【休日宣言の矛盾】
文字数 3,197文字
今日は更新をお休みします。
と宣言しようかと思ったんだけど、それをここで宣言した時点で更新したことになってしまうという矛盾に気づいたのである。
そもそも、義務でやっているわけではないのだから、そんなこと宣言しなくても全然よくて、黙って更新せずにいればいいのだ。
とまぁ、何でそれをしなかったのかというと、ほんと何となくである。更にいうなら、唐突にこれを書こうかというネタが現れてしまったのもある。
いくつかネタをプールしてんじゃないの?といわれたら、それは間違いではないのだけど、そのネタを書くのに気乗りしなかったら、それを書く理由はないんだよな。怠惰な五条氏。
しかし、休むというのは、現代人にとって中々勇気のいることであると思う。会社、学校、習い事、やむを得ない事情があっても「休みます」というのに抵抗があることが多い。
変な話、一度休んだだけで評価が下がるんじゃないか、周りから遅れを取るのではないかという不安はあると思うのだ。その不安がないのは、アッパッパーな鼻垂れ小僧ぐらいだろう。
それに一度休んでしまうと、どこか怠惰な気分にもなるし、そのコミュニティに顔を出しづらくもなる。それくらいに、日本人は真面目というか、真面目という概念に取り憑かれているというか。
昨日、唐突に知り合いから「ぼくって真面目に見えます?」と訊かれたのだが、真面目に見えるとは一体何なのだろうと少し考えてしまった。しかも、ろくに話したこともない本当の知り合い程度の関係の人なので余計に。
あまりに唐突な質問に、おれもその詳細を訊ねてみたのだけど、彼曰く、「見た感じが真面目に見えるとよくいわれる」とのこと。そこで、試しに訊いてみたのがーー
「仕事をサボることにうしろめたさはあるか」
なのだけど、答えはいうまでもなく、「ある」だった。それもそうだろう。よっぽどの社会不適合か、精神的に追い詰められていない限り、仕事を休むことにうしろめたさを感じない人はいないはずだ。まぁ、精神的にキツくても真面目な人は仕事しすぎてダメになってしまうのだろうけど。
変な話、「真面目である」というのは、当たり前なことだと思うのだ。だが、最近ではその真面目さが単なる悪癖になってしまっているようにしか思えない。
いってしまえば、「日常の不安を解消するために真面目にならざるを得ない」ような強制された真面目さがある気がしてならないのだ。
そりゃ、生活のためだったり、家族のためだったりと行く先に不安は沢山あると思うのだけど、最近はそこに付け込まれているとしか思えない事象があまりにも多い気がする。だから真面目に振る舞わざるを得ないような状況に陥っているというのもある気はするのだ。
だが、人間、休むべき時は休むべきなのだ。
あれは高校三年の二学期のことだ。そのシーズンにもなると、センター試験も近づき、我々もカリカリし出す頃のはずなんだけど、うちのクラスはまぁ、陽気で呑気だった。
試験とか関係ねぇ連中の集まりなんだろと思われかねないが、逆だった。みな、普通に受験するけれど、変に焦ったり、カリカリしたりはしなかった。まぁ、むしろこういう時にカリカリしてるヤツほど、本番に弱いんだけどな。
とはいえ、みな、やることはちゃんとやる人たちだったので、成績はいうまでもなくよくて。おれもあまり勉強のできるほうではないのだけど、不思議とそんなクラスにいたのだ。
補足すると、おれが通っていた高校は男子校で、女子もいないし、女子によく見られたいからと調子に乗るゴミもいなかったので、それはそれは平和だった。まぁ、極度の変態とゲイには厳しかったけど。
また、この当時のクラスには小、中の同級生でもあった外山とあっちゃんも同じクラスで、まぁ、怱々足る面々といった感じだった。
さて、そんなクラスで楽しい学生生活を送っていた最中、あるひとりの生徒が無断欠席をしたのだ。
彼の名前は、シュンスケ。シュンスケは、おれと同じ市に住む幼稚園時代の友人でもあり、高校に入ってからたまたま入ったバドミントン部にて再会し、すぐに仲良くなった男だった。
シュンスケは他の連中同様、おちゃらけてはいるが真面目で、元々バスケをやっていたこともあってか、運動センスも中々なものだったーーまぁ、スキーはヤバいほど下手だったけど。
そんなシュンスケが学校を無断欠席した。朝のホームルーム、何の事情も訊いていない担任の小木田先生が、シュンスケと特に仲の良かったおれに事情を訊いてきたのだが、おれも彼の事情などまったく知らなかったのだ。
ちなみに、小木田先生は、以前書いたひとし先生の時の話に出てきた担任と同一人物で。当時は四〇台半ばで、非常に教育熱心な熱い先生だった。
話を戻そう。
まぁ、あの真面目なシュンスケのことだ。明日には学校に出てくるだろうと誰もが思っていたのだ。がーー、
シュンスケは翌日も無断欠席をしたのだ。
これには、小木田先生もクラスメイトも何があったのかと心配になり、みな各々でシュンスケに連絡してみたのだが、返信はない。
それから数日、シュンスケは学校に現れず、連絡もなかった。小木田先生からの電話にも出ず、本格的にどうしたのかと不穏なウワサも聴こえてくるようになり始めた。
そして翌週の月曜日ーー、
とうとうシュンスケが現れたのだ。
これにはクラスメイトもすぐさまシュンスケに駆け寄り事情を訊きまくったんだが、シュンスケはことばを濁すばかりで全然核心をいわない。おれもこれには深い闇を感じ、そうでなくとも治安の悪い街に住んでいる同じ市民としては、不安にならざるを得なかった。
朝のホームルーム。教室へ入ってき、シュンスケの顔を見た小木田先生は、漫画のような仰々しい驚きの表情を見せ、
「おい、シュンスケ。お前、何してたんだ?」
と訊ねたのだ。そしたら、シュンスケは何も可笑しくもないといった調子で、こう答えたのだーー
「いやぁ、先週の月曜の朝、靴下の中にハチがいて、足の裏刺されたんすよ!」
……は?
ワケがわからない。
まったくもって理解ができない。
確かにハチに刺されるのは、アナフィラキシーもあるから危険は危険なんだけど、
だったら、何で連絡しなかった。
てか、靴下の中にハチって、干してた靴下をそのまま履いていこうとしたのか。
これには小木田先生も思わず、
「お前、そんなことで一週間も連絡せずに休んだのか」
と明らかに笑いを堪えながらいっていました。クラスメイトももう我慢せずに笑い出してしまいまして。肝心のシュンスケは、
「いや! マジで痛かったんすよ!」
と必死でその様子を説明しようとするのだが、そうする度に周りの笑いのボルテージが上がっていく。小木田先生も、
「馬鹿野郎、連絡くらいしろ」
と笑っていました。
それ以降、シュンスケは「ハッチ」だとか「靴下」とかいわれてネタにされまくるようになりました。本人も相当後悔していた模様。
ちなみに、そんなシュンスケですが、こんな頭の可笑しなことをする割に友人想いなところもありまして、2011年の大地震の時、ちょうど被災地近辺で独り暮らししていたおれに最初に連絡してきたのが彼でした。やっぱ底抜けにいいヤツなんだろうねぇ。
それにしても、彼は今、何してんだろ。
まぁ、おれも何かに嫌気がさしたら、「靴下にハチが入ってて足の裏刺されました」っていって無断欠席してみるかなーーダメか。
まぁ、無理はしないことだな。
アスタラヴィスタ。
と宣言しようかと思ったんだけど、それをここで宣言した時点で更新したことになってしまうという矛盾に気づいたのである。
そもそも、義務でやっているわけではないのだから、そんなこと宣言しなくても全然よくて、黙って更新せずにいればいいのだ。
とまぁ、何でそれをしなかったのかというと、ほんと何となくである。更にいうなら、唐突にこれを書こうかというネタが現れてしまったのもある。
いくつかネタをプールしてんじゃないの?といわれたら、それは間違いではないのだけど、そのネタを書くのに気乗りしなかったら、それを書く理由はないんだよな。怠惰な五条氏。
しかし、休むというのは、現代人にとって中々勇気のいることであると思う。会社、学校、習い事、やむを得ない事情があっても「休みます」というのに抵抗があることが多い。
変な話、一度休んだだけで評価が下がるんじゃないか、周りから遅れを取るのではないかという不安はあると思うのだ。その不安がないのは、アッパッパーな鼻垂れ小僧ぐらいだろう。
それに一度休んでしまうと、どこか怠惰な気分にもなるし、そのコミュニティに顔を出しづらくもなる。それくらいに、日本人は真面目というか、真面目という概念に取り憑かれているというか。
昨日、唐突に知り合いから「ぼくって真面目に見えます?」と訊かれたのだが、真面目に見えるとは一体何なのだろうと少し考えてしまった。しかも、ろくに話したこともない本当の知り合い程度の関係の人なので余計に。
あまりに唐突な質問に、おれもその詳細を訊ねてみたのだけど、彼曰く、「見た感じが真面目に見えるとよくいわれる」とのこと。そこで、試しに訊いてみたのがーー
「仕事をサボることにうしろめたさはあるか」
なのだけど、答えはいうまでもなく、「ある」だった。それもそうだろう。よっぽどの社会不適合か、精神的に追い詰められていない限り、仕事を休むことにうしろめたさを感じない人はいないはずだ。まぁ、精神的にキツくても真面目な人は仕事しすぎてダメになってしまうのだろうけど。
変な話、「真面目である」というのは、当たり前なことだと思うのだ。だが、最近ではその真面目さが単なる悪癖になってしまっているようにしか思えない。
いってしまえば、「日常の不安を解消するために真面目にならざるを得ない」ような強制された真面目さがある気がしてならないのだ。
そりゃ、生活のためだったり、家族のためだったりと行く先に不安は沢山あると思うのだけど、最近はそこに付け込まれているとしか思えない事象があまりにも多い気がする。だから真面目に振る舞わざるを得ないような状況に陥っているというのもある気はするのだ。
だが、人間、休むべき時は休むべきなのだ。
あれは高校三年の二学期のことだ。そのシーズンにもなると、センター試験も近づき、我々もカリカリし出す頃のはずなんだけど、うちのクラスはまぁ、陽気で呑気だった。
試験とか関係ねぇ連中の集まりなんだろと思われかねないが、逆だった。みな、普通に受験するけれど、変に焦ったり、カリカリしたりはしなかった。まぁ、むしろこういう時にカリカリしてるヤツほど、本番に弱いんだけどな。
とはいえ、みな、やることはちゃんとやる人たちだったので、成績はいうまでもなくよくて。おれもあまり勉強のできるほうではないのだけど、不思議とそんなクラスにいたのだ。
補足すると、おれが通っていた高校は男子校で、女子もいないし、女子によく見られたいからと調子に乗るゴミもいなかったので、それはそれは平和だった。まぁ、極度の変態とゲイには厳しかったけど。
また、この当時のクラスには小、中の同級生でもあった外山とあっちゃんも同じクラスで、まぁ、怱々足る面々といった感じだった。
さて、そんなクラスで楽しい学生生活を送っていた最中、あるひとりの生徒が無断欠席をしたのだ。
彼の名前は、シュンスケ。シュンスケは、おれと同じ市に住む幼稚園時代の友人でもあり、高校に入ってからたまたま入ったバドミントン部にて再会し、すぐに仲良くなった男だった。
シュンスケは他の連中同様、おちゃらけてはいるが真面目で、元々バスケをやっていたこともあってか、運動センスも中々なものだったーーまぁ、スキーはヤバいほど下手だったけど。
そんなシュンスケが学校を無断欠席した。朝のホームルーム、何の事情も訊いていない担任の小木田先生が、シュンスケと特に仲の良かったおれに事情を訊いてきたのだが、おれも彼の事情などまったく知らなかったのだ。
ちなみに、小木田先生は、以前書いたひとし先生の時の話に出てきた担任と同一人物で。当時は四〇台半ばで、非常に教育熱心な熱い先生だった。
話を戻そう。
まぁ、あの真面目なシュンスケのことだ。明日には学校に出てくるだろうと誰もが思っていたのだ。がーー、
シュンスケは翌日も無断欠席をしたのだ。
これには、小木田先生もクラスメイトも何があったのかと心配になり、みな各々でシュンスケに連絡してみたのだが、返信はない。
それから数日、シュンスケは学校に現れず、連絡もなかった。小木田先生からの電話にも出ず、本格的にどうしたのかと不穏なウワサも聴こえてくるようになり始めた。
そして翌週の月曜日ーー、
とうとうシュンスケが現れたのだ。
これにはクラスメイトもすぐさまシュンスケに駆け寄り事情を訊きまくったんだが、シュンスケはことばを濁すばかりで全然核心をいわない。おれもこれには深い闇を感じ、そうでなくとも治安の悪い街に住んでいる同じ市民としては、不安にならざるを得なかった。
朝のホームルーム。教室へ入ってき、シュンスケの顔を見た小木田先生は、漫画のような仰々しい驚きの表情を見せ、
「おい、シュンスケ。お前、何してたんだ?」
と訊ねたのだ。そしたら、シュンスケは何も可笑しくもないといった調子で、こう答えたのだーー
「いやぁ、先週の月曜の朝、靴下の中にハチがいて、足の裏刺されたんすよ!」
……は?
ワケがわからない。
まったくもって理解ができない。
確かにハチに刺されるのは、アナフィラキシーもあるから危険は危険なんだけど、
だったら、何で連絡しなかった。
てか、靴下の中にハチって、干してた靴下をそのまま履いていこうとしたのか。
これには小木田先生も思わず、
「お前、そんなことで一週間も連絡せずに休んだのか」
と明らかに笑いを堪えながらいっていました。クラスメイトももう我慢せずに笑い出してしまいまして。肝心のシュンスケは、
「いや! マジで痛かったんすよ!」
と必死でその様子を説明しようとするのだが、そうする度に周りの笑いのボルテージが上がっていく。小木田先生も、
「馬鹿野郎、連絡くらいしろ」
と笑っていました。
それ以降、シュンスケは「ハッチ」だとか「靴下」とかいわれてネタにされまくるようになりました。本人も相当後悔していた模様。
ちなみに、そんなシュンスケですが、こんな頭の可笑しなことをする割に友人想いなところもありまして、2011年の大地震の時、ちょうど被災地近辺で独り暮らししていたおれに最初に連絡してきたのが彼でした。やっぱ底抜けにいいヤツなんだろうねぇ。
それにしても、彼は今、何してんだろ。
まぁ、おれも何かに嫌気がさしたら、「靴下にハチが入ってて足の裏刺されました」っていって無断欠席してみるかなーーダメか。
まぁ、無理はしないことだな。
アスタラヴィスタ。