしれない。何かあったらいいなさい」

 とのことだった。早い話が演劇関係ないじゃんって感じなんだが、確かに副委員長の岩浪先輩がすぐ身近にいる空間というのは便利といえば便利だ。まぁ、そんな厳しそうな人が身近にいるという圧倒的なデメリットを考えるとウンザリしてくるが。

「えぇ!? シンちゃん、成り行きで演劇部に入ることになったの!?」ヤエちゃんはそういった後にとろけたチーズのようにだらしない笑みを浮かべた。「確かにシンちゃんイケメンだもんね! わーい楽しみ!」

 先が思いやられる。

 【続く】
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登場人物紹介

どうも!    五条です!


といっても、作中の登場人物とかではなくて、作者なんですが。


ここでは適当に思ったことや経験したことをダラダラと書いていこうかな、と。


ま、そんな感じですわ。

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