【一年三組の皇帝~伍拾壱~】
文字数 969文字
短期間でまた同じ光景を見るとは思わなかった。
ファミレスの奥の席で、ぼくは奥側、となりには山路、対面には辻でそのとなりには海野がいた。正直窮屈だった。精神的にはもちろんだが、デブってる山路がとなりに座っているせいもあって、身体的にも窮屈だった。そろそろ夏だからもあるだろうけど、むちゃくちゃ暑苦しくて仕方なかった。
「それで」辻が口を開いた。「あれはどういうことだ?」
「アレって何だよ」
その答えはわかりきっていたが、ぼくは敢えてとぼけていった。そういうといつか見た光景のように海野と山路はぼくに対して敵意を剥き出しにしてきたが、辻は相も変わらずそれを制して改めて口を開いた。
「あんなにやるかやらないかを迷っていたのに、どうしてやる気になったんだよ」
「そんなの、おれの勝手だろ」
悪態もいいところだった。自分でも苦し紛れなのはわかりきっていた。海野と山路はぼくに飛び掛かるのを必死に我慢しているようだった。辻は落ち着いていた。
「そうだな。確かにテメェのいう通りだよ。でもな、おれだってお前が好きでこうやって関わってるワケじゃねぇんだよ」
「なら関わって来んなよ」
「......まぁ、それもそうだ」辻は怒るどころか少し落ち着いて口を開き直した。「そもそもおれもテメェのことはどちらかといえば嫌いだし、前のこともあるから出来ることなら関わりたくもねぇんだよ。でも、今回はおれの敵もお前の敵も一緒で、このままあの野郎を放っておけば絶対に面倒なことになるのはいうまでもない。だから、今だけはあの野郎を倒すために手を組まねえか」
まるで立場が逆になっているようだった。これではぼくのほうが悪くて情けないヤツみたいになっているじゃないか。このまま強情を張って辻の頼みを拒み続けているのも、何だかみっともないようにも思えて来る。
しかし、相手は辻。ヤンキー三人組だ。少し前までは和田をイジメて自分たちが強い存在だというようなアピールをしてデカイ顔をしていたヤツだ。今回こそはたまたま敵視している相手が被っているとはいえ、ここで手を組んで関口を倒したとしても、辻がその後にどういう立ち回りをするかはわからない。
それどころか、彼に手を貸してぼくの中の心情がどう変化するかもーー。だとしたら、
「ひとつ、いっておきたいことがある」
ぼくは口を開いた。
【続く】
ファミレスの奥の席で、ぼくは奥側、となりには山路、対面には辻でそのとなりには海野がいた。正直窮屈だった。精神的にはもちろんだが、デブってる山路がとなりに座っているせいもあって、身体的にも窮屈だった。そろそろ夏だからもあるだろうけど、むちゃくちゃ暑苦しくて仕方なかった。
「それで」辻が口を開いた。「あれはどういうことだ?」
「アレって何だよ」
その答えはわかりきっていたが、ぼくは敢えてとぼけていった。そういうといつか見た光景のように海野と山路はぼくに対して敵意を剥き出しにしてきたが、辻は相も変わらずそれを制して改めて口を開いた。
「あんなにやるかやらないかを迷っていたのに、どうしてやる気になったんだよ」
「そんなの、おれの勝手だろ」
悪態もいいところだった。自分でも苦し紛れなのはわかりきっていた。海野と山路はぼくに飛び掛かるのを必死に我慢しているようだった。辻は落ち着いていた。
「そうだな。確かにテメェのいう通りだよ。でもな、おれだってお前が好きでこうやって関わってるワケじゃねぇんだよ」
「なら関わって来んなよ」
「......まぁ、それもそうだ」辻は怒るどころか少し落ち着いて口を開き直した。「そもそもおれもテメェのことはどちらかといえば嫌いだし、前のこともあるから出来ることなら関わりたくもねぇんだよ。でも、今回はおれの敵もお前の敵も一緒で、このままあの野郎を放っておけば絶対に面倒なことになるのはいうまでもない。だから、今だけはあの野郎を倒すために手を組まねえか」
まるで立場が逆になっているようだった。これではぼくのほうが悪くて情けないヤツみたいになっているじゃないか。このまま強情を張って辻の頼みを拒み続けているのも、何だかみっともないようにも思えて来る。
しかし、相手は辻。ヤンキー三人組だ。少し前までは和田をイジメて自分たちが強い存在だというようなアピールをしてデカイ顔をしていたヤツだ。今回こそはたまたま敵視している相手が被っているとはいえ、ここで手を組んで関口を倒したとしても、辻がその後にどういう立ち回りをするかはわからない。
それどころか、彼に手を貸してぼくの中の心情がどう変化するかもーー。だとしたら、
「ひとつ、いっておきたいことがある」
ぼくは口を開いた。
【続く】