【孤高の男は、かつての優男】
文字数 2,628文字
印象的な名前がある。
まぁ、普通に生きていたら印象的な名前にひとつは出会うと思うのだが、それは基本的に特殊で少数な苗字や、まったく読めないキラキラネームだとかそんな感じだろう。
昨日も話したが、おれにとって印象的な名前のひとつに『五条竜也』があり、回り回って今ではその名前がペンネームとなっている。
ちなみに作者であるテリーには、その名前を使うことを了承してもらっているので無断使用ではないです。
まぁ、五条氏のペンネームもそうなんだけど、おれにとっては、まだ印象的だった名前がいくつか存在する。
ということで、始めていこう。あらすじーー「あの男は倒した。死闘が終わった後、神敬介は奇怪な人形を手掛かりに、GoD機関のアジトへと潜入した。アジトにてGoDの刺客を撃退する神敬介。が、傷を負い、アジト内に身を隠していたると、そこには死んだはずのアポロガイストの姿があったーー」
何か、もう神敬介あらすじシリーズみたいな感じになっているワケですが、本当のあらすじといえば、劇団員の書くオリジナルシナリオに、五条氏は感嘆したのだ、といったところだろうかね。二〇点。
そんなことはどうでもいいんで、さっさと続きいっちゃいますかーー
上演台本の候補が出揃い『ブラスト』のメーリングリストに、上演台本の決めるためのアンケートが流れた。アンケートは、これまでに読んだ台本の名前があり、その中から二本を選んで送信するというものだった。
おれは、初めて読んだ台本と、立野さんが書いた無国籍風戦国アクション台本に投票した。
あおいの台本に投票しようかとも思ったのだが、投票前最後の稽古のアフターに向かう時、あおいにこういわれたのだ。
「わたし、自分の台本のエントリーを辞退しようと思う」
理由は、みんなに読んでもらっただけで満足してしまったことと、自分が演出をやることに自信を持てなかったからだという。
おれはそれに対して、
「それもいいと思うよ」
とだけ、答えた。
そんなこともあって、あおいの台本には投票しなかった。テリーも、まだ書き掛けだからという理由で台本のエントリーを取り消した。まぁ、翌年にその本を使っていい芝居が打てたんだから、結果オーライではあるが。
自分がやりたいと思える台本に投票し、どんな結果になるだろうと胸を踊らせて次の稽古の日を待った、待ったーー待ち続けた。
そして、稽古の日がやって来た。準備運動と発声を終えると、投票結果の開票が行われた。結果はーー立野さんの無国籍風戦国アクション台本がトップとなった。がーー、
「ちょっといいですか」ヨシエさんが口を開く。「実は……、台本を書いたんです」
ヨシエさんがいうには、今年は台本を書くつもりはなかったが、新しいメンツが増え、しかも今回はゲストが来るということもあって、唐突にシナリオが思い浮かんだというのだ。
が、これにはあまりいい顔をしない人も多かった。特に正さん。正さんは、自分の台本をやるつもりでいて、そのためなら演出と出演の両方をやると宣言していたほど熱を入れていた。
そんな中、旦那であるショージさんが、一度だけでいいから読んで欲しいと懇願し、劇団員たちもヨシエさんのこれまでの功績も考慮して、とりあえず、読んでみようということになったのだ。
おれは、正直イヤな気はしなかった。というのも、この時は兎に角たくさんの台本に触れてみたいという好奇心が強かったからだ。
ヨシエさんがホワイトボードに役と、それを演じる役者を書き連ねていく。
自分の名前が書き込まれた。おれが演じる役の名前、それはーー
『山田和雅』
おれのシナリオを読んでいる人なら、この名前にはすぐにピンとくるだろう。
そう。外夢のコヨーテであり、舞台役者であり、外山慎平の友人である孤高の男、山田和雅である。この平凡な名前を持つ孤高の男の名前の由来は、ヨシエさんが書いたシナリオに登場する人物の名前だったのだ。
何故、その名前が印象的だったか。それはわからない。だが、表紙に書かれた人物紹介が、おれの目を釘付けにしたのだ。そこにはーー
「難病で入院している青年」
と書いてあったのだ。またとんでもない設定である。少なくとも、まともに芝居をしたことのないド素人がやるような役ではなかった。
が、おれはその設定に強く感じるものがあった。その理由はーー後々話すわ。
台本が行き渡ると、ヨシエさんが音頭を取って、台本読みが開始された。
シナリオとしてはふたつの話が平行して進む構成になっていた。その概要は次の通りだーー
まずはサイドAーー
平凡な会社員である山田一樹のもとに、ある日死神がやってくる。死神は一樹に「お前はもうすぐ死ぬ」と告げるが、一樹はどうでもいいやといった感じ。そんな一樹に呆れた死神は、最期の時がくるまでに、一樹の命を輝かせようと決意するのだった。
次にサイドBーー
平凡な女性である大塚千尋はある日、朝起きると死んでいた。が、冥界の手違いによって、死んでいながらも肉体と精神だけは生き続けるだけの存在となってしまった。千尋には、翔太という彼氏がいたのだが、千尋は翔太に悲しい思いをさせたくないと、彼を振るが……。
とこんな感じ。キャストとしては、一樹がユーキさん、死神がショージさん、千尋があおい、翔太が大原さんといった感じだった。
ちなみに、和雅は一樹の従兄弟という設定。
和雅は、病人ということもあって出番は少なめだが、設定が設定ということもあって、印象に残りやすい役だった。
おれは、シナリオを読み進めるにつれ、和雅という役にのめり込んでいった。
この役をやってみたいーーそう思った。
台本を読み終え、感想の時間となった。が、意見はパックリ割れた。まぁ、イレギュラーな登場の仕方もあって、あまり印象がよくなかったのもあったのだろう。褒めてはいても渋い顔をする人も少なくなかった。
が、中にはこころからシナリオを褒める人もいて、何かと波乱が巻き起こりそうな気配が漂っていたのだったーー
とまぁ、今日はここまで。次回は、ちょっとした小休止かな。続きを書かないワケじゃなくて、この話の小休止を書こうかな、と。
んじゃ、アスタラビスタ!
まぁ、普通に生きていたら印象的な名前にひとつは出会うと思うのだが、それは基本的に特殊で少数な苗字や、まったく読めないキラキラネームだとかそんな感じだろう。
昨日も話したが、おれにとって印象的な名前のひとつに『五条竜也』があり、回り回って今ではその名前がペンネームとなっている。
ちなみに作者であるテリーには、その名前を使うことを了承してもらっているので無断使用ではないです。
まぁ、五条氏のペンネームもそうなんだけど、おれにとっては、まだ印象的だった名前がいくつか存在する。
ということで、始めていこう。あらすじーー「あの男は倒した。死闘が終わった後、神敬介は奇怪な人形を手掛かりに、GoD機関のアジトへと潜入した。アジトにてGoDの刺客を撃退する神敬介。が、傷を負い、アジト内に身を隠していたると、そこには死んだはずのアポロガイストの姿があったーー」
何か、もう神敬介あらすじシリーズみたいな感じになっているワケですが、本当のあらすじといえば、劇団員の書くオリジナルシナリオに、五条氏は感嘆したのだ、といったところだろうかね。二〇点。
そんなことはどうでもいいんで、さっさと続きいっちゃいますかーー
上演台本の候補が出揃い『ブラスト』のメーリングリストに、上演台本の決めるためのアンケートが流れた。アンケートは、これまでに読んだ台本の名前があり、その中から二本を選んで送信するというものだった。
おれは、初めて読んだ台本と、立野さんが書いた無国籍風戦国アクション台本に投票した。
あおいの台本に投票しようかとも思ったのだが、投票前最後の稽古のアフターに向かう時、あおいにこういわれたのだ。
「わたし、自分の台本のエントリーを辞退しようと思う」
理由は、みんなに読んでもらっただけで満足してしまったことと、自分が演出をやることに自信を持てなかったからだという。
おれはそれに対して、
「それもいいと思うよ」
とだけ、答えた。
そんなこともあって、あおいの台本には投票しなかった。テリーも、まだ書き掛けだからという理由で台本のエントリーを取り消した。まぁ、翌年にその本を使っていい芝居が打てたんだから、結果オーライではあるが。
自分がやりたいと思える台本に投票し、どんな結果になるだろうと胸を踊らせて次の稽古の日を待った、待ったーー待ち続けた。
そして、稽古の日がやって来た。準備運動と発声を終えると、投票結果の開票が行われた。結果はーー立野さんの無国籍風戦国アクション台本がトップとなった。がーー、
「ちょっといいですか」ヨシエさんが口を開く。「実は……、台本を書いたんです」
ヨシエさんがいうには、今年は台本を書くつもりはなかったが、新しいメンツが増え、しかも今回はゲストが来るということもあって、唐突にシナリオが思い浮かんだというのだ。
が、これにはあまりいい顔をしない人も多かった。特に正さん。正さんは、自分の台本をやるつもりでいて、そのためなら演出と出演の両方をやると宣言していたほど熱を入れていた。
そんな中、旦那であるショージさんが、一度だけでいいから読んで欲しいと懇願し、劇団員たちもヨシエさんのこれまでの功績も考慮して、とりあえず、読んでみようということになったのだ。
おれは、正直イヤな気はしなかった。というのも、この時は兎に角たくさんの台本に触れてみたいという好奇心が強かったからだ。
ヨシエさんがホワイトボードに役と、それを演じる役者を書き連ねていく。
自分の名前が書き込まれた。おれが演じる役の名前、それはーー
『山田和雅』
おれのシナリオを読んでいる人なら、この名前にはすぐにピンとくるだろう。
そう。外夢のコヨーテであり、舞台役者であり、外山慎平の友人である孤高の男、山田和雅である。この平凡な名前を持つ孤高の男の名前の由来は、ヨシエさんが書いたシナリオに登場する人物の名前だったのだ。
何故、その名前が印象的だったか。それはわからない。だが、表紙に書かれた人物紹介が、おれの目を釘付けにしたのだ。そこにはーー
「難病で入院している青年」
と書いてあったのだ。またとんでもない設定である。少なくとも、まともに芝居をしたことのないド素人がやるような役ではなかった。
が、おれはその設定に強く感じるものがあった。その理由はーー後々話すわ。
台本が行き渡ると、ヨシエさんが音頭を取って、台本読みが開始された。
シナリオとしてはふたつの話が平行して進む構成になっていた。その概要は次の通りだーー
まずはサイドAーー
平凡な会社員である山田一樹のもとに、ある日死神がやってくる。死神は一樹に「お前はもうすぐ死ぬ」と告げるが、一樹はどうでもいいやといった感じ。そんな一樹に呆れた死神は、最期の時がくるまでに、一樹の命を輝かせようと決意するのだった。
次にサイドBーー
平凡な女性である大塚千尋はある日、朝起きると死んでいた。が、冥界の手違いによって、死んでいながらも肉体と精神だけは生き続けるだけの存在となってしまった。千尋には、翔太という彼氏がいたのだが、千尋は翔太に悲しい思いをさせたくないと、彼を振るが……。
とこんな感じ。キャストとしては、一樹がユーキさん、死神がショージさん、千尋があおい、翔太が大原さんといった感じだった。
ちなみに、和雅は一樹の従兄弟という設定。
和雅は、病人ということもあって出番は少なめだが、設定が設定ということもあって、印象に残りやすい役だった。
おれは、シナリオを読み進めるにつれ、和雅という役にのめり込んでいった。
この役をやってみたいーーそう思った。
台本を読み終え、感想の時間となった。が、意見はパックリ割れた。まぁ、イレギュラーな登場の仕方もあって、あまり印象がよくなかったのもあったのだろう。褒めてはいても渋い顔をする人も少なくなかった。
が、中にはこころからシナリオを褒める人もいて、何かと波乱が巻き起こりそうな気配が漂っていたのだったーー
とまぁ、今日はここまで。次回は、ちょっとした小休止かな。続きを書かないワケじゃなくて、この話の小休止を書こうかな、と。
んじゃ、アスタラビスタ!