【冷たい墓石で鬼は泣く~漆拾参~】

文字数 527文字

 野武士たちは決まって夜に来るという。

 確かに、何事も相手の意表をつくというのは大事だ。村が寝静まった時なら何でも盗み放題だ。野武士だって自分の姿をそう晒したくはないだろうし、出来ることなら自分の姿を見た者を殺したくもないだろう。

 だが、可笑しな点がいくつかある。

 それは野武士の存在は目撃されているというのに、誰ひとりとしてその姿を明朗にいい表せた者がいないということだった。

 確かに暗闇の中では、それがどういう人物かをいい当てるのも簡単なことではないだろう。だが、野武士とわかっている以上はそれらしいことは話の中に出てきてもいいはず。例えば、袴をはいて刀を差しているもそうだし、月代の形や毛の伸び具合、手入れのし具合。もしかしたら、身を守るための鎧や小手のようなモノもつけているかもしれない。

 だが、村の人間がいうには、そういった特徴は特になし。特になしというか、訊ねても口をつぐんでしまうのだ。しかし、その語り口からいえば、相手が脅威であることは間違いない。だが、同時に得たいの知れない気味の悪さが話の中に漂っていた。

 しかし、メシを食わして貰っている以上は無下に断るのも気が引けた。わたしは村に唯一ある火の見櫓から様子を見ることにした。

 【続く】
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登場人物紹介

どうも!    五条です!


といっても、作中の登場人物とかではなくて、作者なんですが。


ここでは適当に思ったことや経験したことをダラダラと書いていこうかな、と。


ま、そんな感じですわ。

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