【闇を照らすライトの中で】
文字数 2,162文字
本音をいえば、人前に立つのが苦手だ。
まぁ、その点に関していえば、体育祭応援団長の話をした時点でおわかりかと思うのだけど、おれは本当に人前に立つのが苦手なのだ。
とはいえ、自分の経歴を知っている人からすれば、ウソをつくなといわれることも多い。
それは、おれが元ロックヴォーカルで、今では役者として舞台で芝居をしているからだ。
まぁ、ロックヴォーカルに役者だなんて、もう人前に出たら無双できるような人間を想像されると思うのだけど、そんなのは大間違いだ。
マジな話、今でも舞台袖とかに立つと吐きそうになったりしているし、酷い時は「出たくない」とか「帰りたい」とかいったりする始末なのだ。まぁ、弱音を吐くことに関しては、舞台上にネガティブな感情を持ち込みたくないという理由から、そういうものは袖に全部吐き捨てるのが一番と思ってそうしているのだけど。
ただ、ここ最近は例のアレが猛威を奮っているせいもあって、舞台に立つこともなく、また芝居をしたいと思う反面、どうも気が進まないというのもある。
そもそも、今は人の舞台を観に行くことすら気が進まないのだ。当然、自分の知り合いたちの中には、普通に舞台で芝居をしている人もいるのだけど、劇場でクラスターが発生して舞台演劇というものへの風当たりが強い現状においては、密閉された空間にたくさんの観客の中で芝居を観るということに、正直抵抗がある。
本当は人の舞台を観に行きたいし、劇場や主催者側で何かしらの配慮はしているとは思うのだけど、どうにも勇気がでない。
できることなら、こんな心配をせずにまた舞台演劇というものを楽しめる日が早く戻って来て欲しいものだ。
とまぁ、そこで今日はちょっとおれの初舞台の話をしたいと思う。といっても、波も何ないし、オチのないしょーもない話なんだけどな。
それと、多分、今回も長くなるんで、何回かに分けて書いていこうかと思う。
ちなみに、フェイクは入れるよ。とはいえ、ベースにあるものは実話なんで、実話ベースのフィクションみたいな感覚で読んでもらえるとありがたい。おれ個人としてはいいんだけど、身バレがイヤって人もいるだろうからね。
あと、出てくる都市の名前は仮に「五村市」とでもしておこうか。祐太朗も弓永も詩織も美沙も出てのないけどね。ひとりを例外として、な。というわけでーー
あれは大学卒業して数年が経ったある日のことだった。
おれは五村市中央公民館に足を踏み入れた。それは、とある劇団を見学するためだった。
何故、劇団の見学にきたかーーシンプルに演じることに興味があったからだ。
おれは、それこそ大学時代はロックヴォーカルとして、人前で荒ぶっていたのだけど、一時期バンドをやることに疲れ、それこそ以前も話したように自室でひたすらに映画を観まくっていた時期があったのだ。
ただ、そうやってたくさんの映画を観て、たくさんの役者を見ていると、自分も芝居をやってみたいと思うようになるもんで。
そんなこんなで、ひとり下宿先で、後々五村市に戻った時を想定して、五村市近辺で劇団はないか調べてみたのだ。するとーー
結構あったのだ。
これは意外も意外。正直、五村市なんて治安が悪いだけで、文化の「ぶ」の字もないようなソドムとゴモラみたいな街だと思っていたからだ。そう、まさに外夢と五村やね。
だが、実際は自分が知らないだけで、案外そういったコミュニティはどの街にも存在するものなのだ。自分が住んでいる街にどんなコミュニティがあるか、暇だったら調べてみるのもいいと思う。結構、文化的なコミュニティが存在して驚くかもしれないよ。
そんな感じで、おれは下宿先のある遠い遠い治安の悪い街から、故郷の五村の文化的な活動に思いをはぜていたのだ。
で、大学を卒業したおれは五村に戻ることとなった。だが、紆余曲折あってすぐにはそういった体験に身を投じることはできなかった。
数年後、漸くチャンスが巡ってきた。
おれは、五村のとある劇団のホームページのメールフォームから、見学したいと送信してみた。一日経って、返信があり、直近の土曜日に見学することとなったのだ。
土曜日、おれは五村市中央公民館へ足を踏み入れ、指定された部屋へと向かう。
部屋の前には、辺りをキョロキョロしている女性がいた。おれはその女性に近寄りーー
「もしかして、『ブラスト』の吉田さんですか?」
おれに声を掛けられた女性は一瞬戸惑いの表情を見せつつ、「はい」と答えた。それから自分の名前をいうと、吉田さんは、
「あっ、はい。お待ちしてました。こちらへどーぞ」
吉田さんに誘われて稽古場である会議室に入ると、いくつもの目がおれのほうへ向いた。
「おぉ! 若いな!」
そんな声がいくつも聞こえてきた。確かにこの時は若かった。まぁ、若いけど、今の自分と比べたらハナクソレベルなんだけどな。
とまぁ、そんな感じで初めての稽古場に入ったところで今日は終わり。続きはまた次回やね。
さてさて、体育祭応援団長篇に続いて、ゆったりと書いていきますか。
んじゃ、アスタラビスタ。
まぁ、その点に関していえば、体育祭応援団長の話をした時点でおわかりかと思うのだけど、おれは本当に人前に立つのが苦手なのだ。
とはいえ、自分の経歴を知っている人からすれば、ウソをつくなといわれることも多い。
それは、おれが元ロックヴォーカルで、今では役者として舞台で芝居をしているからだ。
まぁ、ロックヴォーカルに役者だなんて、もう人前に出たら無双できるような人間を想像されると思うのだけど、そんなのは大間違いだ。
マジな話、今でも舞台袖とかに立つと吐きそうになったりしているし、酷い時は「出たくない」とか「帰りたい」とかいったりする始末なのだ。まぁ、弱音を吐くことに関しては、舞台上にネガティブな感情を持ち込みたくないという理由から、そういうものは袖に全部吐き捨てるのが一番と思ってそうしているのだけど。
ただ、ここ最近は例のアレが猛威を奮っているせいもあって、舞台に立つこともなく、また芝居をしたいと思う反面、どうも気が進まないというのもある。
そもそも、今は人の舞台を観に行くことすら気が進まないのだ。当然、自分の知り合いたちの中には、普通に舞台で芝居をしている人もいるのだけど、劇場でクラスターが発生して舞台演劇というものへの風当たりが強い現状においては、密閉された空間にたくさんの観客の中で芝居を観るということに、正直抵抗がある。
本当は人の舞台を観に行きたいし、劇場や主催者側で何かしらの配慮はしているとは思うのだけど、どうにも勇気がでない。
できることなら、こんな心配をせずにまた舞台演劇というものを楽しめる日が早く戻って来て欲しいものだ。
とまぁ、そこで今日はちょっとおれの初舞台の話をしたいと思う。といっても、波も何ないし、オチのないしょーもない話なんだけどな。
それと、多分、今回も長くなるんで、何回かに分けて書いていこうかと思う。
ちなみに、フェイクは入れるよ。とはいえ、ベースにあるものは実話なんで、実話ベースのフィクションみたいな感覚で読んでもらえるとありがたい。おれ個人としてはいいんだけど、身バレがイヤって人もいるだろうからね。
あと、出てくる都市の名前は仮に「五村市」とでもしておこうか。祐太朗も弓永も詩織も美沙も出てのないけどね。ひとりを例外として、な。というわけでーー
あれは大学卒業して数年が経ったある日のことだった。
おれは五村市中央公民館に足を踏み入れた。それは、とある劇団を見学するためだった。
何故、劇団の見学にきたかーーシンプルに演じることに興味があったからだ。
おれは、それこそ大学時代はロックヴォーカルとして、人前で荒ぶっていたのだけど、一時期バンドをやることに疲れ、それこそ以前も話したように自室でひたすらに映画を観まくっていた時期があったのだ。
ただ、そうやってたくさんの映画を観て、たくさんの役者を見ていると、自分も芝居をやってみたいと思うようになるもんで。
そんなこんなで、ひとり下宿先で、後々五村市に戻った時を想定して、五村市近辺で劇団はないか調べてみたのだ。するとーー
結構あったのだ。
これは意外も意外。正直、五村市なんて治安が悪いだけで、文化の「ぶ」の字もないようなソドムとゴモラみたいな街だと思っていたからだ。そう、まさに外夢と五村やね。
だが、実際は自分が知らないだけで、案外そういったコミュニティはどの街にも存在するものなのだ。自分が住んでいる街にどんなコミュニティがあるか、暇だったら調べてみるのもいいと思う。結構、文化的なコミュニティが存在して驚くかもしれないよ。
そんな感じで、おれは下宿先のある遠い遠い治安の悪い街から、故郷の五村の文化的な活動に思いをはぜていたのだ。
で、大学を卒業したおれは五村に戻ることとなった。だが、紆余曲折あってすぐにはそういった体験に身を投じることはできなかった。
数年後、漸くチャンスが巡ってきた。
おれは、五村のとある劇団のホームページのメールフォームから、見学したいと送信してみた。一日経って、返信があり、直近の土曜日に見学することとなったのだ。
土曜日、おれは五村市中央公民館へ足を踏み入れ、指定された部屋へと向かう。
部屋の前には、辺りをキョロキョロしている女性がいた。おれはその女性に近寄りーー
「もしかして、『ブラスト』の吉田さんですか?」
おれに声を掛けられた女性は一瞬戸惑いの表情を見せつつ、「はい」と答えた。それから自分の名前をいうと、吉田さんは、
「あっ、はい。お待ちしてました。こちらへどーぞ」
吉田さんに誘われて稽古場である会議室に入ると、いくつもの目がおれのほうへ向いた。
「おぉ! 若いな!」
そんな声がいくつも聞こえてきた。確かにこの時は若かった。まぁ、若いけど、今の自分と比べたらハナクソレベルなんだけどな。
とまぁ、そんな感じで初めての稽古場に入ったところで今日は終わり。続きはまた次回やね。
さてさて、体育祭応援団長篇に続いて、ゆったりと書いていきますか。
んじゃ、アスタラビスタ。