【江戸の暗闘者】
文字数 2,427文字
一般化したモノはネタにされがちだ。
仮にそこにアナーキーさがあったとしても、ある種で「定番化」してしまえば、それは一気に市民権を得、ネタにされてしまいがちだ。
まぁ、それが一概に悪いことだとは思わない。革命は長期に渡っては起こらない。長期化すれば誰にでもわかりやすい、親しみ易いモノに変化していかなければ生き残れない。それが、あらゆるモノの宿命だと思う。
さて、いきなり何をいいだすのかって話なんだけど、取り敢えずいいたいのはーー
『必殺仕置人』の再放送が始まったということだ。
まぁ、全国放送でなくてローカル放送なんで一部地域の人しか観れないワケで、宣伝にも何にもなっていないのは承知の上だけど、そう、『必殺仕置人』の再放送が始まったのだ。
この『必殺仕置人』、初めて観たのは三年前のちょうどこの時期だったと思う。それも同じローカル局の同じ枠で再放送されたモノだった。
この枠について説明すると、甲子園期間を除くウィークデーに毎日、必殺シリーズの再放送をやっており、ひとつが完結すると次の作品へを繰り返し、平成初期に放送された『激突』が終了すると、また一作目の『仕掛人』に戻るというのを何年も繰り返しているのだ。
おれがその枠で必殺を観始めて三年。ようやくひと回りし、先日、シリーズ一作目の『仕掛人』の再放送が終了したワケだ。
そして、『仕置人』の再放送がつい先日から始まったのだけど、やっぱりスゴイ。三年前に一度観て、その後もDVDを買って何度も見返しているのだけど、何度観てもやはりすごい作品だと思う。
というワケで、今日はそんな『必殺仕置人』の話をしていきたいと思う。
そもそも、必殺といえば、一般的にいえば『仕事人』がメジャー中のメジャー。下手したら、必殺のシリーズ=仕事人と誤解している人だっているかとしれない。
それに、必殺と聴いて、「テレレ~♪ズブシュッ!」という音楽とSE、プラス正義の味方が悪を討つみたいなイメージを思い浮かべる人も多いんじゃないかと思う。
だが、それはどちらかというと、後期必殺の『仕事人シリーズ』にありがちな展開であって、『仕置人』ではあまりそういったイメージはないというのが正直なところである。
では、『仕置人』は何なのか。
それは、ハードボイルドで、悪党が悪党を仕置きするピカレスク的な話だ。
結構、仕事人って正義の味方なんでしょ、的な話を聴くことがあるのだけど、実はこれはウソ。少なくとも仕置人の時はかなりえげつない。もちろん、悪党を殺して晴らせぬ恨みを晴らしはする。だが、それ以上にーー
悪党を社会的に制裁、抹殺するという方法が印象的だったりする。
まぁ、これも仕置人の初期だけとはいえ、元々のコンセプトはこんな感じでもあったのだ。
その例を挙げると、代官を心中の片割れに見せ掛けて、町人たちの見せ物にし、石を投げさせる。米を独占した問屋には、腰の骨を外して、三日間飲まず食わずにし、独り占めした米を世に撒いて人殺しを認めるまでメシを与えない。あるいは、地位のある人物に灸を据えて、お面を被せて公衆の面前で裸踊りさせる等、その方法は中々にハードだ。
他にも、依頼人の目の前で対象を殺すことも普通だった。まぁ、それもある事件が切っ掛けでなくなるのだけど。
その事件というのも、ただ、この『仕置人』の放送時間前後に殺人が起きて、それを番組のせいだとあやをつけられたというもので、本編とはまったく関係ないのだけどね。
とはいえ、当時の『仕置人』はそんな風にいわれる程にハードで刺激的ではあったワケだ。
まぁ、大体こういう事件で問題になった後というのは、大抵そのハードさは身を潜めて微妙な内容になるのが殆んどなのだろうけど、不思議と仕置人はそんなことはなく。
確かに初期の頃の社会的抹殺はなくなったとはいえ、ドラマはハードなままで見応えはちゃんとある。というか、本当にレベルを下げたのか?と思えるくらいにハードさを保っている。
あとはチームの魅力もすごい。
後にシリーズの顔となる中村主水が初登場するのが、この『仕置人』なんだが、この時はまだ主役でもなければ、チームの参謀で、下手すれば仕置きに関わらないことがあるという。
プラス、後のシリーズで見れない中村主水の魅力といえば、やはり、ノリノリで悪党を斬りまくるイケイケな部分だと思う。
これは『暗闇仕留人』もそうだけど、それより後のシリーズでは、主水の心にある種のトラウマめいたモノが芽生えてしまい、裏稼業というものに対してドライに振る舞うようになることもあって、イケイケの主水を観れるというのはある種、貴重だと思えるワケだ。
さて、主水だけじゃない。念仏の鉄、棺桶の錠、鉄砲玉のおきん、おひろめの半次、全員が全員個性的で、その個性がチームの中で爆発しており、シナリオを面白くする推進力として機能している。
家庭と職務に縛られている無能ーーな振りをしているーー役人の主水に対し、自由奔放で何事にも縛られず享楽的な生き方をする鉄、若さ故か無鉄砲な程に感情的で曲がったことが嫌いな錠、と殺しの実行部隊だけを見ても三者三様、全然違うパーソナリティとスタンスであるが故に、互いにぶつかりながらも、仕置きをしていく様は最高にドラマチックだ。
あと、半次がメインになる回はいい。詳細には話さないけど、思わず同情してしまうというか。あと、ひとついえるのは、おきんが最高。兎に角、最高。何が最高かって?ーーあの姉御肌な演技なんだけど、それは自分の目で観て確認して欲しいと思うくらいに最高なのだ。
とまぁ、あんまり話をしようとすると長くなり過ぎるんでここら辺で。まぁ、また緊急事態宣言が延びたんで、自粛でやることねぇよって人は、サブスクででも『必殺仕置人』を観てみるといいかもよ。普通に面白いしな。
イキるなイキるな。男三〇過ぎて格好つけようなんざ、落ち目の証拠だぜ。
アスタラ。
仮にそこにアナーキーさがあったとしても、ある種で「定番化」してしまえば、それは一気に市民権を得、ネタにされてしまいがちだ。
まぁ、それが一概に悪いことだとは思わない。革命は長期に渡っては起こらない。長期化すれば誰にでもわかりやすい、親しみ易いモノに変化していかなければ生き残れない。それが、あらゆるモノの宿命だと思う。
さて、いきなり何をいいだすのかって話なんだけど、取り敢えずいいたいのはーー
『必殺仕置人』の再放送が始まったということだ。
まぁ、全国放送でなくてローカル放送なんで一部地域の人しか観れないワケで、宣伝にも何にもなっていないのは承知の上だけど、そう、『必殺仕置人』の再放送が始まったのだ。
この『必殺仕置人』、初めて観たのは三年前のちょうどこの時期だったと思う。それも同じローカル局の同じ枠で再放送されたモノだった。
この枠について説明すると、甲子園期間を除くウィークデーに毎日、必殺シリーズの再放送をやっており、ひとつが完結すると次の作品へを繰り返し、平成初期に放送された『激突』が終了すると、また一作目の『仕掛人』に戻るというのを何年も繰り返しているのだ。
おれがその枠で必殺を観始めて三年。ようやくひと回りし、先日、シリーズ一作目の『仕掛人』の再放送が終了したワケだ。
そして、『仕置人』の再放送がつい先日から始まったのだけど、やっぱりスゴイ。三年前に一度観て、その後もDVDを買って何度も見返しているのだけど、何度観てもやはりすごい作品だと思う。
というワケで、今日はそんな『必殺仕置人』の話をしていきたいと思う。
そもそも、必殺といえば、一般的にいえば『仕事人』がメジャー中のメジャー。下手したら、必殺のシリーズ=仕事人と誤解している人だっているかとしれない。
それに、必殺と聴いて、「テレレ~♪ズブシュッ!」という音楽とSE、プラス正義の味方が悪を討つみたいなイメージを思い浮かべる人も多いんじゃないかと思う。
だが、それはどちらかというと、後期必殺の『仕事人シリーズ』にありがちな展開であって、『仕置人』ではあまりそういったイメージはないというのが正直なところである。
では、『仕置人』は何なのか。
それは、ハードボイルドで、悪党が悪党を仕置きするピカレスク的な話だ。
結構、仕事人って正義の味方なんでしょ、的な話を聴くことがあるのだけど、実はこれはウソ。少なくとも仕置人の時はかなりえげつない。もちろん、悪党を殺して晴らせぬ恨みを晴らしはする。だが、それ以上にーー
悪党を社会的に制裁、抹殺するという方法が印象的だったりする。
まぁ、これも仕置人の初期だけとはいえ、元々のコンセプトはこんな感じでもあったのだ。
その例を挙げると、代官を心中の片割れに見せ掛けて、町人たちの見せ物にし、石を投げさせる。米を独占した問屋には、腰の骨を外して、三日間飲まず食わずにし、独り占めした米を世に撒いて人殺しを認めるまでメシを与えない。あるいは、地位のある人物に灸を据えて、お面を被せて公衆の面前で裸踊りさせる等、その方法は中々にハードだ。
他にも、依頼人の目の前で対象を殺すことも普通だった。まぁ、それもある事件が切っ掛けでなくなるのだけど。
その事件というのも、ただ、この『仕置人』の放送時間前後に殺人が起きて、それを番組のせいだとあやをつけられたというもので、本編とはまったく関係ないのだけどね。
とはいえ、当時の『仕置人』はそんな風にいわれる程にハードで刺激的ではあったワケだ。
まぁ、大体こういう事件で問題になった後というのは、大抵そのハードさは身を潜めて微妙な内容になるのが殆んどなのだろうけど、不思議と仕置人はそんなことはなく。
確かに初期の頃の社会的抹殺はなくなったとはいえ、ドラマはハードなままで見応えはちゃんとある。というか、本当にレベルを下げたのか?と思えるくらいにハードさを保っている。
あとはチームの魅力もすごい。
後にシリーズの顔となる中村主水が初登場するのが、この『仕置人』なんだが、この時はまだ主役でもなければ、チームの参謀で、下手すれば仕置きに関わらないことがあるという。
プラス、後のシリーズで見れない中村主水の魅力といえば、やはり、ノリノリで悪党を斬りまくるイケイケな部分だと思う。
これは『暗闇仕留人』もそうだけど、それより後のシリーズでは、主水の心にある種のトラウマめいたモノが芽生えてしまい、裏稼業というものに対してドライに振る舞うようになることもあって、イケイケの主水を観れるというのはある種、貴重だと思えるワケだ。
さて、主水だけじゃない。念仏の鉄、棺桶の錠、鉄砲玉のおきん、おひろめの半次、全員が全員個性的で、その個性がチームの中で爆発しており、シナリオを面白くする推進力として機能している。
家庭と職務に縛られている無能ーーな振りをしているーー役人の主水に対し、自由奔放で何事にも縛られず享楽的な生き方をする鉄、若さ故か無鉄砲な程に感情的で曲がったことが嫌いな錠、と殺しの実行部隊だけを見ても三者三様、全然違うパーソナリティとスタンスであるが故に、互いにぶつかりながらも、仕置きをしていく様は最高にドラマチックだ。
あと、半次がメインになる回はいい。詳細には話さないけど、思わず同情してしまうというか。あと、ひとついえるのは、おきんが最高。兎に角、最高。何が最高かって?ーーあの姉御肌な演技なんだけど、それは自分の目で観て確認して欲しいと思うくらいに最高なのだ。
とまぁ、あんまり話をしようとすると長くなり過ぎるんでここら辺で。まぁ、また緊急事態宣言が延びたんで、自粛でやることねぇよって人は、サブスクででも『必殺仕置人』を観てみるといいかもよ。普通に面白いしな。
イキるなイキるな。男三〇過ぎて格好つけようなんざ、落ち目の証拠だぜ。
アスタラ。