【帝王霊~百漆~】
文字数 620文字
ぼくの耳に響いていたのは自分の呼吸の音だけだった。
ぼくの意識にあるのは、ただ早くハルナのことを見つけなければということだけだった。心臓の鼓動はこれまでにないほど高ぶっていた。冬だというのに自分の身体が燃えたぎっているように熱かった。
足に僅かな冷たさを感じた。きっと、雑草についた水滴が靴を湿らせて靴下を濡らしたのかもしれない。
にしても大きな神社だ。生まれてこのかた、ずっと川澄に住んでいるにも関わらず全然しらなかった。今日はずっと走っている気がする。でも、全然疲れを感じない。
ふと自分が何処に向かっているのかわからなくなった。ぼくが探しているのは大きなスーツケース、そしてハルナ。果たしてそれらはここにあるのだろうか。わからない。
でも、ここなんじゃないかという確信があった。あの男の目、アレは五村で襲われた男と同じ目だ。何が起きているのかはわからないけど、短期間でこうも似たような感じの男に襲われたことを考えると、これは偶然じゃないように思える。ただの誘拐犯、或いは犯罪者ならまだ人間的な目をしているはず。五村のひったくり、そして神社に現れた男、ふたりとも人間とは思えないような無機質な目付きをしていた。まるで何かに操られているような、人形のような目だった。
そしてぼくには確信があった。男が出てきたほうを探せば何かが出てくる。
走った、走ったーー走り続けた。
何か大きな四角いモノが目に入った。
スーツケースだった。
【続く】
ぼくの意識にあるのは、ただ早くハルナのことを見つけなければということだけだった。心臓の鼓動はこれまでにないほど高ぶっていた。冬だというのに自分の身体が燃えたぎっているように熱かった。
足に僅かな冷たさを感じた。きっと、雑草についた水滴が靴を湿らせて靴下を濡らしたのかもしれない。
にしても大きな神社だ。生まれてこのかた、ずっと川澄に住んでいるにも関わらず全然しらなかった。今日はずっと走っている気がする。でも、全然疲れを感じない。
ふと自分が何処に向かっているのかわからなくなった。ぼくが探しているのは大きなスーツケース、そしてハルナ。果たしてそれらはここにあるのだろうか。わからない。
でも、ここなんじゃないかという確信があった。あの男の目、アレは五村で襲われた男と同じ目だ。何が起きているのかはわからないけど、短期間でこうも似たような感じの男に襲われたことを考えると、これは偶然じゃないように思える。ただの誘拐犯、或いは犯罪者ならまだ人間的な目をしているはず。五村のひったくり、そして神社に現れた男、ふたりとも人間とは思えないような無機質な目付きをしていた。まるで何かに操られているような、人形のような目だった。
そしてぼくには確信があった。男が出てきたほうを探せば何かが出てくる。
走った、走ったーー走り続けた。
何か大きな四角いモノが目に入った。
スーツケースだった。
【続く】