【ほのかな光がそこにある】
文字数 2,060文字
終わり良ければそれでよし。
ほんと、その通りだと思う。というか、人間の心理上、途中がどんなによくとも、最後の最後でトラブルに見舞われると、これまで経験した良い出来事よりも最後の悪い記憶ばかりがしゃしゃり出て、物事全体に対して悪い印象を抱く傾向にあるのだという。
逆にそれってどういう状況よ、と訊ねられると、例えるなら「旅行を楽しんでいたのに、最後の最後でチンピラに恐喝される」とそんな感じだろうか。
あるいは、何かの試験を受けて、途中まではよく出来たと思っても、最後の問題だけ全然できなかったならば、その試験全体の出来が悪く感じる、とそんな感じか。
まぁ、試験の構造上、基本的に簡単な問題から始まって、次第に難しい問題へと向かっていくのだから、そうなるのも無理もないし、だからこそ、全然できなかったと思っていた試験にパスしたなんて現象が起きるのだろう。
とまぁ、終わりというワードからして、『十二月の公演篇』のラストなんだなと思われるだろうけど、その通り。
ここまで散々文句を垂れてきたんだからどうせ失敗なんだろ?とも思われかねないけど、どうだろうね。というワケで、あらすじーー
『リハーサルの日はトラブル続き。これまで甘かった部分が次々と吹き出し、思うようには進まない。そんな中、何とかリハを終え、タケシさん、名人、さとちんとともに酒を飲む。不安がるさとちんを勇気づけ、おれらは夜のストリートを後にした』
と、こんな感じか。今日で本番は終わりで、打ち上げに関してはーー次回にするかな。ま、とりあえず、書いてくーー
よく晴れた朝だった。
おれはひとり、本番の会場に足を踏み入れた。まだ人は全然いない。いるのは、宗方さんやヒロキさん、タケシさんにスタッフの方々。
おれは各々の方々に挨拶をし、舞台の感じを確かめた。舞台の床を踏む、その感触を靴裏を通して感じること、いつしかそれがおれの習慣になっていた。
いけるーーそう思った。
これまで、舞台の床を踏んでダメだと思ったのは一度だけ。自分が主役を務めた舞台だけだった。まぁ、おれは大丈夫だったんだけど、他が、ね。
ただ、自分の潜在的な意識が大丈夫だと伝えている以上、舞台はきっと成功する。
集合時間が過ぎ、全体挨拶の時間となる。数団体が出るということもあって、すごい人数だ。少なくとも、舞台前の客席周りを囲めるくらいの人数がいる。
ブラストの面々以外は自信に満ちた表情。きっと、いつも通りやればいいやという感じなのだろう。とはいえ、その考えは非常に大事だ。
始業のことばをいうこととなったのは、ヒロキさんだった。が、流石の人数のせいか、プロの舞台屋も緊張しているらしく、
見事に噛んだ。
おれも思わず、「噛んでるじゃないかい!」と突っ込んでしまった。が、お陰で場の空気は和んだんで、それはそれで結果オーライ。
ちなみに、下北の小劇場ではヒロキさんは大層な人物らしく、間違っても無礼な口など利けないという人が多いらしい。不届き者、五条。
始まりの会が終了し、各団体、準備に入る。ブラストも同様に最後の準備をすることとなったのだが、どうにもみんなの顔色がよくない。まるで、数時間後にギロチンでも落とされるかといったような顔をしていた。
「あぁーん! 緊張するわぁん!」
ブラストの面々に向かって、おれはいう。
「どこがよ」とよっしー。
「ははは、黙れ」とタケシさん。
「お前が緊張してるとことか見たことないよ」とヒロキさん。いや、流石に初舞台の時は緊張してたけどな。
そして、笑うメンバーたち。いい感じに緊張は解れた。後はやるだけだった。
ブラストの出番は全団体中、一番最後。時間的な猶予はあるが、問題は他団体の芝居にメンバーが飲まれないか、だった。
……おれ?ーーまったく飲まれないよね。おれはただ自分の芝居をやるだけなんで。
他の団体の芝居は素晴らしいモノだった。だが、大切なのは、「自分たちこそが一番いい芝居をする」という心掛けだ。もちろん、それを前面に出すのは大人げないけれど、そのスピリットがなければ、いい芝居はできない。
時間はあっという間に過ぎ、気づけば自分たちの出番前の団体の芝居になっていた。
うしろ髪を引かれる思いではあったが、おれたちは控え室に戻り、衣装に着替えてメイクをした。
メイクのやり方を知らないヤマムーとさとちんにどうすればいいか教えつつ、静かに時が来るのを待つ。
本番直前。前団体が自分たちの装着小道具を片付ける中、こちらも準備に取り掛かった。ステージ上からヒロキさんに頷いて挨拶する。そんな中、おれの水晶体にヨシエさん、テリー、尚ちゃん、ゆーきさんが映った。気恥ずかしくてすぐ視線を外したけどさ。
本番前、袖裏にてメンバーたちと握手をし、ベストを尽くそうと互いに健闘を祈った。
表が暗転した。入りの音楽が流れる。そしておれたちは、暗闇の中、舞台に向かったーー
と今日はこんな感じ。本番の話は打ち上げの話と一緒にするわ。んじゃ、
アスタラビスタ。
ほんと、その通りだと思う。というか、人間の心理上、途中がどんなによくとも、最後の最後でトラブルに見舞われると、これまで経験した良い出来事よりも最後の悪い記憶ばかりがしゃしゃり出て、物事全体に対して悪い印象を抱く傾向にあるのだという。
逆にそれってどういう状況よ、と訊ねられると、例えるなら「旅行を楽しんでいたのに、最後の最後でチンピラに恐喝される」とそんな感じだろうか。
あるいは、何かの試験を受けて、途中まではよく出来たと思っても、最後の問題だけ全然できなかったならば、その試験全体の出来が悪く感じる、とそんな感じか。
まぁ、試験の構造上、基本的に簡単な問題から始まって、次第に難しい問題へと向かっていくのだから、そうなるのも無理もないし、だからこそ、全然できなかったと思っていた試験にパスしたなんて現象が起きるのだろう。
とまぁ、終わりというワードからして、『十二月の公演篇』のラストなんだなと思われるだろうけど、その通り。
ここまで散々文句を垂れてきたんだからどうせ失敗なんだろ?とも思われかねないけど、どうだろうね。というワケで、あらすじーー
『リハーサルの日はトラブル続き。これまで甘かった部分が次々と吹き出し、思うようには進まない。そんな中、何とかリハを終え、タケシさん、名人、さとちんとともに酒を飲む。不安がるさとちんを勇気づけ、おれらは夜のストリートを後にした』
と、こんな感じか。今日で本番は終わりで、打ち上げに関してはーー次回にするかな。ま、とりあえず、書いてくーー
よく晴れた朝だった。
おれはひとり、本番の会場に足を踏み入れた。まだ人は全然いない。いるのは、宗方さんやヒロキさん、タケシさんにスタッフの方々。
おれは各々の方々に挨拶をし、舞台の感じを確かめた。舞台の床を踏む、その感触を靴裏を通して感じること、いつしかそれがおれの習慣になっていた。
いけるーーそう思った。
これまで、舞台の床を踏んでダメだと思ったのは一度だけ。自分が主役を務めた舞台だけだった。まぁ、おれは大丈夫だったんだけど、他が、ね。
ただ、自分の潜在的な意識が大丈夫だと伝えている以上、舞台はきっと成功する。
集合時間が過ぎ、全体挨拶の時間となる。数団体が出るということもあって、すごい人数だ。少なくとも、舞台前の客席周りを囲めるくらいの人数がいる。
ブラストの面々以外は自信に満ちた表情。きっと、いつも通りやればいいやという感じなのだろう。とはいえ、その考えは非常に大事だ。
始業のことばをいうこととなったのは、ヒロキさんだった。が、流石の人数のせいか、プロの舞台屋も緊張しているらしく、
見事に噛んだ。
おれも思わず、「噛んでるじゃないかい!」と突っ込んでしまった。が、お陰で場の空気は和んだんで、それはそれで結果オーライ。
ちなみに、下北の小劇場ではヒロキさんは大層な人物らしく、間違っても無礼な口など利けないという人が多いらしい。不届き者、五条。
始まりの会が終了し、各団体、準備に入る。ブラストも同様に最後の準備をすることとなったのだが、どうにもみんなの顔色がよくない。まるで、数時間後にギロチンでも落とされるかといったような顔をしていた。
「あぁーん! 緊張するわぁん!」
ブラストの面々に向かって、おれはいう。
「どこがよ」とよっしー。
「ははは、黙れ」とタケシさん。
「お前が緊張してるとことか見たことないよ」とヒロキさん。いや、流石に初舞台の時は緊張してたけどな。
そして、笑うメンバーたち。いい感じに緊張は解れた。後はやるだけだった。
ブラストの出番は全団体中、一番最後。時間的な猶予はあるが、問題は他団体の芝居にメンバーが飲まれないか、だった。
……おれ?ーーまったく飲まれないよね。おれはただ自分の芝居をやるだけなんで。
他の団体の芝居は素晴らしいモノだった。だが、大切なのは、「自分たちこそが一番いい芝居をする」という心掛けだ。もちろん、それを前面に出すのは大人げないけれど、そのスピリットがなければ、いい芝居はできない。
時間はあっという間に過ぎ、気づけば自分たちの出番前の団体の芝居になっていた。
うしろ髪を引かれる思いではあったが、おれたちは控え室に戻り、衣装に着替えてメイクをした。
メイクのやり方を知らないヤマムーとさとちんにどうすればいいか教えつつ、静かに時が来るのを待つ。
本番直前。前団体が自分たちの装着小道具を片付ける中、こちらも準備に取り掛かった。ステージ上からヒロキさんに頷いて挨拶する。そんな中、おれの水晶体にヨシエさん、テリー、尚ちゃん、ゆーきさんが映った。気恥ずかしくてすぐ視線を外したけどさ。
本番前、袖裏にてメンバーたちと握手をし、ベストを尽くそうと互いに健闘を祈った。
表が暗転した。入りの音楽が流れる。そしておれたちは、暗闇の中、舞台に向かったーー
と今日はこんな感じ。本番の話は打ち上げの話と一緒にするわ。んじゃ、
アスタラビスタ。