【ナナフシギ~漆拾弐~】
文字数 676文字
目が覚めるとそこは暗闇だった。
自分は一体何をしていたのだろう。そもそも自分は何処の誰なのだろう。そう自問するように、辺りを見回し、かつ自分の身体をまさぐった。何も異常はないようだ。
ようやく目が暗闇に慣れて来て辺りが何となくわかるようになって来た。何となく見覚えのある光景だった。だとしたらーー
ゆっくりと段差に気をつけて下に降りる。暗闇の中、何となくの感覚を信じてドアを開けた。そこから出た後は壁づたいに歩いて行く。何か突起を見つけた。ドアノブだ。
ガチャリと捻って中に入った。ドア横のスイッチを押した。電気がついた。
祐太朗の姿があった。鏡に写った祐太朗の姿。祐太朗は、やっぱりと呟いた。それからハッとして寝室へ戻ろうとした。
「おふたりならご無事ですよ」
岩淵ーー突然現れた。祐太朗は驚きの声を上げ、それから脅かすなと悪態をついた。岩淵はニヤつきながらまったく悪びれる様子もなくごめんなさいと謝罪した。
「で、どういうことだよ?」
「何がですか?」
「どうしておれはここにいる?」
「どうしてって、今日はずっと寝てたじゃないですか」
寝てた? じゃあ、あの学校での出来事は全部ウソだったというのか。そんなバカな。祐太朗の顔にはそう書いてあった。祐太朗は時計を見た。五時前。外はカーテン越しにわかるくらい白んでいた。
祐太朗は早歩きで電話の元へ行った。
「何してるんですか?」岩淵はニヤつきながらいった。「こんな時間に迷惑ですよ」
岩淵はすべてを見透かしているかのようにいった。祐太朗は電話に伸ばした手を止めた。
「夢だったのか」
祐太朗はいった。
【続く】
自分は一体何をしていたのだろう。そもそも自分は何処の誰なのだろう。そう自問するように、辺りを見回し、かつ自分の身体をまさぐった。何も異常はないようだ。
ようやく目が暗闇に慣れて来て辺りが何となくわかるようになって来た。何となく見覚えのある光景だった。だとしたらーー
ゆっくりと段差に気をつけて下に降りる。暗闇の中、何となくの感覚を信じてドアを開けた。そこから出た後は壁づたいに歩いて行く。何か突起を見つけた。ドアノブだ。
ガチャリと捻って中に入った。ドア横のスイッチを押した。電気がついた。
祐太朗の姿があった。鏡に写った祐太朗の姿。祐太朗は、やっぱりと呟いた。それからハッとして寝室へ戻ろうとした。
「おふたりならご無事ですよ」
岩淵ーー突然現れた。祐太朗は驚きの声を上げ、それから脅かすなと悪態をついた。岩淵はニヤつきながらまったく悪びれる様子もなくごめんなさいと謝罪した。
「で、どういうことだよ?」
「何がですか?」
「どうしておれはここにいる?」
「どうしてって、今日はずっと寝てたじゃないですか」
寝てた? じゃあ、あの学校での出来事は全部ウソだったというのか。そんなバカな。祐太朗の顔にはそう書いてあった。祐太朗は時計を見た。五時前。外はカーテン越しにわかるくらい白んでいた。
祐太朗は早歩きで電話の元へ行った。
「何してるんですか?」岩淵はニヤつきながらいった。「こんな時間に迷惑ですよ」
岩淵はすべてを見透かしているかのようにいった。祐太朗は電話に伸ばした手を止めた。
「夢だったのか」
祐太朗はいった。
【続く】