【帝王霊~睦拾玖~】
文字数 1,103文字
オカルトやスピリチュアルほど信用に足らないモノはない。
この世の物事はほぼほぼ科学で証明が出来てしまう。少なくともあたしはそう思っていた。スピリチュアルなんて迷信もいいところだと思うし、そういったモノで弱った人間から甘い汁を搾り取ろうとする卑劣な詐欺師どもがたくさんいることも知っていた。
確かに信じ込んだ結果本人が救われたのならば、それは詐欺ではなくなるのかもしれない。だが、それが第三者から見て搾取と欺瞞に満ちていれば、それは詐欺であるに違いはないだろう。宗教やスピリチュアルの手法はある種ねずみ講的だ。下の者に勧誘させ人を増やし、お布施と称して様々な形で金を巻き上げる。上に立つ者は満たされるが、下の者は信仰し続けて無意識の内にあらゆるモノを失い続ける。
卑劣ーーことばに出来ないほどの卑劣。あたしはスピリチュアルやオカルトといった超常現象の類いが大嫌いだ。
だが、ここ最近になってあたしのオカルト嫌いは徐々に薄れて来ていた。あまりにも可笑しなことが多すぎた。
鈴木詩織ーー幽霊が見えると称するこの女がウソをいっているとは思えなかった。それにそういったモノとは無縁であろう弓永くんや佐野めぐみですらその類いの話をするのだから、あたしのアンチオカルト的な考えも改められざるを得なかった。
このビルに霊がたくさんいるーー詩織は確かにそういった。
信じられるワケがないーー昔のあたしならばそう思ったはずだ。だが、今のあたしは違った。詩織がいうのであればそうなのだろう。素直に信じざるを得なかった。
確かにこのビル内はやけに冷える。この時期、寒いのは当たり前といえば当たり前だろうが、そんな季節的な寒さとはまた違う悪寒がそこにはあった。体調を崩したか。いや、さっきまで普通に調子の良かった身体が唐突に体調不良になるとは考えられなかった。
やはり、ここには幽霊がいるのだろう。そして、霊障といわれる見えないエフェクトがあたしの身体に作用して、気分を悪くさせている。そうに違いなかった。
「たくさんってどれくらい?」あたしは恐る恐る訊ねた。
「んー、そうだなぁ」詩織は考えを巡らしていった。「結構たくさん。普通の会社の廊下を歩く社員さんが行き来しているような、それくらいじゃないかな。出たと思ったら別の部屋に入って行ったり、廊下の奥の通りに消えて行ったり、結構忙しそうに行き来してる感じかな」
となると、不特定多数の霊が今ここでひしめいていることになる。あたしは驚きを隠せなかった。
「でも、どうして......」
あたしはひとりごと気味にいった。と、詩織はこういったーー
「このビル、霊道になってるみたい」
【続く】
この世の物事はほぼほぼ科学で証明が出来てしまう。少なくともあたしはそう思っていた。スピリチュアルなんて迷信もいいところだと思うし、そういったモノで弱った人間から甘い汁を搾り取ろうとする卑劣な詐欺師どもがたくさんいることも知っていた。
確かに信じ込んだ結果本人が救われたのならば、それは詐欺ではなくなるのかもしれない。だが、それが第三者から見て搾取と欺瞞に満ちていれば、それは詐欺であるに違いはないだろう。宗教やスピリチュアルの手法はある種ねずみ講的だ。下の者に勧誘させ人を増やし、お布施と称して様々な形で金を巻き上げる。上に立つ者は満たされるが、下の者は信仰し続けて無意識の内にあらゆるモノを失い続ける。
卑劣ーーことばに出来ないほどの卑劣。あたしはスピリチュアルやオカルトといった超常現象の類いが大嫌いだ。
だが、ここ最近になってあたしのオカルト嫌いは徐々に薄れて来ていた。あまりにも可笑しなことが多すぎた。
鈴木詩織ーー幽霊が見えると称するこの女がウソをいっているとは思えなかった。それにそういったモノとは無縁であろう弓永くんや佐野めぐみですらその類いの話をするのだから、あたしのアンチオカルト的な考えも改められざるを得なかった。
このビルに霊がたくさんいるーー詩織は確かにそういった。
信じられるワケがないーー昔のあたしならばそう思ったはずだ。だが、今のあたしは違った。詩織がいうのであればそうなのだろう。素直に信じざるを得なかった。
確かにこのビル内はやけに冷える。この時期、寒いのは当たり前といえば当たり前だろうが、そんな季節的な寒さとはまた違う悪寒がそこにはあった。体調を崩したか。いや、さっきまで普通に調子の良かった身体が唐突に体調不良になるとは考えられなかった。
やはり、ここには幽霊がいるのだろう。そして、霊障といわれる見えないエフェクトがあたしの身体に作用して、気分を悪くさせている。そうに違いなかった。
「たくさんってどれくらい?」あたしは恐る恐る訊ねた。
「んー、そうだなぁ」詩織は考えを巡らしていった。「結構たくさん。普通の会社の廊下を歩く社員さんが行き来しているような、それくらいじゃないかな。出たと思ったら別の部屋に入って行ったり、廊下の奥の通りに消えて行ったり、結構忙しそうに行き来してる感じかな」
となると、不特定多数の霊が今ここでひしめいていることになる。あたしは驚きを隠せなかった。
「でも、どうして......」
あたしはひとりごと気味にいった。と、詩織はこういったーー
「このビル、霊道になってるみたい」
【続く】