【一年三組の皇帝~拾伍~】
文字数 1,180文字
ある意味でわかりきった質問だった。
だが、ある意味で予想出来なかった質問だったかもしれない。矛盾しているようだけど、この不良三人がまさかファミレスまで来て、しかも奢るとまでいって、更には普通に食事していることを考えると、今現在のクラスのことで話を訊きたいのではとも思えた。
だが、同時に、まさかこの三人にその話を切り出されるとは、という驚きもあった。どちらかといえば秩序の反対側で胡座を掻いているようなヤツラだったから。
ぼくは、えっと声を出して沈黙した。やはり何となく予想はしていても意外さのほうが強かったのかもしれない。
ぼくは何かしらことばを発しようとした。だが、それがことばとして具体的に出て来なかった。これが所謂ことばにならないというヤツなのかもしれない。
「だからよぉ」となりに座っていた山路がぼくのほうへと乗り出して来た。「あのゲームについてどう思ってんだよ?」
「やめろ」
山路を止めたのは意外にも辻だった。山路はもちろん、ぼくのことを睨み付けていた海野も驚きを表情に浮かべてとなりの辻のことを見ていた。そんな中で辻だけが腰掛けにダランと背を預けたまま、やや見下ろすようにしてこちらを見ていた。
「今はおれとコイツが喋ってんだ。コイツが力づくで何か喋ると思うのか?」
辻のことばにシュンとしてしまう山路と海野ーー仲間に裏切られたようだ。
「お前ら、悪ぃけど今日は帰ってくんねぇか?」
辻のいう『お前ら』に、ぼくは含まれていないようだった。つまり、ぼくと辻、これからはサシで話し合うことになる。ということは、辻もぼくに対してマジで話をしようと思っているのだろう。ヤツの本心はわからないが、ぼくは初めて辻に敬意を払った。
「そうだな」ぼくはいった。「おれもキミと話さなきゃならないと思う」
毅然とした態度でいった。ナメられてはいけない、そういう考えが根底にあった。が、ぼくの強気に山路と海野は不快感を示した。しかし、それも辻によって阻まれた。
結局、山路と海野は自分の支払いの分だけを置いてトボトボと帰っていった。
ふたりが去ってからというモノ、ぼくと辻は真正面から視線を弾けさせていた。まるでシノギを削るようだった。
と、突然に辻は大きくため息をついた。
「やっと静かになったな」
「珍しいな」
ぼくが合わせていうと、辻は威圧的に声を上げた。ぼくは更にいった。
「あのふたりが一緒じゃなきゃ何も出来ないかと思った」
「......テメェもいうこというじゃねえか」
正直キレると思った。だが、辻は予想以上に芯の強さがあるようだった。これ以上の煽りは、むしろぼくが自分自身を貶めることになるのでここまでにしておいた。
と、辻は唐突にバッグの中身をあさりだした。何かと思い注視していると、辻はあるモノを取り出した。
トランプだった。
「試しにおれと勝負しろよ」
【続く】
だが、ある意味で予想出来なかった質問だったかもしれない。矛盾しているようだけど、この不良三人がまさかファミレスまで来て、しかも奢るとまでいって、更には普通に食事していることを考えると、今現在のクラスのことで話を訊きたいのではとも思えた。
だが、同時に、まさかこの三人にその話を切り出されるとは、という驚きもあった。どちらかといえば秩序の反対側で胡座を掻いているようなヤツラだったから。
ぼくは、えっと声を出して沈黙した。やはり何となく予想はしていても意外さのほうが強かったのかもしれない。
ぼくは何かしらことばを発しようとした。だが、それがことばとして具体的に出て来なかった。これが所謂ことばにならないというヤツなのかもしれない。
「だからよぉ」となりに座っていた山路がぼくのほうへと乗り出して来た。「あのゲームについてどう思ってんだよ?」
「やめろ」
山路を止めたのは意外にも辻だった。山路はもちろん、ぼくのことを睨み付けていた海野も驚きを表情に浮かべてとなりの辻のことを見ていた。そんな中で辻だけが腰掛けにダランと背を預けたまま、やや見下ろすようにしてこちらを見ていた。
「今はおれとコイツが喋ってんだ。コイツが力づくで何か喋ると思うのか?」
辻のことばにシュンとしてしまう山路と海野ーー仲間に裏切られたようだ。
「お前ら、悪ぃけど今日は帰ってくんねぇか?」
辻のいう『お前ら』に、ぼくは含まれていないようだった。つまり、ぼくと辻、これからはサシで話し合うことになる。ということは、辻もぼくに対してマジで話をしようと思っているのだろう。ヤツの本心はわからないが、ぼくは初めて辻に敬意を払った。
「そうだな」ぼくはいった。「おれもキミと話さなきゃならないと思う」
毅然とした態度でいった。ナメられてはいけない、そういう考えが根底にあった。が、ぼくの強気に山路と海野は不快感を示した。しかし、それも辻によって阻まれた。
結局、山路と海野は自分の支払いの分だけを置いてトボトボと帰っていった。
ふたりが去ってからというモノ、ぼくと辻は真正面から視線を弾けさせていた。まるでシノギを削るようだった。
と、突然に辻は大きくため息をついた。
「やっと静かになったな」
「珍しいな」
ぼくが合わせていうと、辻は威圧的に声を上げた。ぼくは更にいった。
「あのふたりが一緒じゃなきゃ何も出来ないかと思った」
「......テメェもいうこというじゃねえか」
正直キレると思った。だが、辻は予想以上に芯の強さがあるようだった。これ以上の煽りは、むしろぼくが自分自身を貶めることになるのでここまでにしておいた。
と、辻は唐突にバッグの中身をあさりだした。何かと思い注視していると、辻はあるモノを取り出した。
トランプだった。
「試しにおれと勝負しろよ」
【続く】