【一年三組の帝王~睦~】
文字数 1,134文字
またワケのわからないことになったモノだ。
そもそも、入学して早々にどういうワケか生活安全委員にされて、クラス内で起こりうる問題と向き合うこととなっただけでも可笑しな話だというのに、かと思いきや、またもやぼくは何かに導かれることとなったらしい。
入部ーー岩浪先輩は間違いなくそのようにいった。それはすなわち、ぼくが部活に入るということだ。
別に部活に入るつもりはなかった。運動はキライだし、文化部にも興味はなかった。確かに入ったら入ったで楽しいのだろうけど、生活安全委員なんてことをやっていると、部活に精を出している余裕もない。
ぼくは正直何をするのかわからない部活に入るつもりはなかった。そもそも、何故岩浪先輩はぼくが入部するなどとワケのわからないことをいい出したのだろうか。いずみも驚きに満ちた表情でこちらを見ていた。
「マジでいってんすか?」
いずみの疑問ももっともだと思った。それ以上にぼくは何部に入れられようとしているのか、それすらもわからずにいるのだが。だが、時は待ってくれない。岩浪先輩はいずみの疑問に対して、あぁと相槌を打って答えた。ぼくは口を挟んだ。
「ちょっと、先輩ッ!」
「何だ?」
「入部って、ぼくは別にーー」
そういい掛けたところで、岩浪先輩はぼくの肩をポンと叩いて来た。そして、次のようにぼくに囁いて来た。
「まぁ、そういうなって。やってみれば結構面白いかもしれないーーいや、絶対面白い」
「面白いって......」
大体、数人がひとりを責め立てるような部活って何なのだ。そもそも、そんな部活が面白いとはとても思えなかった。
「おれは......」
「先輩」いずみが早歩きでこちらに近づいて来た。「こんなヤツ入れるのやめましょうって。どうせやましいこと考えてますよ」
何を疑っているのか、とぼくはいずみに食って掛かりたい気分だったが、それよりも先に岩浪先輩が口を開いた。
「いいから、稽古を始めなさい。こんなことしてる暇はないんだぞ」
岩浪先輩は威厳たっぷりにいった。と、いずみは圧倒されたように、わかりましたといってそのまま教室へと戻って行った。
「......先輩」ぼくはいった。「部活っていっても何をやるんですか? おれ、生活安全委員で忙しいんですけど」
「わたしだって生活安全委員だぞ」
それをいわれたら、ぼくはもう何もいえなくなってしまう。岩浪先輩は続けて、
「それにこういう状況になった以上、わたしと一緒にいたほうが安全だろう」
安全かどうかはわからないが、それはそれとして、そもそもの疑問をぶつけてみた。
「でも、ここは一体、何部なんですか?」
「あぁ、まだいってなかったか」先輩は口直しするかのようにいった。「演劇部だよ」
ぼくは耳を疑った。
【続く】
そもそも、入学して早々にどういうワケか生活安全委員にされて、クラス内で起こりうる問題と向き合うこととなっただけでも可笑しな話だというのに、かと思いきや、またもやぼくは何かに導かれることとなったらしい。
入部ーー岩浪先輩は間違いなくそのようにいった。それはすなわち、ぼくが部活に入るということだ。
別に部活に入るつもりはなかった。運動はキライだし、文化部にも興味はなかった。確かに入ったら入ったで楽しいのだろうけど、生活安全委員なんてことをやっていると、部活に精を出している余裕もない。
ぼくは正直何をするのかわからない部活に入るつもりはなかった。そもそも、何故岩浪先輩はぼくが入部するなどとワケのわからないことをいい出したのだろうか。いずみも驚きに満ちた表情でこちらを見ていた。
「マジでいってんすか?」
いずみの疑問ももっともだと思った。それ以上にぼくは何部に入れられようとしているのか、それすらもわからずにいるのだが。だが、時は待ってくれない。岩浪先輩はいずみの疑問に対して、あぁと相槌を打って答えた。ぼくは口を挟んだ。
「ちょっと、先輩ッ!」
「何だ?」
「入部って、ぼくは別にーー」
そういい掛けたところで、岩浪先輩はぼくの肩をポンと叩いて来た。そして、次のようにぼくに囁いて来た。
「まぁ、そういうなって。やってみれば結構面白いかもしれないーーいや、絶対面白い」
「面白いって......」
大体、数人がひとりを責め立てるような部活って何なのだ。そもそも、そんな部活が面白いとはとても思えなかった。
「おれは......」
「先輩」いずみが早歩きでこちらに近づいて来た。「こんなヤツ入れるのやめましょうって。どうせやましいこと考えてますよ」
何を疑っているのか、とぼくはいずみに食って掛かりたい気分だったが、それよりも先に岩浪先輩が口を開いた。
「いいから、稽古を始めなさい。こんなことしてる暇はないんだぞ」
岩浪先輩は威厳たっぷりにいった。と、いずみは圧倒されたように、わかりましたといってそのまま教室へと戻って行った。
「......先輩」ぼくはいった。「部活っていっても何をやるんですか? おれ、生活安全委員で忙しいんですけど」
「わたしだって生活安全委員だぞ」
それをいわれたら、ぼくはもう何もいえなくなってしまう。岩浪先輩は続けて、
「それにこういう状況になった以上、わたしと一緒にいたほうが安全だろう」
安全かどうかはわからないが、それはそれとして、そもそもの疑問をぶつけてみた。
「でも、ここは一体、何部なんですか?」
「あぁ、まだいってなかったか」先輩は口直しするかのようにいった。「演劇部だよ」
ぼくは耳を疑った。
【続く】