【帝王霊~玖拾~】

文字数 1,093文字

 背中がひんやりとしたようだった。

 何だろう、この気持ち悪さは。おれは不意にそう思った。この関口という少年を見ていると、自分の内にある何かを打ち砕かれるような気分になる。いや、何かを覗き込まれているような不快感が走る。

 彼は所詮は中学生。人生経験もいうてそこまで豊富な年代ではないはず。なのに、何がこんなにもおれに危機感というか、不快感を与えるのだろうか。わからない。

「あなたは?」

 関口少年は不意におれに話し掛けて来た。ハッとした。まさか、こんな風に話し掛けられるとは思ってもいなかった。彼の目には不気味な光が宿っているようだった。黒目は何処となく濁っているように見えた。まるで、目に感情というモノがないようだった。

 おれは戸惑いつつも自分の名前をいった。すると、関口少年は何かに納得したように声を上げた。感嘆の声にしてはトーンが機械的でまったくといっていいほど生気が感じられなかった。まるでブリザード。

 どうしたのか訊ねると、関口少年は口許に不敵な笑みを浮かべて口を開いた。

「山田和雅さん、川澄居合会に所属していますね。段位は四段」

 彼のことばにおれは思わず身構えた。

「どうしてそれを」

「そんなに驚かないで下さいよ」関口少年はまたもや不敵な笑みを浮かべた。「単純に先生と林崎くんが話してるのを聞いただけですから」

 なるほどと納得しても良かったが、おれはどうもそれが不自然でならなかった。そもそも自分の所属する居合の会の話題を学校でそんなに出すだろうか。それに、仮におれの名前が出たとして、おれの段位、フルネームが出るだろうか。わからない。

「......そうなんだ」

 おれは納得していないながらも納得したように答えた。と、関口少年は更にいった。

「そういえば、俳優をされている、とか」

 これも学校で話題に出たことなのだろうか。いや、そんな話を一体どこでするというのか。シンちゃんは演劇部。だが、だからといって日常の中でおれの話をするはずがないし、それならばヤエ先生がおれにそのことをいっているはずだ。

 ということは、この関口少年は聞いているのだ。何処かで、おれのことを。でなければ説明がつかないーー説明が。

「ゴメンね、関口くん」ヤエ先生が申しワケなさそうにいった。「今、先生たち忙しくて」

「中山さんを探してるんですね」

 件の名前を出すと同時に関口少年は薄ら笑いを浮かべて見せた。

「え......」ヤエ先生は戸惑っていた。「うん、そうだけど......。何があるかわからないから、取り敢えず今日はすぐ帰りなさい」

 ヤエ先生がそう促すと関口少年はーー

「ぼく、怪しい男、見ましたよ」

 【続く】
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登場人物紹介

どうも!    五条です!


といっても、作中の登場人物とかではなくて、作者なんですが。


ここでは適当に思ったことや経験したことをダラダラと書いていこうかな、と。


ま、そんな感じですわ。

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