【骸骨男、地獄の超特急】

文字数 3,227文字

 乗り物酔いをしやすい人がいる。

 これは聞いた話なので鵜呑みにしないで欲しいのだが、乗り物酔いしやすくなるかどうかは子供の時点で既に決まっているらしい。

 では、どのような条件によって乗り物酔いしやすくなるか。

 それは、車の中で寝る習慣があるかどうかにあるという。

 子供の頃となると、親に連れられて車に乗る機会も多い。遠出するとなると、それも多いだろう。が、何でも少年時代に運転中の車の中で寝ると、将来乗り物酔いしやすくなるというのだ。

 これはどういう原理でそうなるかは忘れてしまったが、動く車の中で寝ると慣性が働いた状態のままになる。その間に三半規管が受ける影響が良くないーーだったと思う。

 まぁ、昔どこかで見た情報なので、あまり信じないで欲しいのだけど、ただ、自分の体感的にはそれも間違いではないと思うのだ。

 というのも、おれは子供の頃、よく親の運転する車の中で寝ることが多かったのだ。結果、今では乗り物に酔いやすい性質になっている。

 まぁ、一時期はパニックの影響で乗り物自体がダメになってしまい、ちょっと乗り物に乗るだけでもすぐに気持ち悪くなっていたのもあるけど、それを差し引いても、おれは乗り物に弱かった。

 が、そんなおれも絶叫マシーンには強かったりする。まぁ、パニックになってからはそういうモノに乗る機会もないので、今どうかはわからないのだけどね。

 さて、今日と次回は二回に渡って同じテーマの話をしようと思う。というのはーー

 とあるテーマパークにいった時の話だ。

 テーマパークをテーマにした話とか、下らない駄洒落もいいところなんだけど、ちなみに、テーマパークの話といっても、同日中の話なので、だから前後編にしようと思ったのだ。とりあえず、書いてくわーー

 中学三年の五月のことだった。その頃はまだ進級して間もなく、受験勉強も激化する前だった。

 おれは塾の遠足で、他の塾生とともに富士急ハイランドへといったのだ。

 塾で遠足?とも思われるかもしれないけど、おれの通っていた塾は、日々の勉強に妥協しない代わりに、年一で遠足があったり、希望者のみハードな筋トレ会を行っていたりしたのだ。

 その遠足の参加者は中学一年生から三年生の希望者によって構成されており、三年生は殆どみんな参加していたと思うーーちなみに部活をサボっていったのは秘密。

 そんな感じで朝早くに塾に集合し、バスに乗って先生と塾生で富士急へと向かったのだ。

 バスの中は賑やかで、トランプをやったり、ゲームボーイをやったりとみんなエンジョイしていた。

 おれはどういうワケかバスに酔うこともなく、女子たちとトランプをしていた。リア充とか陽キャとか思うだろ?残念、ガイキチでした。

 二時間ほどして富士急に着くと、早速フリーパスにて入園する。おれはとりあえず、同学年の適当な仲間と行動を共にすることにした。

 そのメンツの中にはどういうワケか、あの「もこみち」がいたのだ。

 久しぶりに名前を出したので覚えてない人もいるだろうけど、「もこみち」とは、小野寺先生のホームページの掲示板にて国語教師の熟女との情事ネタを書かれまくった男だった。

 その名前からして「速水もこみち」を想像する人も多いかもしれないが、現物は骸骨に薄い皮膚と目をくっつけたような男だった。それって普通の人間だな。

 ちなみに、見た目的には「速水もこみち」というより、「スティーブ・ブシェミ」で、性格も「スティーブ・ブシェミ」が演じるイカレ男そのものといった感じだった。

 もこみちという男は、色んなヤツに突っ掛かっていったり、人の好きなものやスタンスを理由もなく否定したりする本当に面倒なヤツだった。そりゃ、掲示板荒らしのネタにされるわ。

 まぁ、もこみちはこの時も調子に乗ってまして、

「うぇっ!お前ら、絶叫マシーンとか怖いの?ダッセェ!」

 とかイキッてました。これにはおれも、一緒にいたヤツもカチンときまして、なら絶叫マシーンにいこうということになったのだ。

 とりあえず向かったのはフジヤマだ。フジヤマといえば、確かその当時、国内で最標高から落ちるジェットコースターとして有名だったと思う。

 列に並んで順番を待ち、いざフジヤマに乗ることとなったのだけど、

 もこみちの顔色が悪いのだ。

 骸骨らしく真っ白、とかではなく真っ青になった顔で、口数も少なくなったもこみちは、もはやゾンビみたいでした。

 でも、あんだけイキッたこともあって後には引けないのか、大丈夫かと訊いても、

「はぁ!?大丈夫に決まってんだろ!ウゼェ!」

 とかイキリ倒すばかり。なら、乗って貰おうじゃないの、とみんなでコースターに乗り込んだんですわ。

 流石、国内最標高といわれるだけあって、コースターがゆっくりと上がっていくだけでもスリリングで、そこから内蔵がぶっ飛びそうなほどの速度で一気に落ちていく。

 とはいえ、怖いというよりは楽しいという感じで楽しめたんよ。でも、自殺する時は絶対に飛び降りだけはやめようと思ったけど。

 そんな感じでみんなで楽しかったなと感想をいいながら、フジヤマを後にしたのだけど、

 もこみちがブルブル震えているではないの。

 もう見るからにビビってしまったのが丸わかりだった。が、これに付け込んだ仲間のひとりが、もこみちに「ビビったのか?」と訊くと、もこみちは、

「はぁ!?ビビってねぇし!マジうぜえし!」

 と尚もイキッていました。となったら、次も絶叫マシーンにいくしかないとなりまして、みんなして次はドドンパに向かったのです。

 ドドンパは、多分、その当時国内最速のジェットコースターだったんじゃないかな。

 最速、それは男のロマンだった。おれも速いモノに憧れ、速いモノを求めるスピード狂でしかなかった。がーー

 もこみちの顔は更に青くなってまして。

 大丈夫かと訊いても、相変わらずイキッてました。なので、もこみちを先頭に列に並んだんです。

 数十分しておれたちの順番となった。が、もこみちは突然、

「ホントに乗るのか?」

 と震える声で訊いてきたんです。なんで、改めて「ビビってんのか?」と訊ねると、

「はぁ!?お前らがビビってるだろうと思って気を使ってやってんだよぉ!マジうぜぇな!」

 といって自らコースターに乗り込んでいきました。おれらもそれに続き、コースターはレールの上を滑り始めたのだ。

 最初はゆっくりと進んでいくんで、何だちょろいなと思ったのだけど、次の瞬間ーー

 頬の肉を百年前に置き忘れるほどの速さで走り出したではないの。

 これにはおれも驚きではあったけど、その風を切り裂くほどのスピードには思わず歓声を上げてしまった。

 まぁ、そんな感じで楽しんでいると唐突に、

「きぃえぇぇぇぇぇぇ!」

 とかいう奇声が聴こえてきたではないの。何だ何だと思ったのだけど、

 もこみちの悲鳴でした。

 やっぱ怖いんじゃねえかと思ったのだけど、そんなもこみちもコースターが終わる頃には、

 糸の切れたマリオネットのように頭がブランブランしてたからな。

 しかも、声も出さずに。

 これにはうしろから見ていてどうしたものかと思ったのだけど、コースターが終わっていざ出ようとなったとき、すべてがわかったのだ。というのもーー

 もこみち、失神してた。

 気の毒だと思うでしょう?残念、イキッてたもこみちを見ておれらは爆笑してました。人の不幸は蜜の味。イキッたバカの不幸は生クリーム。今考えたら残酷だけど、イキッたバカが酷い目に遭うことほど面白いことはないからな。

 それからもこみちは係員に抱えられて立ち、何とか意識を取り戻したのですが、以降は中央広場で休憩してました。ほんと情けない。

 てか、これに近い話を以前したよな。そう、あっちゃんのお化け屋敷の話な。

 皆さんもイキることなく、誠実に生きましょう。いつか絶対バカにされるからな。

 さて、次回は後編を書いてく。期待しないでお待ちッ!

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登場人物紹介

どうも!    五条です!


といっても、作中の登場人物とかではなくて、作者なんですが。


ここでは適当に思ったことや経験したことをダラダラと書いていこうかな、と。


ま、そんな感じですわ。

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