【洗濯戦線異常しかなし】
文字数 2,024文字
自分の仕事には責任を持たなければならない。
これは何も大人だけに限った話ではない。子供だって自分の役割を持っている。勉強したり学内の自分の係や委員会をまっとうしたりと小さな社会の中にだって仕事はあるのだ。
人はそういった小さな仕事を積み重ねて成長する。そして、大人になって大きな仕事を務めるようになっていくのだ。
当たり前の話といえばそうなのだけど、そんな当たり前の話ですら忘れてしまうのがこの忙しい世の中だ。とまぁ、流れの中を逆流するように生きていれば、それも無理はないだろう。
とはいえ、時にはふたつの仕事を天秤に掛け、どちらを優先させるかを決めなければいけないシチュエーションも出てくる。
そうなった場合、アンタならどうするだろうかーー
というワケで今日はそんな仕事の優先順位について。お堅い話になりそうな話題ではあるけどーーこの駄文集の記事がお堅くなるワケなんかないだろ?
まぁ、気軽に読んでいってくれたまえ。んじゃ、やってくわーー
あれは中学二年の時だった。
中学二年というと受験もなくフリーな立ち位置なこともあって随分と楽しかったが、同時にイカレたような出来事もたくさんあった。
ある日の帰りのホームルームの時間のことである。廊下がどうにもザワついていたのだ。
何だろうと野次馬根性で、おれは何があったか見物にいこうかとも思ったが、当時の担任だった小野寺先生が腐敗した深海魚みたいな顔でホームルームを進めていたので、それも出来ずにモヤモヤした気持ちでいたのだ。
ホームルームが終わると部活の時間となり、おれは着替えて体育館へと向かった。
一階フロアの半面にいくつかの卓球台を準備して練習を始める。だが、やはり帰りのホームルーム時の騒ぎが気になってしかたなかった。
「なぁ」おれは一緒にラリーをしていた麻生に訊ねた。「帰りのホームルームの時、何か騒がしくなかったか?」
「あぁ」麻生はいう。「多分それ、うちのクラスのことだと思うよ」
まさかの一発ビンゴ。おれはダークグリーンのフィールドをバウンドするオレンジ色の硬球を赤と黒のラバーでドライブしながら麻生に事情を訊ねた。麻生がいうには何でもーー
担任の聖二がいなくなったというのだ。
なるほど。担任教師がいないとなったら騒ぎになっても可笑しくはない。
聖二という教師について以前話したのは覚えているだろうか。松澤聖二はおれの通っていた中学の技術科の教員で、ハゲ上がった頭と歩くパワハラといっても過言ではない性格の持ち主という今の時代でいえば一番割りを食うであろう教員だったーーハゲは関係ないか。
さて、そんな聖二がいなくなってしまったというのだ。
が、麻生がいうには聖二はどこにいってしまったのかわからず、結局は学年主任の先生が代わりに帰りのホームルームをやってその場は収まったとのことだった。にしても聖二はどこへいってしまったのだろうか。
翌日、すべてのカリキュラムを終えて部活にいくと麻生が笑いながらおれのほうへやって来たのだ。麻生に何があったか訊ねると、
「五条、聖二のヤツ、マジでヤベェぞ」
といってきたんだわ。で、おれも何があったのかと更に訊き返したんだけど、そしたら驚愕の事実が返ってきたのだ。というのも、前日に聖二が突然いなくなったのはーー
聖二が無断で帰宅したからとのことだった。
いやいや中学生じゃないんだから仕事中に勝手に帰っちゃいかんだろ。
まぁ、これが家族が事故に遭ったとか緊急事態があって、本当なら後で連絡するつもりだったとかならそれも仕方ないのだろうけど、麻生の反応的にそれはないのは明白だった。
おれは麻生に聖二が勝手に帰宅した理由を訊ねた。すると麻生は笑いながらもそれを説明してくれた。何とーー
聖二は洗濯物を畳む為に帰宅したというのだ。
そうか。洗濯物を畳むのも大事な仕事だもんな。それに危険の大きいし大変な仕事だ。下手したら死人だってーー
ワケ、が、わから、なかった。
洗濯物を畳むって。まぁ、共働きだったら洗濯物を誰が畳むかとかも問題になるだろうけど、聴くところによると聖二の奥さんはーー
専業主婦とのことだった。
専業主婦とのことだった。
専業主婦とのことだった。
衝撃的過ぎて思わず三回も書いてしまったわ。え、だったら仕事を放り出して洗濯物を畳みに帰る必要はあるのか?
わからなかった。
どういう理論でそうなっているのか、おれには皆目わからなかった。きっと、おれの頭が悪いからそうなのだとーー
んなワケないか。
ちなみに聖二は勝手に帰宅したことで上に怒られたそうなのだけど、そんなことを平気でやる人なので全然応えてなかったとのこと。
ついでにまだ赴任してきて間もない頃だったこともあって、聖二は生徒だけならず教員からもイカレたヤツだと認定されたのでした。
おれも洗濯物畳むから仕事休みますっていってみようかな。ニート街道まっしぐら!
アスタラビスタ。
これは何も大人だけに限った話ではない。子供だって自分の役割を持っている。勉強したり学内の自分の係や委員会をまっとうしたりと小さな社会の中にだって仕事はあるのだ。
人はそういった小さな仕事を積み重ねて成長する。そして、大人になって大きな仕事を務めるようになっていくのだ。
当たり前の話といえばそうなのだけど、そんな当たり前の話ですら忘れてしまうのがこの忙しい世の中だ。とまぁ、流れの中を逆流するように生きていれば、それも無理はないだろう。
とはいえ、時にはふたつの仕事を天秤に掛け、どちらを優先させるかを決めなければいけないシチュエーションも出てくる。
そうなった場合、アンタならどうするだろうかーー
というワケで今日はそんな仕事の優先順位について。お堅い話になりそうな話題ではあるけどーーこの駄文集の記事がお堅くなるワケなんかないだろ?
まぁ、気軽に読んでいってくれたまえ。んじゃ、やってくわーー
あれは中学二年の時だった。
中学二年というと受験もなくフリーな立ち位置なこともあって随分と楽しかったが、同時にイカレたような出来事もたくさんあった。
ある日の帰りのホームルームの時間のことである。廊下がどうにもザワついていたのだ。
何だろうと野次馬根性で、おれは何があったか見物にいこうかとも思ったが、当時の担任だった小野寺先生が腐敗した深海魚みたいな顔でホームルームを進めていたので、それも出来ずにモヤモヤした気持ちでいたのだ。
ホームルームが終わると部活の時間となり、おれは着替えて体育館へと向かった。
一階フロアの半面にいくつかの卓球台を準備して練習を始める。だが、やはり帰りのホームルーム時の騒ぎが気になってしかたなかった。
「なぁ」おれは一緒にラリーをしていた麻生に訊ねた。「帰りのホームルームの時、何か騒がしくなかったか?」
「あぁ」麻生はいう。「多分それ、うちのクラスのことだと思うよ」
まさかの一発ビンゴ。おれはダークグリーンのフィールドをバウンドするオレンジ色の硬球を赤と黒のラバーでドライブしながら麻生に事情を訊ねた。麻生がいうには何でもーー
担任の聖二がいなくなったというのだ。
なるほど。担任教師がいないとなったら騒ぎになっても可笑しくはない。
聖二という教師について以前話したのは覚えているだろうか。松澤聖二はおれの通っていた中学の技術科の教員で、ハゲ上がった頭と歩くパワハラといっても過言ではない性格の持ち主という今の時代でいえば一番割りを食うであろう教員だったーーハゲは関係ないか。
さて、そんな聖二がいなくなってしまったというのだ。
が、麻生がいうには聖二はどこにいってしまったのかわからず、結局は学年主任の先生が代わりに帰りのホームルームをやってその場は収まったとのことだった。にしても聖二はどこへいってしまったのだろうか。
翌日、すべてのカリキュラムを終えて部活にいくと麻生が笑いながらおれのほうへやって来たのだ。麻生に何があったか訊ねると、
「五条、聖二のヤツ、マジでヤベェぞ」
といってきたんだわ。で、おれも何があったのかと更に訊き返したんだけど、そしたら驚愕の事実が返ってきたのだ。というのも、前日に聖二が突然いなくなったのはーー
聖二が無断で帰宅したからとのことだった。
いやいや中学生じゃないんだから仕事中に勝手に帰っちゃいかんだろ。
まぁ、これが家族が事故に遭ったとか緊急事態があって、本当なら後で連絡するつもりだったとかならそれも仕方ないのだろうけど、麻生の反応的にそれはないのは明白だった。
おれは麻生に聖二が勝手に帰宅した理由を訊ねた。すると麻生は笑いながらもそれを説明してくれた。何とーー
聖二は洗濯物を畳む為に帰宅したというのだ。
そうか。洗濯物を畳むのも大事な仕事だもんな。それに危険の大きいし大変な仕事だ。下手したら死人だってーー
ワケ、が、わから、なかった。
洗濯物を畳むって。まぁ、共働きだったら洗濯物を誰が畳むかとかも問題になるだろうけど、聴くところによると聖二の奥さんはーー
専業主婦とのことだった。
専業主婦とのことだった。
専業主婦とのことだった。
衝撃的過ぎて思わず三回も書いてしまったわ。え、だったら仕事を放り出して洗濯物を畳みに帰る必要はあるのか?
わからなかった。
どういう理論でそうなっているのか、おれには皆目わからなかった。きっと、おれの頭が悪いからそうなのだとーー
んなワケないか。
ちなみに聖二は勝手に帰宅したことで上に怒られたそうなのだけど、そんなことを平気でやる人なので全然応えてなかったとのこと。
ついでにまだ赴任してきて間もない頃だったこともあって、聖二は生徒だけならず教員からもイカレたヤツだと認定されたのでした。
おれも洗濯物畳むから仕事休みますっていってみようかな。ニート街道まっしぐら!
アスタラビスタ。