【一年三組の皇帝~睦拾死~】
文字数 894文字
慣れない相手に会話のない時間ほど困ったモノはないと思う。
気まずくてどうにもならないというか。ぼくといずみは川澄中央商店街の真ん中にある広場のベンチに並んで座っていた。
いずみは真っ直ぐ前を向いて大きく息を吐いた。まるでタバコでも吸っているよう。まぁ、見た目のやさぐれた感じでいえば吸っていてもあまり違和感はないのだけど、多分、いずみは吸っていないし、これからも吸うことはないと思うーー必要に迫られない限り。
いずみ曰く、彼女はあまりノドが強くないそうだ。つまり、ノドに悪いタバコや酒なんてもってのほか。演劇というモノに情熱を掛けている彼女からしたら、そういう悪影響のあるモノに自ら手を出すことはまずないだろう。
「あのさ」いずみは突然に口を開いた。「シンゴはさぁ、何で芝居やろうと思ったの?」
予想してなかったといえばウソになるが、あまり訊かれたくはなかった質問だった。ぼくは少し考えていった。
「まぁ、間違えて教室入っちゃって成り行きで、かな」
「ほんとかよ」胡散臭いモノを突き放すようにいずみはいった。「ほんとにそれだけ?」
質問の意図がわからず、ちょっと考えてしまった。そうしているといずみはーー
「別にさ、それだけだったら逃げればいいじゃん。勉強や仕事と違って、興味なかったらやる必要もないし、無理矢理勧誘されたって逃げればいいんだよ。でも、残ったってことは何かしら感じるモノがあったんじゃないの?」
そういわれると納得はした。ぼくは答えた。
「......確かに、それだけだったら入る理由なんかないよね。押しに負けたってのもあるといえばあるんだけど、でも、おれもそういう演技ってのはテレビや映画で観てて興味はあったから、何となく自分でもやってみたいって思ったんだと思う」
「うん」いずみはいった。「そうだろうね」
まるで鋼鉄のような重圧のある空気が霧のようにぼくにのし掛かって来る。ぼくは返答に困ってしまった。どうすればいい。
「今、つまんないだろ?」
突然、いずみにそういわれて呆気に取られた。ぼくはそれを演劇のことだと思って否定した。だけど、いずみはーー
「違うよ、学校、な」
【続く】
気まずくてどうにもならないというか。ぼくといずみは川澄中央商店街の真ん中にある広場のベンチに並んで座っていた。
いずみは真っ直ぐ前を向いて大きく息を吐いた。まるでタバコでも吸っているよう。まぁ、見た目のやさぐれた感じでいえば吸っていてもあまり違和感はないのだけど、多分、いずみは吸っていないし、これからも吸うことはないと思うーー必要に迫られない限り。
いずみ曰く、彼女はあまりノドが強くないそうだ。つまり、ノドに悪いタバコや酒なんてもってのほか。演劇というモノに情熱を掛けている彼女からしたら、そういう悪影響のあるモノに自ら手を出すことはまずないだろう。
「あのさ」いずみは突然に口を開いた。「シンゴはさぁ、何で芝居やろうと思ったの?」
予想してなかったといえばウソになるが、あまり訊かれたくはなかった質問だった。ぼくは少し考えていった。
「まぁ、間違えて教室入っちゃって成り行きで、かな」
「ほんとかよ」胡散臭いモノを突き放すようにいずみはいった。「ほんとにそれだけ?」
質問の意図がわからず、ちょっと考えてしまった。そうしているといずみはーー
「別にさ、それだけだったら逃げればいいじゃん。勉強や仕事と違って、興味なかったらやる必要もないし、無理矢理勧誘されたって逃げればいいんだよ。でも、残ったってことは何かしら感じるモノがあったんじゃないの?」
そういわれると納得はした。ぼくは答えた。
「......確かに、それだけだったら入る理由なんかないよね。押しに負けたってのもあるといえばあるんだけど、でも、おれもそういう演技ってのはテレビや映画で観てて興味はあったから、何となく自分でもやってみたいって思ったんだと思う」
「うん」いずみはいった。「そうだろうね」
まるで鋼鉄のような重圧のある空気が霧のようにぼくにのし掛かって来る。ぼくは返答に困ってしまった。どうすればいい。
「今、つまんないだろ?」
突然、いずみにそういわれて呆気に取られた。ぼくはそれを演劇のことだと思って否定した。だけど、いずみはーー
「違うよ、学校、な」
【続く】