【ナナフシギ~参拾捌~】
文字数 1,051文字
少年の名前は清水佑人といった。
清水ーーそう、森永、鮫島と共に夜の学校に侵入した祐太朗の同級生だ。とはいえ、今は身体にクモの糸のようなネバついた何かが全身に絡まっているせいで無惨な姿になってはいたが。
「どうしてここにいるんだい?」
朗らかな口調で岩渕は訊ねた。だが、目は一切笑っていなかった。まるでこの少年にはまったくといっていい程に興味がないといわんばかりだった。清水もまだ何があったのか状況を把握しかねているようだった。
「あれ、おれ......」
清水はキョロキョロとした。だが、そこにあるのは保健室の残骸ともいえるような別の姿をした一室でしかなかった。
「何があったんだい?」
優しい口調で岩渕がいうと、清水は霞んだような声で吐き出した。
「おじさんは何でここにいんの?」
「わたしはキミと同じくらいの年の少年を探しているんだ。名前は鈴木祐太朗」
「鈴木、祐太朗......」ボーッとしながら清水はその名前を口にした。「アイツ、来たんだ」
「友達かい?」
清水は静かに首を横に振った。
「いや......。あんなヤツ、友達じゃないよ。オジサンは何でアイツを探してるの?」
岩渕は祐太朗が担任である石川先生が夜の学校の中で消えた話を聴いたといった。そして、自分が祐太朗の両親のもとで働いている立場だということを説明した。
「そうなんだ......。でも、アイツにはあんま関わるの止めたほうがいいと思うよ。アイツ、何かわかんないけど、幽霊が見えるとかパチこいてるしさ。何か、気持ち悪い」
「へぇ、そうなんですか」興味もなさそうに岩渕はいった。「でも、もし祐太朗くんが本当にお化けが見えたならどうする?」
「お化けなんかいるわけねえよ」
清水は即答した。何処か強気なその姿勢はむしろ恐怖に対する挑戦状のようにも見えた。
「そうかい」岩渕は淡々といった。「じゃあ、キミの身体に巻き付いているそれは何だい?」
巻き付いているそれーークモの糸のようなネバっこい何か。清水はネバつくそれを悪態をつきながら何とか引き剥がそうとしたが、逆に手のひらが衣服にくっついてしまい、またもや身体が不自由になった。
「そんなことしたって取れないよ。それより、キミは何だってこんなところに?」
清水はネバつく不快な糸を剥がそうとしながら、森永、鮫島と共に肝試しに来たのだと説明した。
「肝試し、か。こんなところでねぇ」
「うん、この学校、ナナフシギがあるからさ」
「ここはキミの通っている学校ではないよ」
岩渕は無機質な笑みを浮かべていった。
【続く】
清水ーーそう、森永、鮫島と共に夜の学校に侵入した祐太朗の同級生だ。とはいえ、今は身体にクモの糸のようなネバついた何かが全身に絡まっているせいで無惨な姿になってはいたが。
「どうしてここにいるんだい?」
朗らかな口調で岩渕は訊ねた。だが、目は一切笑っていなかった。まるでこの少年にはまったくといっていい程に興味がないといわんばかりだった。清水もまだ何があったのか状況を把握しかねているようだった。
「あれ、おれ......」
清水はキョロキョロとした。だが、そこにあるのは保健室の残骸ともいえるような別の姿をした一室でしかなかった。
「何があったんだい?」
優しい口調で岩渕がいうと、清水は霞んだような声で吐き出した。
「おじさんは何でここにいんの?」
「わたしはキミと同じくらいの年の少年を探しているんだ。名前は鈴木祐太朗」
「鈴木、祐太朗......」ボーッとしながら清水はその名前を口にした。「アイツ、来たんだ」
「友達かい?」
清水は静かに首を横に振った。
「いや......。あんなヤツ、友達じゃないよ。オジサンは何でアイツを探してるの?」
岩渕は祐太朗が担任である石川先生が夜の学校の中で消えた話を聴いたといった。そして、自分が祐太朗の両親のもとで働いている立場だということを説明した。
「そうなんだ......。でも、アイツにはあんま関わるの止めたほうがいいと思うよ。アイツ、何かわかんないけど、幽霊が見えるとかパチこいてるしさ。何か、気持ち悪い」
「へぇ、そうなんですか」興味もなさそうに岩渕はいった。「でも、もし祐太朗くんが本当にお化けが見えたならどうする?」
「お化けなんかいるわけねえよ」
清水は即答した。何処か強気なその姿勢はむしろ恐怖に対する挑戦状のようにも見えた。
「そうかい」岩渕は淡々といった。「じゃあ、キミの身体に巻き付いているそれは何だい?」
巻き付いているそれーークモの糸のようなネバっこい何か。清水はネバつくそれを悪態をつきながら何とか引き剥がそうとしたが、逆に手のひらが衣服にくっついてしまい、またもや身体が不自由になった。
「そんなことしたって取れないよ。それより、キミは何だってこんなところに?」
清水はネバつく不快な糸を剥がそうとしながら、森永、鮫島と共に肝試しに来たのだと説明した。
「肝試し、か。こんなところでねぇ」
「うん、この学校、ナナフシギがあるからさ」
「ここはキミの通っている学校ではないよ」
岩渕は無機質な笑みを浮かべていった。
【続く】