【一年三組の皇帝~伍拾捌~】

文字数 629文字

 予想だにしない光景にぼくは面食らった。

 これは夢だろうか。あのヤンキーの辻がぼくに向かって土下座をしながら謝っているなんて、まったく信じられなかった。

 ぼくは何といっていいのかわからなかったが、同時に何かいわなければという相反する気持ちにもなった。だが、当然のようにことばなんてモノは探せば探すほどに出てこなくなるモノだ。混乱する頭でぼくは考えた。

 これは辻の作戦、か?

 でも、その作戦のためにわざわざぼく相手に土下座をするなんて、そんな不名誉なことをするだろうか。少なくともぼくはしない。因縁の相手に土下座をすることほど屈辱的なことはない。仮にウソだとしてもそんなことはしないだろう。そして、これはぼくだけに限った話ではなくて、殆どの人に共通する考えだと思う。よほど手段を選らばない汚いヤツでもない限りは無理だろう。

 辻は、そういうヤツには思えなかった。

 何処となくカッコつけてはいるけれど、そこまで汚いヤツだとは思えなかった。確かにイジメは汚いことだが、一度解決した後はウソのように大人しくなり、ぼくに今のクラスの現状を変えるために重ね重ね話を持ち掛けて来たヤツだ。恐らく辻の気持ちは本当だと思う。だが、気を抜いてもいけない。

「何が、だよ」

 やっとの思いで出たのがそのことばだった。ぼくもまだ辻のことを潜在的な意識のもとでは信用しきれていないのだろう。だからこそ、こんなことばが飛び出して来たに違いない。ぼくは意識を澄ませた。

 辻はいったーー

 【続く】
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登場人物紹介

どうも!    五条です!


といっても、作中の登場人物とかではなくて、作者なんですが。


ここでは適当に思ったことや経験したことをダラダラと書いていこうかな、と。


ま、そんな感じですわ。

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