【新年浮遊~参~】
文字数 1,153文字
すぐにフラッといなくなるのはサチコの悪いクセだった。
それは大学の時からそうで、サークルの人間同士で遠出をした時はもちろん、ライブの時間であってもそうだった。そして、その度にアイツは何処にいるのかという話になり、かと思いきやフラッと帰ってくるのがいつものことだった。
そんな自由奔放な性格もあって、サチコは好かれる人間からはとことん好かれたが、逆に嫌われる人間からはとことん嫌われた。だが、そんな奔放なサチコも実は結構人からどう思われているかを気にしがちではあったそうだ。
「あまりこういうことはいいたくないけど」そう前置きして、めぐみは続ける。「まるで多動症だね。落ち着きがないというか」
「そういう話はサークルでも散々出てた。主にサチコを良く思ってないヤツラの間で、な」そして、そのことばはサチコのパーソナリティを侵害するようなことばへと繋がって行ったと祐太朗は続けた。「本当に不愉快だった。そういうことをいうヤツは基本調子に乗って人様を見下すクセに大してセンスもなかったしな」
「......ごめんね」珍しくめぐみは自分から謝った。「でも、別にそういう意味でいったワケじゃないからね」
「そりゃそうだろ。誰だって最初にアイツに会えば、そう思うだろうからな。問題はその先。アイツのことをわかった上で、人格を否定するバカがいるってことだよーー」
それから五分ほどして、サチコはフラッと現れた。祐太朗が何処に行ってたのかと訊ねると、サチコはひとことーー
「ガシャポンやってた」
とたくさんのガシャポンが集まる一角を指差していった。祐太朗はそれに対してイラ立ちを見せるでもなく、朗らかな笑みを浮かべていた。それからサチコは駅構内を出て、適当に駅の回りを案内して欲しいといった。祐太朗はそれを快諾し、サチコと共に江田のストリートを楽しそうに歩き回った。
めぐみは物陰からその様子を見ていたが、その表情は気が気でない、といった感じだった。
「祐太朗氏」ストリートを歩いている最中、サチコは突如こういった。「今日は本当にありがとう」
祐太朗は特に何をいうでもなく、ただ相槌を打つだけだった。それから駅に戻ったところで突然スマホに連絡が入った。めぐみからだった。
「クライアントから連絡あり。あと五分で着くとのこと」
祐太朗はひとこと、わかったと打ち込み、サチコに事情を告げようとした。が、サチコはまたもやいなくなっていた。またか、と思いつつクライアントとのアポを優先しなければならない。あちこちを見回してもサチコの姿は見えなかった。
めぐみから電話が掛かって来る。
「あの子は帰ったの?」
「いや、またいなくなった」
祐太朗の声からは、どうせまたすぐに戻ってくるだろうといった思いが具体化したような、そんな調子が伺えた。
【続く】
それは大学の時からそうで、サークルの人間同士で遠出をした時はもちろん、ライブの時間であってもそうだった。そして、その度にアイツは何処にいるのかという話になり、かと思いきやフラッと帰ってくるのがいつものことだった。
そんな自由奔放な性格もあって、サチコは好かれる人間からはとことん好かれたが、逆に嫌われる人間からはとことん嫌われた。だが、そんな奔放なサチコも実は結構人からどう思われているかを気にしがちではあったそうだ。
「あまりこういうことはいいたくないけど」そう前置きして、めぐみは続ける。「まるで多動症だね。落ち着きがないというか」
「そういう話はサークルでも散々出てた。主にサチコを良く思ってないヤツラの間で、な」そして、そのことばはサチコのパーソナリティを侵害するようなことばへと繋がって行ったと祐太朗は続けた。「本当に不愉快だった。そういうことをいうヤツは基本調子に乗って人様を見下すクセに大してセンスもなかったしな」
「......ごめんね」珍しくめぐみは自分から謝った。「でも、別にそういう意味でいったワケじゃないからね」
「そりゃそうだろ。誰だって最初にアイツに会えば、そう思うだろうからな。問題はその先。アイツのことをわかった上で、人格を否定するバカがいるってことだよーー」
それから五分ほどして、サチコはフラッと現れた。祐太朗が何処に行ってたのかと訊ねると、サチコはひとことーー
「ガシャポンやってた」
とたくさんのガシャポンが集まる一角を指差していった。祐太朗はそれに対してイラ立ちを見せるでもなく、朗らかな笑みを浮かべていた。それからサチコは駅構内を出て、適当に駅の回りを案内して欲しいといった。祐太朗はそれを快諾し、サチコと共に江田のストリートを楽しそうに歩き回った。
めぐみは物陰からその様子を見ていたが、その表情は気が気でない、といった感じだった。
「祐太朗氏」ストリートを歩いている最中、サチコは突如こういった。「今日は本当にありがとう」
祐太朗は特に何をいうでもなく、ただ相槌を打つだけだった。それから駅に戻ったところで突然スマホに連絡が入った。めぐみからだった。
「クライアントから連絡あり。あと五分で着くとのこと」
祐太朗はひとこと、わかったと打ち込み、サチコに事情を告げようとした。が、サチコはまたもやいなくなっていた。またか、と思いつつクライアントとのアポを優先しなければならない。あちこちを見回してもサチコの姿は見えなかった。
めぐみから電話が掛かって来る。
「あの子は帰ったの?」
「いや、またいなくなった」
祐太朗の声からは、どうせまたすぐに戻ってくるだろうといった思いが具体化したような、そんな調子が伺えた。
【続く】