【ダイアモンド・サマーは眠らない】

文字数 3,209文字

 静かだーーとても静かだ。

 今年の夏は非常に静かだ。まぁ、この御時世じゃそれも仕方ないと思うのだけど、やはり夏といったら賑やかなイメージがおれの中にあって、その理由は、やはり祭りや花火とイベントごとが集中しているからだと思う。

 ただ、例のアレでイベントはおろか、外出も自粛すべきという状況下では、夏という季節は暑いだけで何の風流さもない粗大ゴミと化してしまっており、熱中症で最悪デッドエンドなんてこともありうるようなこの状況下では、この暑さは害悪でしかなくなっているのも事実。

 そしてもはや、そこにあるのは人と季節のワンクール戦争だけだ。

 だが、そんな中、まだひとつだけ夏の風物詩が残っている。

 それが、ホラー要素だ。

 やはり夏といったら心霊だったり、都市伝説だったりとホラーの季節といっても過言ではないだろう。

 かくいう自分もホラーは大好きで、ゲームから映画、小説に実話怪談系と色々な媒体で恐怖というものに触れてきたのだけど、やはり架空の恐怖体験には必ず頭打ちが来てしまう。

 というのも、ホラーゲームに関しては今や恐怖は感じず、限られたリソースの中、如何に戦略を組んで難しい難易度に挑戦したり、クリアタイムを縮めようと工夫したりという完全なストラテジーゲームと化している。

 映画や小説も色々なものを見すぎて逆にパターンがわかってしまって興醒め傾向にある。最近ではテレビでもホラー系の番組は殆どやらないし、この夏は、ホラーも殺されてしまっているというのか……。

 とまぁ、フィクションだったりモキュメンタリーでは既に恐怖を感じなくなってしまっているおれではあるけれど、では、どうすれば……

 その答えは自分自身で恐怖体験するのが一番早い。まぁ、だとしても今の時期に心霊スポットとかに行くというのも気が引けるし、心霊スポットに関しては霊の塒にズカズカ上がり込むようなものなので、どうなっても保障はできなくなる。

 というわけで、今回はおれが小学生の時に体験した「変な意味で」怖い話をしようと思う。

 あれは小学校六年の時、ちょうど強迫観念でウインナーが食べられなくなった頃の話である。

 その当時は初夏だったか、初秋だったかは覚えていないが、小学校に最終学年ということもあって、修学旅行があったのだ。

 行き先は同じエリアにある定番の観光スポットーーというより修学旅行にはうってつけの学べて楽しめる場所と決まっており、どういうルートで回ろうかと事前に四、五人の班メンバーで話し合っていたのだ。

 まぁ、曲がりなりにも「学習目的」で行くのが修学旅行なのだけれど、生徒にとっては、

 「『学習目的』だぁ? 教師はア○ルでもほじくって寝てろやボケ」

 といわんばかりに遊ぶことにしか意識が行っておらず、中にはお忍びでゲーム機を持っていこうだなんて話や、ゲーセンに行こうなんて話をする不届き者まで現れる始末でーーまぁ、小学生なんてそんなもんよね。

 とまぁ、今のおれはこんなゴミみたいな文章を書いているわけだけど、その当時は比較的真面目な青臭いガキで、学校側が提示した観光ルートに沿って回ろうと考えていたのよ。

 で、一日目のオーダーは何とか決まり、続く二日目はどうしようということになった。

そこで二日目は誰もが知っているようなとあるレジャー施設内を回ることになっていたのだけど、これがバカな小学生にはウケのいいスポットで、思った以上に回ってみたい場所が多くて逆に話し合いが難航してしまったのだ。

「じゃあ、ここ行きてえわ」

 おれが指差したのは、施設内にあるお化け屋敷だった。当時はホラー耐性がまったくといっていいほどなく、ゲームでもポリゴングラフィックの『バイオハザード2』もプレイできないような体たらくで、挙げ句の果ては『ゼルダの伝説』ですら怖いというくらいのビビりだったのだ。

にも関わらず、どうしてお化け屋敷に行きたいといったのかは、正直今でも謎。

 で、お化け屋敷ともなると、これが班員にもバカウケで、行こう行こうとなる者もいれば、「怖~い」とかブリッてる女子もいて、中々面白い展開になってきたのだ。

 そんな中、おれが小学校に入って一番最初に友達になった「あっちゃん」が、

「ハッ! お化け屋敷だってよ! 全然怖くねぇしッ! 全然余裕だよな!」

 とこんな具合にイキり始めたのである。これにはおれも他の男子もノリノリになってしまい、修学旅行二日目は必ずこのお化け屋敷に行こうということになったのである。

 さて、時は進んで修学旅行の二日目である。

 バスから降りてレジャー施設に入ると、おれのいた班は真っ先にそのお化け屋敷へと向かったのだ。

 が、実物は写真で見るよりもちゃっちく、入って三分で攻略できてしまいそうなほどの短いと外観でわかってしまうような有り様だった。

 少し気持ちが萎えてしまったが、折角来たのだから話のネタとして一応入ろうということになったのだ。大してボリュームがなくても、その分質で攻めてくるかもしれないしさ。

 というわけで、おれが先人を切ってお化け屋敷の入り口へと足を踏み入れたんですが、

 突然、何者かに思い切り背中のリュックサックを引っ張られたんです。

  これにはおれも鳥肌がヴィンヴィンで、

「えっ! まだ入り口なのにこんな恐ろしいギミックがあるのか!?」

 と中に入るのを躊躇ってしまいそうになったのだけど、ここで恐れてはいけない、と勇気を振り絞ってリュックサックを引っ張る何者かを確認するために振り返ったんですーーが、

 あっちゃんでした。

 何故かわからないが、あっちゃんが必死の形相でおれのリュックを引っ張ていたんですわ。

まさか、悪霊に取り憑かれてしまったのか……ッ! おれは意を決してあっちゃんに何があったのか訊いたのだ。するとーー

「イヤだよぉ! 怖いよぉ! 止めようよぉッ!」

 何かもう一時期よくいわれていた牛丼チェーンの「早い! 安い! 旨いッ!」という決まり文句みたいで今考えると笑っちゃうのだけど、この時は流石に呆然としたわけで。

 でも、人間ってのは、自分よりも強い感情に突き動かされている人を見ると萎縮するか剥きになるかの二択になるのが殆どで、その時のおれは見事に後者となり、

「何が怖いだ! 行くぞ!」

 と何かもう怖いとかどうでもいいからさっさと中へ入ろうと思い、あっちゃんの手を思い切り振りほどき行こうとしたのだ。すると、

「ふうぇあぁぁぁぁぁぁぁぁッ!」

 と情けない悲鳴を上げながらあっちゃんはどこかへ走って行ってしまったのだ。その光景には少々唖然としたけど、おれら班員一向はあっちゃんを追うことなく、お化け屋敷へと入って行ったのだが、

 全然大したことなかった。

 怖くなかったし、短いし、もはやただ暗いだけだった。もしかしたらヒルカメレオンみたいなグロテスクなクリーチャーが出てくるのでは、と期待したのだけど、そんなことはまったくなく、至って普通でした。

 とまぁ、思った以上に期待外れで消沈しながら外へ出、次の瞬間におれが見たのは、

 木陰でうずくまりながら震えているあっちゃんでした。

 あの威勢は一体どこへ行ってしまったのか。今考えても謎だし、恐ろしい話だと思う。 うん、不思議だぁ……

 何だこの話、全然怖くねぇじゃねえか。

 というわけで、おれも夜道で誰かのバッグにすがり付いてみようと思いますわ。

 うん、普通に犯罪だな。

 次会う時はテレビのニュースでッ!てことにならないよう気をつけるわ、じゃあな。
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登場人物紹介

どうも!    五条です!


といっても、作中の登場人物とかではなくて、作者なんですが。


ここでは適当に思ったことや経験したことをダラダラと書いていこうかな、と。


ま、そんな感じですわ。

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