【水際にて泳ぎを知る】
文字数 2,181文字
キツイ時こそ息抜きをしなければならない。
この意見に関しては反対意見も出てくるとは思うのだけど、おれは基本的にそういう風に考えているワケだ。
というのも、溺れた状態では必死になりすぎて回りが見えなくなるからだ。
まぁ、極端な例を挙げたこともあって、どういうことかわかりづらくはなってしまったけれど、ハード過ぎる状況でアップアップするのでは、今、自分の回りがどうあって、どうなっているのかに気づけることはないということだ。
これは以前も書いたことではあるけれど、いってしまえば、これは走り続けている時に見る景色とぶらぶらと歩いて見る景色では見え方が違うという話と似ているーーというかほぼ同じだ。
人間、遊びの中にこそ発見がある。或いは緊張し切ったマインドをほぐすことが出来る。
それって単なる逃避じゃん、といわれたらその通りだと思いつつも、それは違うともいいたい。まぁ、目を叛けて逃避したくなるような現実ならさっさと変えてしまったほうがいいんだけどなーーそれも難しいのかもしれないけど。
そもそも溺れながら助かるために泳ぎを知ろうとするのはシンプルに効率が悪い。必死になって必死になって、その先にこそ成長はある。それは尤もかもしれない。必死にやって、やり続けて、気づいた時には自分は成長している。それはそれで感慨深いモノがある。だが、その道中にて死んでしまっては元もこもない。
ならば、少しは遠回りになるとしても、余裕を持って別のモノに目を向けながらゆっくりやるのも悪くはないと思うのだ。
これは以前もいったことだし、当たり前の話だが、必死になりすぎると人間、視野が狭くなってしまうモノで。「こうあるんだッ!」、「こうあるべきなんだッ!」、「こうでなければならないッ!」という考え方、信条は大層だが、その果てに盲目になってしまっては、結局得るモノは少なくなってしまう。
だからこそ、いつだって多少なりとも余裕を持っていられるくらいであるほうがいい。
余裕と遊びから思わぬ発見をすることだって少なくないのだからーー
さて、『音楽祭篇』の外伝みたいな話の続きである。早く本編に戻れよって話なんだけど、こっちもこっちで大切なんでな。あらすじーー
「『三年生男子のアカペラ斉唱の有志を募る』。担任であり、音楽担当の教員であるブタさんからそうアナウンスがあり、アカペラ斉唱に興味を持った五条氏は、榎本、麦藁とともに有志としてアカペラに参加することに。そこに集まったメンツは、オタクから不良、優等生にスポーツマンとバラエティに富んだ面々だったーー」
とまぁ、こんな感じか。じゃ、やってくーー
メンツが締め切られると、まずは曲選びをすることとなった。
演る曲は一曲。すべてのクラスが二曲を歌うことになっていることもあってか、有志のアカペラ斉唱も二曲演りたいが、時間的にそれも難しいのでは、とのことだった。
「歌う曲ですが、こちらで候補をいくつか用意しましたので、確かめて下さい」
ブタさんはそういって生徒にA4のプリントを配った。そこには五曲程の曲目が書かれていた。それらは合唱の定番ーーというよりは、どちらかというと古くのポップチャートに載っていそうな、ある種定番化したヒット曲だった。
確かに男子だけでの合唱なのだ、女声のハイトーンがモノをいうような所謂合唱曲を歌うよりは低音の利いた渋い曲を歌ったほうがいいに決まっている。だとしたら、男性歌手が歌う歌謡曲を合唱として歌うのは理に叶っている。
まぁ、ある種のテンプレ的な意見として、
「オレンジレンジ歌おうぜぇ~」
とかいってるのもちゃんといたワケだ。ちなみに、オレンジレンジのアカペラは高校の文化祭で有志としてやることとなるんだけどな。
それはさておき、そんな意見が出たところでブタさんは動じるどころか耳に痛い甲高い声で、
「この中からだっていってるでしょー!」
と有志の男子生徒の鼓膜を破壊しに掛かったワケだ。ヒスるのも大概だよ。
それから、ブタさんはサンプルとしてプリントに載っている曲目をサンプルとして順次掛けていった。
どの曲もポップな歌謡曲として有名なモノではあるが、おれたちが聴いたのは、どれも男声のアカペラ斉唱としてのモノだった。
正直なところ、どれもいい曲で、どれを歌ってもいいかなというのが本音だった。
この時期は、おれも初めての指揮者で何かとナーバスになっていたこともあって指揮とは遠いところにある歌に逃げたかった部分もあるかもしれないーーというか、あった。
取り敢えず、何でもいいから歌いたい。
すべての曲目を聴き終えて、どの曲にするか決めることとなった。その選択方法は挙手による多数決。まぁ、当たり前といえば当たり前。
ブタさんが曲目を挙げて決を取っていく。おれは正直どの曲でも良かったので、適当な曲にて手を挙げた。そして、決を取り終わり、歌う曲が決まった。その曲とはーー
『見上げてごらん夜の星を』だった。
坂本九の歌唱で有名な曲だけど、元はミュージカル曲で他の人が歌っていたーーとか、そんな話はこの当時のおれにはどうでも良く、むしろこころが踊る思いだった。
おれは砂利道の端にポッと咲く花を見つけたような気分だったーー
とまぁ、今回はこんな感じか。次回はアカペラの練習についてかな。じゃ、
アスタラ。
この意見に関しては反対意見も出てくるとは思うのだけど、おれは基本的にそういう風に考えているワケだ。
というのも、溺れた状態では必死になりすぎて回りが見えなくなるからだ。
まぁ、極端な例を挙げたこともあって、どういうことかわかりづらくはなってしまったけれど、ハード過ぎる状況でアップアップするのでは、今、自分の回りがどうあって、どうなっているのかに気づけることはないということだ。
これは以前も書いたことではあるけれど、いってしまえば、これは走り続けている時に見る景色とぶらぶらと歩いて見る景色では見え方が違うという話と似ているーーというかほぼ同じだ。
人間、遊びの中にこそ発見がある。或いは緊張し切ったマインドをほぐすことが出来る。
それって単なる逃避じゃん、といわれたらその通りだと思いつつも、それは違うともいいたい。まぁ、目を叛けて逃避したくなるような現実ならさっさと変えてしまったほうがいいんだけどなーーそれも難しいのかもしれないけど。
そもそも溺れながら助かるために泳ぎを知ろうとするのはシンプルに効率が悪い。必死になって必死になって、その先にこそ成長はある。それは尤もかもしれない。必死にやって、やり続けて、気づいた時には自分は成長している。それはそれで感慨深いモノがある。だが、その道中にて死んでしまっては元もこもない。
ならば、少しは遠回りになるとしても、余裕を持って別のモノに目を向けながらゆっくりやるのも悪くはないと思うのだ。
これは以前もいったことだし、当たり前の話だが、必死になりすぎると人間、視野が狭くなってしまうモノで。「こうあるんだッ!」、「こうあるべきなんだッ!」、「こうでなければならないッ!」という考え方、信条は大層だが、その果てに盲目になってしまっては、結局得るモノは少なくなってしまう。
だからこそ、いつだって多少なりとも余裕を持っていられるくらいであるほうがいい。
余裕と遊びから思わぬ発見をすることだって少なくないのだからーー
さて、『音楽祭篇』の外伝みたいな話の続きである。早く本編に戻れよって話なんだけど、こっちもこっちで大切なんでな。あらすじーー
「『三年生男子のアカペラ斉唱の有志を募る』。担任であり、音楽担当の教員であるブタさんからそうアナウンスがあり、アカペラ斉唱に興味を持った五条氏は、榎本、麦藁とともに有志としてアカペラに参加することに。そこに集まったメンツは、オタクから不良、優等生にスポーツマンとバラエティに富んだ面々だったーー」
とまぁ、こんな感じか。じゃ、やってくーー
メンツが締め切られると、まずは曲選びをすることとなった。
演る曲は一曲。すべてのクラスが二曲を歌うことになっていることもあってか、有志のアカペラ斉唱も二曲演りたいが、時間的にそれも難しいのでは、とのことだった。
「歌う曲ですが、こちらで候補をいくつか用意しましたので、確かめて下さい」
ブタさんはそういって生徒にA4のプリントを配った。そこには五曲程の曲目が書かれていた。それらは合唱の定番ーーというよりは、どちらかというと古くのポップチャートに載っていそうな、ある種定番化したヒット曲だった。
確かに男子だけでの合唱なのだ、女声のハイトーンがモノをいうような所謂合唱曲を歌うよりは低音の利いた渋い曲を歌ったほうがいいに決まっている。だとしたら、男性歌手が歌う歌謡曲を合唱として歌うのは理に叶っている。
まぁ、ある種のテンプレ的な意見として、
「オレンジレンジ歌おうぜぇ~」
とかいってるのもちゃんといたワケだ。ちなみに、オレンジレンジのアカペラは高校の文化祭で有志としてやることとなるんだけどな。
それはさておき、そんな意見が出たところでブタさんは動じるどころか耳に痛い甲高い声で、
「この中からだっていってるでしょー!」
と有志の男子生徒の鼓膜を破壊しに掛かったワケだ。ヒスるのも大概だよ。
それから、ブタさんはサンプルとしてプリントに載っている曲目をサンプルとして順次掛けていった。
どの曲もポップな歌謡曲として有名なモノではあるが、おれたちが聴いたのは、どれも男声のアカペラ斉唱としてのモノだった。
正直なところ、どれもいい曲で、どれを歌ってもいいかなというのが本音だった。
この時期は、おれも初めての指揮者で何かとナーバスになっていたこともあって指揮とは遠いところにある歌に逃げたかった部分もあるかもしれないーーというか、あった。
取り敢えず、何でもいいから歌いたい。
すべての曲目を聴き終えて、どの曲にするか決めることとなった。その選択方法は挙手による多数決。まぁ、当たり前といえば当たり前。
ブタさんが曲目を挙げて決を取っていく。おれは正直どの曲でも良かったので、適当な曲にて手を挙げた。そして、決を取り終わり、歌う曲が決まった。その曲とはーー
『見上げてごらん夜の星を』だった。
坂本九の歌唱で有名な曲だけど、元はミュージカル曲で他の人が歌っていたーーとか、そんな話はこの当時のおれにはどうでも良く、むしろこころが踊る思いだった。
おれは砂利道の端にポッと咲く花を見つけたような気分だったーー
とまぁ、今回はこんな感じか。次回はアカペラの練習についてかな。じゃ、
アスタラ。