【一年三組の皇帝~参拾睦~】
文字数 1,204文字
翌日はとても良く晴れた日となった。
まだ6月だというのに、既に暑い。ほんと、年々夏が来るのが早まり、去るのが遅くなっている気がしてならない。いや、むしろそうなっているのは明白だろう。
クラスではみんな「あっちー」とぼやきながらワイシャツの袖で額を拭っていた。そんな中、化粧を覚えたての女子たちは、化粧が落ちるといって心底不愉快そうにしていた。
ぼくのとなりもそうだった。
ぼくのとなりーー野崎メイだ。野崎はクラスの女子のボス的な存在のギャルで、野崎と野崎の取り巻きに目をつけられた女子は何かと酷い目に遭わされるらしい。プラス野崎は上級生や高校生のヤンキーとも繋がっているとのことで、ある人は彼女に媚びへつらい、ある人は徹底的に避け、ある人は上手いこといい距離を保ちながら関係を持っていた。
また更に厄介なのが、野崎はマジメさの欠片もないような人間なのに、彼女がクラスの女子学級委員であるということだ。そんなこともあって、野崎はクラス内の女子のカーストを事実上、牛耳っているようなモノだった。関口がうちのクラスの皇帝だとすれば、野崎はうちのクラスの女帝とでもいうところか。
ちなみに、野崎は関口のことはそうでもないとのこと。イケメンで成績がよく、スポーツも出来る関口のことは男をブランドとして見ても最高の一品だと思うのだが、どうも好みではないとのこと。
さて、6月になったということで既に二度の席替えをしたワケだけど、ぼくはどんなに席が変わってもどういうワケか毎回野崎のとなりになっていた。こればかりは何故なのかわからなかったが、田宮がいうには、野崎がぼくのとなりになるよう仕込んでいるからなのだという。......まさかな。
でも、そういわれてみると確かに野崎も満更でもなさそうだった。......まさかな。
さて、学校でのことである。ぼくは朝早くに学校に着くと、この日の小テストの勉強をしていた。だが、集中は出来なかった。やはり、この先、自分がどう立ち回るか。その覚悟を真に決められるのかが気掛かりで仕方がなかったからだ。
心臓がやかましいほどに鼓動を打っていた。出来るか?ーー怖い。それを繰り返していた。ぼくは怖かった。怖くて仕方なかった。何でぼくはこうも色んな人の真ん中に立って様々なトラブルを解決しようとしているのだろうか。生活安全委員だから?ーーそんなの、他の学校にはないはずだ。
「シンちゃん」
ハッとして声の主を見た。ハルナだった。寂しげで、何処か悲しさの漂う笑顔。
「おはよう」
とても優しい口調だった。それをとなりで見ていた野崎は明らかにムッとしていた。だが、男子人気のすごいハルナを敵に回すのは得策ではないとわかっていたのか、すぐにわざとらしい笑みを浮かべると、「ハルナぁー! おはよぉー!」といった。ほんと、やかましいとしかいえない。
頭の中で昨日の電話の内容がリフレインした。
【続く】
まだ6月だというのに、既に暑い。ほんと、年々夏が来るのが早まり、去るのが遅くなっている気がしてならない。いや、むしろそうなっているのは明白だろう。
クラスではみんな「あっちー」とぼやきながらワイシャツの袖で額を拭っていた。そんな中、化粧を覚えたての女子たちは、化粧が落ちるといって心底不愉快そうにしていた。
ぼくのとなりもそうだった。
ぼくのとなりーー野崎メイだ。野崎はクラスの女子のボス的な存在のギャルで、野崎と野崎の取り巻きに目をつけられた女子は何かと酷い目に遭わされるらしい。プラス野崎は上級生や高校生のヤンキーとも繋がっているとのことで、ある人は彼女に媚びへつらい、ある人は徹底的に避け、ある人は上手いこといい距離を保ちながら関係を持っていた。
また更に厄介なのが、野崎はマジメさの欠片もないような人間なのに、彼女がクラスの女子学級委員であるということだ。そんなこともあって、野崎はクラス内の女子のカーストを事実上、牛耳っているようなモノだった。関口がうちのクラスの皇帝だとすれば、野崎はうちのクラスの女帝とでもいうところか。
ちなみに、野崎は関口のことはそうでもないとのこと。イケメンで成績がよく、スポーツも出来る関口のことは男をブランドとして見ても最高の一品だと思うのだが、どうも好みではないとのこと。
さて、6月になったということで既に二度の席替えをしたワケだけど、ぼくはどんなに席が変わってもどういうワケか毎回野崎のとなりになっていた。こればかりは何故なのかわからなかったが、田宮がいうには、野崎がぼくのとなりになるよう仕込んでいるからなのだという。......まさかな。
でも、そういわれてみると確かに野崎も満更でもなさそうだった。......まさかな。
さて、学校でのことである。ぼくは朝早くに学校に着くと、この日の小テストの勉強をしていた。だが、集中は出来なかった。やはり、この先、自分がどう立ち回るか。その覚悟を真に決められるのかが気掛かりで仕方がなかったからだ。
心臓がやかましいほどに鼓動を打っていた。出来るか?ーー怖い。それを繰り返していた。ぼくは怖かった。怖くて仕方なかった。何でぼくはこうも色んな人の真ん中に立って様々なトラブルを解決しようとしているのだろうか。生活安全委員だから?ーーそんなの、他の学校にはないはずだ。
「シンちゃん」
ハッとして声の主を見た。ハルナだった。寂しげで、何処か悲しさの漂う笑顔。
「おはよう」
とても優しい口調だった。それをとなりで見ていた野崎は明らかにムッとしていた。だが、男子人気のすごいハルナを敵に回すのは得策ではないとわかっていたのか、すぐにわざとらしい笑みを浮かべると、「ハルナぁー! おはよぉー!」といった。ほんと、やかましいとしかいえない。
頭の中で昨日の電話の内容がリフレインした。
【続く】