【寄り道の果てに】
文字数 2,215文字
寄り道というのはいいモノだと思う。
まぁ、寄り道なんてするだけ無駄という人も当然いるだろうし、そんなことをするくらいなら目的地まで直行して、やることをやったほうが絶対的にいいという意見もあるだろう。それは尤もだとおれも思う。
だが、時には道から外れて何処かをのらりくらりと歩き回って見るのもいいと思うのだ。
ひとつの道のりを100回往復するのに、100回とも同じ道を通るのは、たったひとつの道程しか知り得ないが、100回の内に何度か別の道を通って道草を食えば、その道草を食っただけ別の景色を目にすることが出来るし、自分の中の世界も広がるというモノだ。
おれはその、寄り道の果てに見る光景というのが、生きる上で結構重要なんじゃないかと思っている。理由としては上に書いた通りなのだけど、それだけでなく新鮮な光景を目にするという経験は、脳を活性化させてくれる。
今までは知らなかった、思い付きもしなかった何かを与えてくれるーーそんな経験が待っているとおれは思うのだ。
確かに寄り道なんて『無駄』だと思う。だが、人生はそんな『無駄』を積み重ねてこそ充実するのではないか、と思うのだ。
人通りの多いメインストリート、その合間にある人気のない路地の姿を知っていると知らないとでは全然違う。もしかしたら、そこに美味しいラーメン屋があるかもしれない。隠れ家的な居酒屋があるかもしれない。そして、日陰に隠れた『何か』がいるかもしれない。
そう考えると、寄り道というのは無限の可能性を秘めていると思う。
当然、これはただ道を歩く上での寄り道のことだけをいっているのではない。人生に於ける経験、体験に於ても同じだと思うのだ。
大人なら仕事、子供なら勉強、それぞれに領分があるだろう。だが、そこだけを行ったところで人生に充実はないと思うのだ。
そこにはやはり『有益な無駄』があって初めて人生は輝くのだと思う。
いってしまえば、『趣味』なんてモノは『有益な無駄』そのものだと思う。別になくても生きていける。だが、ないとつまらない。
そんな寄り道をするのも時には大切だと思うのだーー
さてさて、『音楽祭篇』である。ただ、今日は本題からやや外れた外伝的な位置付けになると思う。何で、そんな話をここでするのかって?ーー本題にするつもりがシンプルに書き損ねてしまったからだよ。あらすじーー
「弛緩した空気が、ビロードのような桧皮色の空に包まれた教室に流れていた。漠然とした気持ちで放課後の教室に座っていた五条氏は、その場に流れるアッパーな雰囲気を傍観していた。そんな中、クラスメイトに誘われて、五条氏も練習に参加するのだったーー」
とまぁ、こんな感じか。外伝的な話は何回で終わるかな。取り敢えずやってくーー
「有志で三年生のアカペラ斉唱をする男子生徒を募りたいと思っていますッ!」
音楽祭の練習が始まるか否かといったタイミングで、担任のブタさんがそういった。だが、そんな話にポジティブな反応を示す生徒は少なく、むしろ「行くワケねぇじゃん」といったアンニュイな空気が流れていた。
ただ、そんな中、おれはこの有志企画が気になって仕方なかった。それは内申点のため、という邪な気持ちもあれば、単純に面白そうだからという気持ちもあった。
確かに、この時点のおれは歌が特別上手いワケでもなければ、音楽に関して造詣が深いというワケでもなかった。だが、何となく面白そうだと思ってしまったのだ。まぁ、歌うのが比較的好きだったのはあるかもしれん。
ブタさんは更に続けるーー
「アカペラに参加したい有志の人は、○日の昼休みに音楽室まで来て下さい」
よし、行ってみるかーーおれは好奇心に突き動かされていた。だが、ひとりで行くとなると心許ない。そこで、適当にそこら辺の人に話を振ってみたのだ。するとーー、
榎本と麦藁が参加するとのことだった。
まぁ、おれ、榎本、麦藁というと総合学習の発表にて、『カラスの生態』というテーマで劇形式の発表をし、学年代表になるようなメンツだ。もしかしたら、通じるモノがあったのかもしれない。それはさておきーー
アカペラ斉唱の有志を募る当日の昼休み、おれは榎本、麦藁と共に音楽室へと赴いた。
音楽室には思った以上に人がおり、そのメンツはオタクっぽいヤツから不良、普通な感じのヤツ、スポーツマンに優等生と色んなヤツがおり、その中には成川と勝明もいた。麻生はーーいたかもしれないけど、多分いない。いたら、歌声でヤバイのがいると一発でわかるからな。まぁ、それはそれでーー
思った以上の賑わいと、参加希望の男子生徒のバラエティ具合には、おれも驚いた。そもそも音楽に何か絶対興味ないだろって感じのオタクや、そもそも音楽祭来るの?って感じの不良がいる時点でビックリだった。まぁ、さすがに「お前、何でここにいるの?」とは訊けなかったけどーーそりゃそうよな。
そんな感じでメンツの揃い具合に驚きつつ、地べたに座っていると、ブタさんがやって来た。ブタさんは室内を一瞥するとーー
「参加希望者は以上かな?」
といった。それに対して特に異論もなく、誰かが遅れて来るというような話もなかった。
「では、締め切りますーー」
ブタさんのキンキンと甲高い声が、有志として集まった中三男子の内耳にこだましたーー
とまぁ、今日はこんな感じか。結局、数回に分けることになるのね。いつものことか。
アスタラ。
まぁ、寄り道なんてするだけ無駄という人も当然いるだろうし、そんなことをするくらいなら目的地まで直行して、やることをやったほうが絶対的にいいという意見もあるだろう。それは尤もだとおれも思う。
だが、時には道から外れて何処かをのらりくらりと歩き回って見るのもいいと思うのだ。
ひとつの道のりを100回往復するのに、100回とも同じ道を通るのは、たったひとつの道程しか知り得ないが、100回の内に何度か別の道を通って道草を食えば、その道草を食っただけ別の景色を目にすることが出来るし、自分の中の世界も広がるというモノだ。
おれはその、寄り道の果てに見る光景というのが、生きる上で結構重要なんじゃないかと思っている。理由としては上に書いた通りなのだけど、それだけでなく新鮮な光景を目にするという経験は、脳を活性化させてくれる。
今までは知らなかった、思い付きもしなかった何かを与えてくれるーーそんな経験が待っているとおれは思うのだ。
確かに寄り道なんて『無駄』だと思う。だが、人生はそんな『無駄』を積み重ねてこそ充実するのではないか、と思うのだ。
人通りの多いメインストリート、その合間にある人気のない路地の姿を知っていると知らないとでは全然違う。もしかしたら、そこに美味しいラーメン屋があるかもしれない。隠れ家的な居酒屋があるかもしれない。そして、日陰に隠れた『何か』がいるかもしれない。
そう考えると、寄り道というのは無限の可能性を秘めていると思う。
当然、これはただ道を歩く上での寄り道のことだけをいっているのではない。人生に於ける経験、体験に於ても同じだと思うのだ。
大人なら仕事、子供なら勉強、それぞれに領分があるだろう。だが、そこだけを行ったところで人生に充実はないと思うのだ。
そこにはやはり『有益な無駄』があって初めて人生は輝くのだと思う。
いってしまえば、『趣味』なんてモノは『有益な無駄』そのものだと思う。別になくても生きていける。だが、ないとつまらない。
そんな寄り道をするのも時には大切だと思うのだーー
さてさて、『音楽祭篇』である。ただ、今日は本題からやや外れた外伝的な位置付けになると思う。何で、そんな話をここでするのかって?ーー本題にするつもりがシンプルに書き損ねてしまったからだよ。あらすじーー
「弛緩した空気が、ビロードのような桧皮色の空に包まれた教室に流れていた。漠然とした気持ちで放課後の教室に座っていた五条氏は、その場に流れるアッパーな雰囲気を傍観していた。そんな中、クラスメイトに誘われて、五条氏も練習に参加するのだったーー」
とまぁ、こんな感じか。外伝的な話は何回で終わるかな。取り敢えずやってくーー
「有志で三年生のアカペラ斉唱をする男子生徒を募りたいと思っていますッ!」
音楽祭の練習が始まるか否かといったタイミングで、担任のブタさんがそういった。だが、そんな話にポジティブな反応を示す生徒は少なく、むしろ「行くワケねぇじゃん」といったアンニュイな空気が流れていた。
ただ、そんな中、おれはこの有志企画が気になって仕方なかった。それは内申点のため、という邪な気持ちもあれば、単純に面白そうだからという気持ちもあった。
確かに、この時点のおれは歌が特別上手いワケでもなければ、音楽に関して造詣が深いというワケでもなかった。だが、何となく面白そうだと思ってしまったのだ。まぁ、歌うのが比較的好きだったのはあるかもしれん。
ブタさんは更に続けるーー
「アカペラに参加したい有志の人は、○日の昼休みに音楽室まで来て下さい」
よし、行ってみるかーーおれは好奇心に突き動かされていた。だが、ひとりで行くとなると心許ない。そこで、適当にそこら辺の人に話を振ってみたのだ。するとーー、
榎本と麦藁が参加するとのことだった。
まぁ、おれ、榎本、麦藁というと総合学習の発表にて、『カラスの生態』というテーマで劇形式の発表をし、学年代表になるようなメンツだ。もしかしたら、通じるモノがあったのかもしれない。それはさておきーー
アカペラ斉唱の有志を募る当日の昼休み、おれは榎本、麦藁と共に音楽室へと赴いた。
音楽室には思った以上に人がおり、そのメンツはオタクっぽいヤツから不良、普通な感じのヤツ、スポーツマンに優等生と色んなヤツがおり、その中には成川と勝明もいた。麻生はーーいたかもしれないけど、多分いない。いたら、歌声でヤバイのがいると一発でわかるからな。まぁ、それはそれでーー
思った以上の賑わいと、参加希望の男子生徒のバラエティ具合には、おれも驚いた。そもそも音楽に何か絶対興味ないだろって感じのオタクや、そもそも音楽祭来るの?って感じの不良がいる時点でビックリだった。まぁ、さすがに「お前、何でここにいるの?」とは訊けなかったけどーーそりゃそうよな。
そんな感じでメンツの揃い具合に驚きつつ、地べたに座っていると、ブタさんがやって来た。ブタさんは室内を一瞥するとーー
「参加希望者は以上かな?」
といった。それに対して特に異論もなく、誰かが遅れて来るというような話もなかった。
「では、締め切りますーー」
ブタさんのキンキンと甲高い声が、有志として集まった中三男子の内耳にこだましたーー
とまぁ、今日はこんな感じか。結局、数回に分けることになるのね。いつものことか。
アスタラ。