【帝王霊~百伍~】

文字数 671文字

 シンゴちゃんを見送ると急に冷たい風が吹いてきたような気がした。

 ここまで走ったせいで幾分か掻いた汗がここに来て冷えて来たらしい。まったく、汗掻きなんていいモンじゃない。夏は不快だし、脱水になる。冬はシンプルに身体が冷える。そしてその臭いは夏より冬のほうがキツイそうだ。ほんと、汗を掻かなくても生きていけるようになれないモノだろうか。

 しかし、おれもシンゴちゃんと変わらないなと思った。ヤエちゃんやいずみという少女を振り払ってまでここまで走って来たのだから。シンプルにイヤだった。いずみに犯罪者と対峙するなんて状況を経験させたくはなかったし、一度襲われているヤエちゃんにもあの時の恐怖をフラッシュバックさせたくなかった。いくら武術の覚えがあるとはいえ、おれひとりで凶器を持った相手をどうにか出来るモンではない。

 まぁ、その点でいったらシンゴちゃんが凶器を持った異常者相手に素手で勝ってしまったというのはすごいことなのだけど。

 しかし、どうしてこんなことに。ここ最近、可笑しなことがたて続いている。それも霊の世界というのに関わってしまったからなのだろうか。おれはゆっくりと異常者に近寄った。手元にはナイフはない。手元から少し先に落ちている凶器をハンカチで拾い上げると、それを異常者の手の届かない場所へと置き、異常者の右手を踏みつけた。反応はない。しっかり気絶しているようだ。手を踏みつけたまま息を確かめた。大丈夫。脈もしっかりとある。今ここでコイツを拘束できる道具は何もなかった。

 仕方なくおれは自分の上着を脱いだ。

 イヤな音がした。

 【続く】

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登場人物紹介

どうも!    五条です!


といっても、作中の登場人物とかではなくて、作者なんですが。


ここでは適当に思ったことや経験したことをダラダラと書いていこうかな、と。


ま、そんな感じですわ。

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