【ナナフシギ~伍拾死~】

文字数 1,180文字

 深い深い夜が少しだけ白み始めていた。

 終わりが近いーーそう空が告げていた。だが、すべての目的は達成されたのだろうか。それを知る術はない。知るには離れて別のところを探している弓永と合流する必要がある。この時代、携帯電話はあっても、メールという機能すらあったか微妙な状態だった。少なくとも、携帯電話で写真を撮るなんてことは出来なかった。

 それに、仮に携帯電話を持っていたとしても、普通に電話をするための電波すらまともにあるともいえない状況であったのはいうまでもないだろう。

 そもそも、あの世とこの世の狭間にそんな電波が飛んでいるとも思えないし、あっても霊障でいくらでもねじ曲げられてしまうであろうことは想像するも容易かった。

 連絡、通信の術が限りなく少ないこの時代だからこそ、そういったことにはナーバスになるであろうからこそ、そこら辺は慎重にならなければならないのだろうが、そこはやはり子供、詰めが甘かったといっていい。

 エミリもそのことに気づいてしまった口であった。連絡の術がない。そう気づいてからは困惑して右往左往するばかり。少女の霊がいなくなったばかりの音楽室の空気は澄みきっていた。だが、混乱、困惑が場の空気を再び淀ませ始めた。

「静かにしろよ」

 祐太朗が切り捨てるようにいった。それに対してエミリは反論しようとするが、尚も祐太朗はそれを遮った。そして、目をつぶって大きく息を吐くと、そのままうつむき気味になって黙り込んだ。エミリが何をしているのか訊ねても、祐太朗は黙るよう促すばかりだった。

 次に祐太朗が目を開けたのは、目を閉じてから三分程度経ってからのことだった。

「どうしたの? 何かあったの?」

 エミリの口調はパニックを起こしたように矢継ぎ早になっていた。だが、祐太朗は、

「弓永に念を送っていたんだよ」

 念を送ると聞いて、エミリは更に困惑したようだった。それも無理はないだろう。そもそも念を送るということ自体、よくわからないだろうから。祐太朗が簡単に説明した内容によれば、念を送るというのは、早い話がテレパシーと同じことであるとのことだった。

 つまり、遠くにいる弓永に念を飛ばしてメッセージを送ったということだ。

「......でも」エミリはいいにくそうにして口を開いた。「そんなことが出来るんなら石川先生にもメッセージを送れただろうし、すぐに見つかったんじゃない?」

 だが、祐太朗はこれを否定した。というのも、やはり念を送るのも霊障が大きな要因となり、霊障が強くなればなるほどに念は届きづらくなる。祐太朗が石川先生に念を送ろうとすると、まるでノイズが掛かったかのように、その念が掻き消えてしまったという。

「石川先生、やっぱ何処にいるかわからーー」

 突然、音楽室のテレビがついた。と、そこにはーー校庭の遊具で遊ぶ詩織と和雅が写し出されていた。

 【続く】
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

どうも!    五条です!


といっても、作中の登場人物とかではなくて、作者なんですが。


ここでは適当に思ったことや経験したことをダラダラと書いていこうかな、と。


ま、そんな感じですわ。

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み