【一年三組の皇帝~睦拾参~】
文字数 738文字
引き延ばしに継ぐ引き延ばし。
ぼくはまたもや決意を引き延ばした。辻の涙に動揺したからーーそういえば、自分の揺らぎを正当化出来るようにでも思っているのだろうか。そんなことは断じてない。
ぼくは、ただ決意した自分に酔っていただけだ。本当はやりたくなんかないのに、雄叫びを上げて自分を鼓舞して自分は戦うぞと決意表明して、そんな自分に酔ってやりたくない、怖いというネガティブな感情から目を叛けていただけに過ぎなかった。
しかし、時間はもう待ってくれない。何故なら、時間はいつだって限りがあって、鮮度がある。一度名目上は勝ちに勝って勢いに乗っている自分もクラスの中での賞味期限はそう長くはない。人間、活躍し続けなければ腐っていく一方だ。つまり、ぼくが関口に相手にされる時間もそう長くはない。そして、クラスの注目を集められる時間もーー
そんなことを考えていたら、部活に何か集中出来なかった。といっても、ぼくがやるのは一年生の強化トレーニング、またの名を筋トレというヤツで、芝居がどうとかは全然やらない。そんな中、一年生で唯一キャストとして稽古に立っているのが長野いずみだった。
いずみの表情は鋭く緊張感に満ちていた。相も変わらず演技というヤツに見いられたような芝居をする。
休憩時間、いずみはぼくを呼び出した。
「何?」
「お前、全然集中してねぇじゃん」バレバレだった。「......てか最近元気ないよな。何があったんだよ。ま、あたしには関係ないけどさ」
「元気、ねぇ......」
そりゃ元気なんか出るはずがない。ぼくはまたもや自分自身に敗北してしまったのだった。ぼくは何とかことばを紡ごうとした。が、その前にいずみはいったーー
「まぁ、いいや。終わったらちょっと付き合えよ」
【続く】
ぼくはまたもや決意を引き延ばした。辻の涙に動揺したからーーそういえば、自分の揺らぎを正当化出来るようにでも思っているのだろうか。そんなことは断じてない。
ぼくは、ただ決意した自分に酔っていただけだ。本当はやりたくなんかないのに、雄叫びを上げて自分を鼓舞して自分は戦うぞと決意表明して、そんな自分に酔ってやりたくない、怖いというネガティブな感情から目を叛けていただけに過ぎなかった。
しかし、時間はもう待ってくれない。何故なら、時間はいつだって限りがあって、鮮度がある。一度名目上は勝ちに勝って勢いに乗っている自分もクラスの中での賞味期限はそう長くはない。人間、活躍し続けなければ腐っていく一方だ。つまり、ぼくが関口に相手にされる時間もそう長くはない。そして、クラスの注目を集められる時間もーー
そんなことを考えていたら、部活に何か集中出来なかった。といっても、ぼくがやるのは一年生の強化トレーニング、またの名を筋トレというヤツで、芝居がどうとかは全然やらない。そんな中、一年生で唯一キャストとして稽古に立っているのが長野いずみだった。
いずみの表情は鋭く緊張感に満ちていた。相も変わらず演技というヤツに見いられたような芝居をする。
休憩時間、いずみはぼくを呼び出した。
「何?」
「お前、全然集中してねぇじゃん」バレバレだった。「......てか最近元気ないよな。何があったんだよ。ま、あたしには関係ないけどさ」
「元気、ねぇ......」
そりゃ元気なんか出るはずがない。ぼくはまたもや自分自身に敗北してしまったのだった。ぼくは何とかことばを紡ごうとした。が、その前にいずみはいったーー
「まぁ、いいや。終わったらちょっと付き合えよ」
【続く】